Volume 36-3修士論文
MUonE 実験によるミューオン g - 2 を説明可能な U(1)μ-τ ゲージ ボソンの探索
和田 淳太郎 (東京大学大学院理学系研究科物理学専攻浜口研究室)
素粒子論研究・電子版 Vol. 36 (2022) No. 3
2022年4月12日受理
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概要
米国フェルミ国立加速器研究所 (FNAL) の実験によって、ミューオン異常磁気能率 (g - 2) の実験値と理論値の不一致が追認され、標準模型の綻びを示唆する結果となった。標準模型 (SM) の理論計算に関しては、ミューオン g - 2 へ寄与するハドロン真空偏極 (HVP) の精密評価を目的とした MUonE 実験が提案され、理論値の精密化が期待されている。一方、標準模型を超えた物理 (BSM) の観点では、U(1)μ-τ ゲージ対称性を持つ模型がミューオン g - 2 アノマリーを説明可能な有力な模型の一つとして今尚注目されており、ミューオン g - 2 はSM、BSM双方の文脈で活発な議論がされてきた。そんな中、筆者らは論文の中で、将来的に MUonE 実験によって U (1)μ-τ ゲージボゾンをミューオン g - 2 favoredな領域を含むパラメータ領域で探索できることを示した。本修士論文はこの仕事に基づき、MUonE 実験の本来の目的 (HVP の精密測定) と、我々による新しい提案 (U(1)μ-τ ゲージボゾンの探索) をまとめ、MUonE 実験が SM 理論計算の精密化と BSM 探索という二重の役割を果たせることを示す。
キーワード
ミューオン-2、MUonE実験、U(1)μ-τゲージ対称性