計画班: B11

場の理論におけるWilsonくりこみ群と対称性の実現

研究代表者五十嵐 尤二新潟大学・教授
伊藤 克美新潟大学・助教授
宗 博人新潟大学・助教授

重要な成果

Wilson くりこみ群においては、ある運動量以下での有効作用を導出する ために、その運動量より大きな値を持つ運動量積分を実行すべく運動量切断が導 入される。本研究では、このように与えられた正則化とナイーブには共存しない 対称性の新たな定式化を行い、「正則化と共存する変形された対称性」が存 在すること、その存在が反場形式での量子論的マスター方程式で記述されること を明らかにした。また、QED などいくつかの系で実際にこのマスター方程式を構 築し、その解を求めた。これは、格子理論におけるカイラル対称性や超対称性の 定式化を含めて、正則化と共存する対称性の研究における一般的な方法を与える ものである。

年度毎の進展と成果

平成13年度

Wilson くり込み群において対称性の存在とその存在様式をもっとも一般 的に記述するのは、反場形式での量子論的マスター方程式であることを示した。 また、この方程式の解が厳密くりこみ群方程式を満たすという一般論を展開した。

平成14年度

大局的対称性の研究を開始し、格子フェルミオンのカイラル対称性を記述するカ ギとなるGinsparg-Wilson 関係式が、我々の量子論的マスター方程式に他ならな いことを解明した。

平成15年度

自己相互作用を持つ格子フェルミオンのカイラル対称性を研究し、これに付随す る量子論的マスター方程式の厳密解を構成した。また、市松格子を導入して格子 上の Yang-Mills 系の超対称性の研究を集中して行った。これらの成果は、 Lattice の国際 work-shop で発表した。

平成16年度

連続理論において、フェルミオンに対して質量項を含む正則化を行い、そのカイ ラル対称性を規定するマスター方程式とくり込み群の Polchinski 方程式を同時に解くことを試みた。また、高次元に対応する自由度を導入して 格子ゲージ理論に関する新たな模型を考察した。これらの成果を Lattice の国際 work-shop で発表した。

平成17年度

弦の場の理論における古典解が持つ対称性を研究した。また、厳密くり込み群の Polchinski 方程式の解析を実行し、フェルミオン自己相互作用系に適用した。 この結果は、くり込み群国際会議で発表した。 また、格子上の超対称性の定式化について Leibniz 則を満たす新たな模型を考 案し、Lattice の国際 work-shop で発表した。

平成18年度

最近、園田氏(神戸大学)は運動量切断を持つ QED に対し て、新たな Ward-高橋恒等式を導いた。我々は、園田氏との共同研究によって、 この恒等式を経路積分の方法から導出し、これが反場形式での量子論的マスター方程式 に書けることを示した。また、この形の Ward-高橋恒等式が、格子理論での超対 称性の研究などにも適用できることを明らかにした。

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