Date: Fri, 14 Aug 2020 17:05:19 +0900 From: kakizaki Subject: [Sg-l:5145] 素粒子メダルの選考結果および授賞式について 素粒子論グループの皆様 素粒子メダル選考委員会委員長の糸山浩司氏より、 2020年度第20回素粒子メダルの選考結果が報告されましたので、 転送いたします。 なお、選考委員会は5名に対する授与を決めましたが、 山脇幸一氏が辞退されたので4名への授与になりました。 授賞式は秋の学会の素粒子論懇談会(9月16日(水)、オンライン)において行われます。 よろしくお願いします。 素粒子論委員会 素粒子メダル担当 柿崎充 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 第20回(2020年度)素粒子メダル選考の報告 2020年度の素粒子メダル1件5名を以下のように選考しましたので、ご報告いたします。 選考委員会: 糸山 浩司(委員長)、大野木 哲也、杉本 茂樹、諸井 健夫、林 青司 -------------------------------------------------- <2020年度素粒子メダル> 「隠れた局所対称性の定式化とそのハドロン現象論」 坂東昌子氏 九後汰一郎氏 上原正三氏 山脇幸一氏 柳田勉氏 <選考経過> 本年度は、素粒子メダルに関して1件3名の推薦があった。 選考の前提となる規約、候補者の資格等について確認した後、 推薦論文および関連論文を精査し、委員各自が評価レポートを作成した。 それを基に選考委員会で該当業績を検討し、論文 “Is the ρ Meson a Dynamical Gauge Boson of Hidden Local Symmetry?” Phys. Rev. Lett. 54 (1985) 1215 を素粒子メダルの対象とし、その著者5名を受賞者とする事が適切であるとの 判断に至った。 なお、候補者リストに名前があがっていた九後汰一郎選考委員は 「今年度の選考・決定過程に全く関与しない」ことを申し出られたので、 これを承認し、選考は上記5人の委員のみで行った。 <授賞理由> “Is the ρ Meson a Dynamical Gauge Boson of Hidden Local Symmetry?” Phys. Rev. Lett. 54 (1985) 1215 坂東昌子氏、九後汰一郎氏、上原正三氏、山脇幸一氏、柳田勉氏 本論文の著者達は、当時知られていた「G/H 多様体上の非線形シグマ模型」と 「Hを hidden local gauge 対称性として持つ、G対称な理論」との等価性を、 強い相互作用の低エネルギーカイラル有効理論に適用すると同時に、 本来は補助場であるゲージ場に運動項を付け加えた拡大有効理論を提案し、 ρベクトル中間子を複合ゲージ粒子として取り扱うアイデアを提供した。 本論文の枠組みにより、一つのパラメータをある値に取れば、 vector meson dominance、ρ-meson universality、 および KSFR (河原林・鈴木・Riazuddin・Fayyazuddin) 関係式が同時に 従うことを示した。 本論文は、発表以来原子核・ハドロン現象論研究者の注目を集め、 ベクトル中間子を取り扱う有効な方法として支持されてきた。 ループ効果まで取りいれた研究等、本論文に基づく精密化も進んでいる。 それだけでなく、本論文は dimensional deconstruction を用いた模型の構築、 holographic QCD 等の21世紀の場の量子論研究においてもしばしば参照されている。 発表以来年月を経た現在でも色あせることなく多くの素粒子論研究者に 影響を与え続けており、過去10年間の引用も多数である。 本論文が、長い年月を経て、素粒子論の理論的発展に大きく貢献してきた点 は高く評価できる。 以上より、本選考委員会は、本論文を素粒子メダルにふさわしい業績であると判定した。 ------------------------------------------------------------------------