Volume 33-1修士論文
超弦理論のフラックスコンパクト化におけるコンパクト空間の幾何学とフレーバー構造
内田 光 (北海道大学 理学院宇宙理学専攻)
素粒子論研究・電子版 Vol. 33 (2020) No. 1
2020年9月4日受理
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概要
標準模型を越えた理論として盛んに研究されている超弦理論は10次元時空上の理論である。その10次元時空から6次元空間をコンパクト化することで4次元時空の有効理論を得る。そこで、標準模型が抱える課題の一つである、フェルミオンの質量や3世代フレーバー混合を与える4次元湯川結合定数をコンパクト空間上の波動関数を用いて計算し、コンパクト空間の幾何学が湯川結合定数に与える影響について議論する。具体的には、超弦理論の有効理論として得られる10次元N=1 Super Yang-Mills理論を6次元フラックスコンパクト化し、さらにフェルミオンの3世代構造がそのうちの2次元空間に由来するとして、2次元空間上の波動関数を求めて湯川結合を計算する。2次元空間としてT^2/Z_2オービフォールドが持つ特異点の近傍をS^2の一部を用いてブローアップして変形した幾何を考えて、その幾何上の波動関数を求め、さらに得られた波動関数を用いて4次元湯川結合定数を計算する。そして、その湯川結合から得られるクォークのフレーバー構造(クォーク質量比およびフレーバー混合行列)のブローアップ半径の依存性を議論し、ブローアップを行うことで観測値にO(1)程度で再現するモデルについて議論する。
キーワード
flux compactification、geometry、flavor structure