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電子版 Volume 32
2020年5月16日完結
Volume 32-1
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修士論文
2020年5月11日受理
局所ローレンツ対称性に基づく一般相対性理論の拡張
宮脇 渉太
(大阪大学)
概要
一般相対性理論は古典論として重力を十分に記述するが, くりこみ不可能という問題を抱えていて,低エネルギーで成り立つ有効理論だと考えられている. 今日では様々な修正重力理論が考えられていて, 多くの物理学者が重力の量子論の構築を目指している. 多くの重力の拡張模型では計量 gμν を基本的自由度と扱っている が, 計量を vierbein に分解することでmetric formalism では見えなかった局所ローレンツ対称性というゲージ対称性が現れる. この対称性に起因して接続として局所ローレンツゲージ場が現れる. 一般相対性理論は接続であるΓが計量の関数で fundamental な自由度ではないため,一般相対性理論がゲージ理論であるという見方は主流ではなかったが, 私はこのゲージ場を基本自由度とした理論で重力の量子論が構築できるのではないかと考える.
四脚場と局所ローレンツゲージ場を基本的自由度とした理論は, Einstein-Cartan gravity(ECG) と呼ばれている.ECG は一般相対性理論の拡張模型として妥当である. なぜなら, 局所ローレンツゲージ場の場の強さの一次式で Einstein-Hilbert 作用を書くことができるからである. ただ, 場の強さの一次式, という点で通常の ゲージ理論とは異なる.局所ローレンツゲージ場を基本自由度だと思いたいなら, 運動項を入れてゲージ理論として計算したいという考えになるのはアナロジーとしてみたときの自然な取り組みである. そこでこの運動項をくりこみ群のフローで生成できないかという考え方をした.
本研究では, 作用の形を制限するため四脚場の null field limit が存在するという 要請をして ECG の作用を構築した.そして, その模型が南部・ヨナラシーニョ模型 に似ているということに注目して, くりこみ群の手法を用いて局所ローレンツゲージ場の運動項が生成されるかどうかについて議論した.
本論文の構成について, まず ECGの基本自由度である, vierbein と局所ローレンツゲージ場の基礎について説明する. また, ECG での解析の例として 1 つの toy modelのレビューを行う. その後我々の研究についての概要説明と解析についての議論を行う.
キーワード
局所ローレンツ対称性
Volume 32-2
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修士論文
2020年5月14日受理
Double Field Theoryにおけるゲージ対称性と Lie亜代数対によるVaisman亜代数の構成
森 遥
(北里大学大学院理学研究科)
概要
Double Field Theory (DFT)は,T双対性を明白な対称性として持つ重力理論であり,その背景には倍化幾何学(doubled geometry)の存在が考えられている. また,DFTのゲージ対称性は Vaismanおよび Courant亜代数 (algebroid)によって記述される. 本修士論文では,Lie代数の Drinfel’d doubleを出発点として,Vaisman亜代数がふたつの Lie亜代数の組から得られることを示す. さらに,倍化幾何学の具現化としてパラエルミート多様体を導入し,この多様体上に Vaisman亜代数を構築する.
キーワード
超弦理論、超重力理論、T双対性、微分幾何学
Volume 32-3
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修士論文
2020年5月16日受理
背景磁場を含む 6 次元理論における スカラー場の質量補正の相殺機構
廣瀬 拓哉
(大阪市立大学)
概要
素粒子標準模型の問題の 1 つに階層性問題がある。これはヒッグス粒子の質量補正が新しい物理スケールの 2 乗に比例し、観測値である 125 GeV を不自然なパラメーターの調整なしに説明できない問題のことである。階層性問題の解決にはいくつかの方法が議論されている。本研究では、flux compactification の発想を元に階層性問題の解決のアプローチを試みる。ここで flux compactification とは、背景磁場が含まれる余剰次元空間のコンパクト化を指す。余剰次元空間が背景磁場を含む 2 次元トーラスの場合、磁場中の量子力学の議論を応用できる。例えば、磁場中の量子力学ではエネルギー固有値として Landau 準位が得られるが、このエネルギー固有値が場の質量固有値になる。flux compactification を出発点とすることで、ゲージ場の余剰次元成分 (スカラー場) の質量補正が相殺されていることを見る。具体的には 6 次元量子電磁気学と 6 次元 SU(2) Yang-Mills 理論の例で見る。 またスカラー場の質量補正の相殺の物理的理由が、トーラス並進対称性の自発的破れが関係している。トーラス並進対称性の自発的破れが起こることにより、質量が零の南部-Goldstone ボゾンが生じる。スカラー場がこの南部-Goldstone ボゾンに対応する。本研究は主に [1] の内容である。
キーワード
階層性問題、flux compactification
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