Volume 42-4修士論文
アノマリーの数学的基礎から現象論的応用まで
川平 将志 (京都大学基礎物理学研究所)
素粒子論研究・電子版 Vol. 42 (2024) No. 4
2024年4月17日受理
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概要
場の量子論の非摂動効果を解析することは,様々な現象の理解に繋がるため,現代物理学における重要なテーマの 1 つである.特に本修士論文では非摂動効果の解析の主たるツールの 1 つであるアノマリー(Anomaly)という現象について最近の進展をまとめた.
アノマリーの歴史は古いが,近年様々な概念的進歩があり,その結果 $d$ 次元アノマリーは $d + 2$ 次ボルディズム群の Anderson 双対 $(I_{\mathbb{Z}} \Omega)^{d+2}$ と対応することがわかった. \[{\mbox{[Anomaly]}}_d = (I_{\mathbb{Z}} \Omega)^{d+2}\] この関係を用いることで,あらゆるアノマリーについて系統的に取り扱うことが可能になり,近年続々と新しい知見が得られている.また,過去に知られていた事実についても,この対応関係を用いることで非自明な点が存在することも判明した.
本修士論文では ${\mbox{[Anomaly]}}_d = (I_{\mathbb{Z}} \Omega)^{d+2}$を導入した後,具体的にあらゆる物理現象に応用することで,過去の議論が再現されることや,その議論に見逃されてきた非自明な点が存在することを示す.特に標準模型の非摂動的なゲージ・アノマリー相殺については非自明な事実があり,Steenrod代数を用いること明瞭に理解できることを説明する.
キーワード
非摂動アノマリー、グローバルアノマリー、ボルディズム群