「現代物理学概論 1」 (2007年度後期、月曜5コマ目(16:30-18:00))
Part II: 原子核物理学概論
(11/5,12,19, 担当: 大西 (@北海道大学))
(Slide の一部に、大阪市立大学の桜木さんから頂いた図を使っています。
また、
pdf へのアクセスは制限してありますので、
学内からダウンロードしてください。)
- レポート問題 4 のヒントです。
-
一次元調和振動子では、
nx=0, 1, 2, ... で指定される(空間)状態があります。
スピンを含めると、それぞれの状態に2つずつ
陽子(又は中性子)が入れます。
-
三次元調和振動子では、
n=nx
+ny
+nz
(nx, ny, nz=0, 1, 2, ... )
で状態のエネルギーが決まります。
-
n=0, 1, 2, .... の値に対して、
(nx, ny, nz)
の組合せの数を考えると、
与えられた n に対して、いくつの状態があるのかを数えられます。
-
この場合の数の数えるとき、気を付けてほしいのが、
nx, ny, nz が 0 も取りうることです。
-
与えられた n 以下の状態に入れる
陽子(又は中性子)の数が魔法数となります。
これ以上は答えに直接結び付くので書けません。
各自悩んでみてください。
- レポート問題 7 についての補足です。
-
=c=k=1
という「自然単位系」では、
-
「エネルギーの次元」=「質量の次元」=「温度の次元」
=「(長さの次元)-1」
=「(時間の次元)-1」
となります。
-
アインシュタインの関係式 E=mc2 で c=1 より
「エネルギーの次元」=「質量の次元」。
-
運動エネルギー E=p2/2m と「エネルギーの次元」=「質量の次元」
より「運動量の次元」=「エネルギーの次元」。
-
単原子分子の内部エネルギー U=3nRT/2=3NkT/2 で k=1 より
「エネルギーの次元」=「温度の次元」。
-
光の進む距離 l=ct で c=1 より「長さの次元」=「時間の次元」。
-
ドブロイ波長 λ=h/p=2π
/p で
=1 より
「長さの次元」=「(運動量の次元)-1」
=「(エネルギーの次元)-1」。
よって、力、圧力、密度の次元はそれぞれ
-
「力の次元」=「(質量x長さ/時間2)の次元」
=「(エネルギーの次元)2」
-
「圧力の次元」=「力の次元」/「(長さの次元)2」
=「(エネルギーの次元)4」
-
「密度の次元」=「(長さの次元)-3」
=「(エネルギーの次元)3」
となります。
-
温度があがると、まず構成粒子がばらばらになってゆき、
さらに温度をあげると
クォーク・反クォーク対等が生成されることで「粒子数」
(または体積で割った数密度)
が T3 に比例して大きくなります。
-
こうして増えていく圧力が、真空の圧力 B とつりあったときが
QGP ができる温度です。
(水中での水圧=B、泡の中の気体の圧力=Pと考えてみよ)
(現時点(2007/11/5)では、2006年度の講義への意見・感想へのコメントです)
- 太陽の比重は 1.41 だから、水には浮きません (数名)。
→
失礼しました。また御指摘ありがとう。
前にも調べたことがあったのですが、
忘れていて口が滑りました。
- プリントが白黒なので見づらいところがありました。
→
カラー印刷は高いのです。授業で slide をみて色を判別してください。
- 質量を持たない光は実体がないのか?
→
質量ゼロでもエネルギーを持つので、
実体はあります。
(物質を作ることはないですが。)
- 束縛エネルギーとは何か?
→
第3回が終わった後は分かってもらえただろうか?
原子核を「核子がバラバラの状態」にするのに必要なエネルギーです。
- Fe の束縛エネルギーが一番大きいというのは、核子同士を引き合わせる力が
一番強いということが?
→
うーん、引き合う力は同じですね。
むしろ、「引き合う力」と反発する「クーロン力」、
引き合う力を弱める「表面項」がうまくつりあっている原子核と
見る方が正しいと思います。
- 第3回のスライドで「ブラックホール→ストリング・量子重力→ビッグバン」
という線があったが、ブラックホールからビッグバンに至る過程を
主張する人もいるのですか?
→
この図ですよね。
うーん、微妙にストリングと量子重力の間にすきまを作って、
ブラックホールとビッグバンが
つながっているか、つながっていないかを曖昧に描いたつもりですが、
つながって見えますか?
part 4 で鈴木先生が素粒子の話をされるので、
鈴木先生に質問してみてください。
ただし、授業でも触れたように、
少なくとも「ブラックホール←→ストリング」の関係は
議論されています。
また、初期宇宙では量子重力の効果があったであろうこと、
エネルギー密度が非常に高い状態では
(ストリングで記述されるかどうかは分からないが)
超対称性の回復した状態があったであろう、ということは
期待されていると思います。
- クォーク・グルーオン・プラズマを調べるとか、超重元素を作る等には
お金がかかることが分かりました。
→
物理学者としては、お金がかかるこれらの実験の意義を皆に伝える
努力をしないといけないですね。
- クォークは何でできているのか?
→
クォークは「素粒子」です。
それ以上分割できません。
(少なくとも、クォークを分割できるという実験的証拠は
現時点で見付かっていません。)
- ジャポニウムがいいです。
→
私もそう思います。
- Z=113 は是非ニッポニウムで!
→
Tc の借りを返すにはそれもよいのですが。
個人的にはジャポニウム。
- 量子の抽象的な空間を表現するために、5次元を定義すればよいのでは?
→
カラー空間等の「粒子の内部自由度」は、
空間自由度と別なので、単に空間を5次元にしても記述できません。
(内部自由度が空間の次元と関係があるという人もいるのですが。)
これとは別に、時空の次元が5次元だとか、もっと高い次元だとかの
主張はあります。これも鈴木先生に聞いてみてください。
- 原子番号の大きな元素を見付けることに、どのような意義があるのでしょうか?
→
それってレポート問題です。
- 相対性理論が楽しみ。
→
物理学科でお会いしましょう。
(私は相対論を受け持っていませんが。)
- トンネル効果についてもう少し説明してほしかった。
→
残念ながら、その時間はなかったですね。
量子力学の授業では(当然)出てきますが...
2年まってください。
待てない人は、トンネル効果について解説した本は多くあると思いますので、
調べてみるのもよいでしょう。
- 物理はもうやることがないんじゃないかと思っていましたが、そんなことは
なさそうですね。
→
はい。まだまだやるべき面白いことがあると思います。
- プラズマの話は興味深かった。
→
2年後にはエネルギーが10倍以上あがった加速器で
クォークとグルーオンがもっと自由に動きまわっている状態が
つくり出せるはずです。私も楽しみです。
- 計算過程(物の性質?)がいろいろなことに反映される(関係している?)
ところが面白かった。
→
そうですね。一つ一つ、別に見えていた事がつながっていくのを
理解するのは、物理(というか科学全体)の楽しみの一つです。
-
(クォークの話等は)速くて分からなかった。
内容が多かった。
一つ一つの話をもっと時間をかけて説明して欲しかった
(数名)。
→
確かに最後(クォークの話)は時間がなくて走ってしまいました。
ごめんなさい。
しかし、この授業では時間数を増やす予定はありません
(ないと思います)。
一つ一つの項目をじっくり学ぶのも勉強ですが、
いろいろな事をざっと聞く「耳学問」も大切な勉強です。
個人的には、一つの話題について3回ぐらいきけば
「分かった」ような気になると思うので、その一回目と思ってください。
(本当に「分かる」のは、普通は自分でしっかり悩んで、
手を動かしてからです。)
-
(物理を履修していなかったので/物理を履修していたのに)
難しくて、理解できなかった (多数)。
わけが分からないなりに、それなりに理解できた。
今日(第3回)の範囲は分からなかったが、話は面白かった。
→
大学での勉強には、
「しっかり、じっくり」やらなければならない科目、
いろいろな話を聞いて見聞をひろめる科目、
等のいくつかのタイプがあります。
この科目は後者のタイプだと理解しているので、
「難しいけど、そんな話もあるんだ。へー。」
という理解でも構わないと思います。
ですから、これからも気楽に聞いて下さい。
2回目、3回目の授業で最初にレポート問題を見せたのは、
問題にあるあたりの話を(少なくとも調べれば)問題に答えられる程度には
理解してほしい、という気持ちからです。
(問題の 4 とか 7 は、かなり進んでいる人への私からの挑戦状ですので、
意図が違います。調べて考えて悩んでもらうための問題です。)
そもそも、最先端の話は研究者の間でも完全に理解できていないことが
多いので、それを一回聞いて大学の1年生が完全に分かってしまうと、
職業研究者であるにもかかわらず
理解するのに苦労している大学の教員は困ってしまいます。
(もちろん、基本的な概念は分かってもらえるように努力するのですが。)
- 問題が難しいのではないか?(数名)
→
7 問の中には解ける問題が2問以上あると思います。
- レポートはできていないと減点になるか?
→
成績をつける上で、ある程度は差をつけないといけないので、
できていないと多少は減点します。
でも、まず「出すこと」が大切!
- 素晴らしい「トーク」ありがとう。
→
おしゃべりしすぎたかな。
- もう少しマイクの音量を大きくしてほしかった。
→
気がつきませんでした。
他の先生に伝えます。
- プリントよりも詳しい解説を!
→
うーん、最後の部分は解説できませんでしたが、
他ではプリントに書いたこと以上に話したつもりですが...
- 大学での講義全体に対して思うことですが、
高校の学習指導要領や教科書を見たり、
学生にアンケートするなどして、学生のレベルを把握してから
授業をして欲しいです。
→
確かに、新過程では高校で「クーロン・ポテンシャル」の概念が
教えられていないのは知らなかったので、ショックでした。
普通の授業では学生に質問したりして既習・未習をつかんでいくのですが、
この授業では無理ですね。
高校での履修の違いだけでなく、
大学でどの科目をとっているかも違う混合クラスなので、
授業中に「これ習っていない人はどれくらいいますか?」と聞く
という対処法でいかせてください。
また、「そのことは習っていません」とはっきり言ってもらえると、
こちらも助かります。
Akira Ohnishi <ohnishi_at_yukawa.kyoto-u.ac.jp>