計画班: A5

弦理論におけるブラックホールと非摂動的定式化の研究

研究代表者藤崎 晴男立教大学・名誉教授(平成17年度までは教授)
田中 秀和立教大学・教授
矢彦沢 茂明立教大学・准教授

重要な成果

ブラックホール(BH)については、4次元時空でのディラトン結合型で回転を伴う荷電BH の熱力学を考察し、最も実現性の高い多体BH分布は全系の質量・電荷・角運動量が1コの BHに集中した非熱平衡状態であることを示した。 また、弦理論の第一量子化においては厳密な非摂動的結果を導いた。 主な厳密結果は、反対称テンソル場のフラックスと pp-波を背景場としたボソン閉弦において弦座標の「自由モード表現」を構成し、 BRST演算子形式で共変的正準量子化を厳密に行い、 BRST演算子のべき零性から時空次元数と正規順序定数を決定したことである。

年度毎の進展と成果

平成13年度

藤崎はKerr-Newman型ブラックホール多体系は熱平衡分布を実現し、ミクロ・カ ノ二カル臨界温度は存在しないことを示した。 田中はグルーオンが崩壊する分岐過程に対する高次効果の計算を行った。 矢彦沢は弦理論における時空特異点解消のエンハンソン機構について考察し、 K3多様体に巻き付いたD6ブレインから構成される球殻の安定性について調べ た。

平成14年度

藤崎は最も実現性の高いブラックホール分布はモデルの詳細によらず全系の質量・ 荷電・角運動量が1個のブラックホールに集中した非熱平衡状態であることを示 した。 田中は始状態ハドロン中のパートンカスケード現象に寄与する全ての3体分岐関 数の計算を行った。 矢彦沢は時間に依存するオービフォルド上の弦理論について考察を行った。

平成15年度

藤崎は4次元時空でのディラトン結合型ブラックホール多体系の熱力学を双対性 の観点から検討した。 田中は多パートン生成の素過程の高次項がパートン分岐の運動学的な制限に影響 を与えることを示した。 矢彦沢は非線形シグマ模型におけるインスタントン解のモジュライ空間上の情報 計量はユークリッド的な反ド・ジッター時空であることを示した。

平成16年度

藤崎は4次元時空での回転を伴うディラトン結合型荷電ブラックホール多体系の 熱力学を、Kaluza-Klein模型のブーストKerr解に基づき考察した。 田中はハード過程で生じる質量異常項の因子化処方依存性を多パートン生成のア ルゴリズムに取り組むことを検討した。 矢彦沢はBMN模型における弦理論とゲージ理論の関係を明確にすることを試みた。 

平成17年度

藤崎は4次元時空ブラックホール多体系ミクロカノニカル・アンサンブル法の 6次元トーラスにコンパクト化したSenヘテロティック弦理論型ブラックホール 解への適用可能性を示した。 田中はハード過程から差し引く項について赤外発散項の処理を定義し、具体的な 数値計算を行った。 矢彦沢はpp-波上での弦理論の共変的な共系ゲージでの量子化を推進した。

平成18年度

藤崎は通常の4次元時空でのEinstein-Maxwell方程式のBonner双極子解を宇宙弦 の導入により正則化し、ブラックホール多体系の熱力学を考察した。 田中は物理過程における多パートン生成の寄与を考察している。 矢彦沢は反対称テンソル場のフラックスとpp-波を背景場として、ボソン閉弦を BRST演算子形式で共変的に正準量子化をした。この正準量子化において新しく構成し たのは、共変的な弦座標の「自由モード表現」である。 pp-波背景時空中の弦理論のエネルギー・運動量テンソルにこれらの共変的 な弦座標の自由モード表現を適用した。 そして、Virasoro演算子の代数のアノマリーを求め、BRST演算子のべき零性から、 pp-波背景上の弦理論における時空の次元の数と正規順序の定数を決定した。

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