Volume 17-5修士論文
QCDにおけるクォークの閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れの関係の研究
土居 孝寛 (京都大学大学院理学研究科)
素粒子論研究・電子版 Vol. 17 (2014) No. 5
2014年3月11日受理
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概要
カラーの閉じ込めやカイラル対称性の自発的破れ等の低エネルギー領域のQCDが示す非摂動的現象は、クォーク・グルーオンの多体系としてのハドロンを理解する上で必要不可欠な現象である。カラーの閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れそれぞれの非摂動的現象も興味深いが、その関係性もまた興味深い研究対象である。本研究の目的は、数値的にだけではなく解析的にもlow-lying Dirac mode が閉じ込め現象にとって本質的ではない事を示す事である。まず、時間方向の周期境界条件を課した時間方向の格子サイズが奇数の格子を用いてPolyakov loopとDirac modeを直接結ぶ解析的な関係式を導出する。Polyakov loopは閉じ込めの代表的なオーダーパラメータであり、low-lying Dirac modeはカイラル対称性の自発的破れに関する最も重要なモードであるから、この関係式に基づいてクォークの閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れの関係を議論する事ができる。この関係式より、low-lying Dirac mode はPolyakov loop の値にほとんど寄与しない事が示唆され、実際の数値解析でも確認できた。また、数値解析のため、Kogut-Susskind formalismを時間方向の格子サイズが奇数の格子でも適用可能にするために一般化した。
キーワード
confinement、chiral symmetry breaking、lattice QCD、Dirac mode、temporally odd-number lattice