Volume 46-3
修士論文
時間反転対称な位相的場の理論
折井 一歩 (カブリ数物連携宇宙研究機構)
素粒子論研究・電子版 Vol. 46 (2026) No. 3
2026年2月24日受理
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概要
位相的場の理論(topological quantum field theory; TQFT)は赤外固定点における場の理論であり,時空の計量によらない物理を記述する枠組みを与える.TQFTは数学的定式化に成功したクラスの場の理論であるという点もその特徴の一つである.その中でも$2+1$次元のTQFTは,低次元重力理論の模型や分数量子ホール効果を記述する理論として,素粒子理論・物性物理の分野で広く研究されているだけでなく,低次元トポロジーの文脈でも大きな関心を持たれている.ところが,時間反転対称性のあるTQFTは,向き付け不可能な多様体上で理論を考えることと等価であり,豊かな構造が知られている一方,未解決な問題も多く残されている.本修士論文ではTQFTの基礎的事項から始まり,時間反転対称なTQFTの理解の現状を外観した後,未だ成されていない向き付け不可能な多様体上のTQFTの構成への筆者の考える展望を述べる.なお,特に断りがなければ$2+1$次元のBosonicなTQFTを考えているものとする.
キーワード
TQFT、位相的場の理論、向き付け不可能多様体、モジュラーテンソル圏