Volume 35-1修士論文
超弦理論のトーラスコンパクト化モデルによる素粒子標準模型のフレーバー構造の再現
菊地 渉太 (北海道大学 理学院宇宙理学専攻)
素粒子論研究・電子版 Vol. 35 (2021) No. 1
2021年4月19日受理
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概要
近年、Higgs粒子の発見によって素粒子の標準模型が確立された。 しかしながら、標準模型は重力の記述ができないことや、フレーバー構造の起源を説明できないことなどの問題を抱えている。 そのため、標準模型を超える物理が必要とされている。超弦理論はそのような標準模型を超える物理の候補の1つである。それは10次元の理論であり、余剰な6次元は現在の技術では観測できないほど小さなコンパクト空間になっていると考えられる。本研究では特にトーラスコンパクト化に焦点を当てた。我々はトーラスの持つモジュラー対称性がフレーバー構造の起源になっていると考え、超弦理論のトーラスコンパクト化に基づくフレーバー構造の再現を研究した。特に、$T^2/\mathbb{Z}_2^{\rm (t)}$ twisted orbifold、$(T^2\times T^2)/\mathbb{Z}_2^{\rm (per)}$ permutation orbifold、$(T^2\times T^2)/(\mathbb{Z}_2^{\rm (t)}\times \mathbb{Z}_2^{\rm (per)})$ permutation orbifoldに注目し、その上の波動関数の持つ世代とモジュラー対称性を調べた。また、そのような波動関数を用いて可能な3世代フレーバーモデルを分類した。さらに、1つのモデルに基づいてquarksの質量と混合角の再現を試みた。
キーワード
flux compactification、torus compactification、flavor structure、modular symmetry