計画班: B8

非可換空間上の場の理論とその応用

研究代表者江澤 潤一東北大学大学院・教授
綿村 哲東北大学大学院・助教授

重要な成果

本計画班の最大の成果は、非可換幾何学の観点から、量子ホール効果の物理の集 大成を行ったことである。量子ホール系は、電子の位置を表すx座標とy座標が交 換しないという非可換性によって完全に支配される特異な系である。実験的に観 測されている準粒子を非可換ソリトンと解釈し、また、諸々の量子位相現象を非 可換空間上のクーロン相互作用の帰結として説明した。 その成果は多数の原著論文に纏めると同時に、740ページの単行本(World Scientific社,Quantum Hall Effects 改定第二版)として刊行した。

年度毎の進展と成果

平成13年度

(江澤) 非可換幾何学は量子ホール系で具体的に実現している。2層系においてCP3ソリトンを解析した。 (綿村) 非可換空間上のゲージ理論におけるADHM構成の解析と非可換インスタントン解におけるreciprocityの研究を行こなった。

平成14年度

(江澤) 2層量子ホール系の対称群はW$_\infty$のSU(4)拡大群になることを示し、これをW$_\infty$(4)代数と命名した。次いでグラスマン多様体上のソリトンを解析した。占有率$\nu=2$では2個の電子からなるソリトンが最低エネルギー励起であることを示し実験結果を説明した。 (綿村) 非可換空間に固有のインスタントン解の周りでのフェルミオンゼロモードを構成した。

平成15年度

(江澤) 有効理論に基づきCP3ソリトンの励起エネルギーを外部パラメターの関数として計算し、パラメターを動かし実験との比較を行い,実験結果を見事に説明できることを示した。 (綿村) 量子化されたCPnの上でのゲージ場の配位の解析を行った。特に、射影的加群の 系統的な構成に関しての研究を行った。この結果、非可換CPnにおける 磁気単極子に相当する配位の構成に成功した。

平成16年度

(江澤) 量子ホール系で、位相的荷電密度と電荷密度の間の関係式を導いた。これは非可換幾何学空間でのみ成り立つ特有な関係式である。更に,この関係式が量子ホール系における励起エネルギーに対する実験結果の特異な振る舞いを説明できることを示した。 (綿村) 非可換CPnにおけるモノポール解に相当する配位の、トポロジカルな数を求める問題を考え、非可換CPnにおいてチャーン数の表示を求めることに成功した。

平成17年度

(江澤) 非可換平面上で、空孔励起をW$_\infty$(N)回転して、非可換ソリトンの量子力学的状態を構成した。可換平面上では空孔励起は位相的荷電を持たないが,非可換平面上では持つことになる. (綿村) 通常のADHM構成を超空間に拡張し、それを更に変形することで非可換超空間上の超場形式を用いた変形されたADHM構成ができることを示した。

平成18年度

(江澤) 量子ホール系で実現している非可換空間の物理では運動エネルギー項は存在しない。この様な系での運動方程式を解析し、量子位相に対する有効理論を構築した。この結果を用いて2層量子ホール系で縦抵抗がゼロになる特異な現象があることを示し実験を説明した。 (綿村) 非可換超空間上でインスタントン解を構成する時の微分代数の構成法が最近提唱されたホップ代数による変形量子化との関係を研究している。 6年間の研究期間中に江澤は25編の、綿村は3編の原著論文を発表した。

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