計画班: D25

スカラー場のダイナミックスとそれを背景とするバリオン数生成

研究代表者豊田 文彦近畿大学・教授
船久保 公一佐賀大学・教授

重要な成果

宇宙のバリオン非対称を電弱相転移のスカラー場(Higgs場)のダイナミックスから導く可能性について議論した。特に、一次相転移のBubble Wallの表面における過渡的CPの破れが重要であるとの指摘を行った。現実の模型に関してはMSSM(最小超対称模型)ではいくつかの困難があることを示した。これに対し、NMSSMではμ-問題の解決と共に、過渡的CPの破れが起こる可能性を指摘した。

年度毎の進展と成果

平成13年度

スカラー場において、一般に時間に依存する背景場があるとき、量子揺らぎが成長することがある。ここでは背景場の振動の原点付近を近似し、かつスカラー場が荷電を持つ場合の荷電生成の様子を数値シミュレーションで示した。

平成14年度

多成分スカラー場としてSUSY模型(MSSM)に基づいた ヒッグズ場 を考えその有効ポテンシャルを計算する。我々は以前 s-quark coupling に CP の破れの無い場合の分析を行ったが、今回 CP の破れが大きい場合を調べてみた。その結果、極めて狭い範囲ではあるが電弱バリオン生成と実験に矛盾しないパラメーター領域の存在することが分かった。

平成15年度

電弱相転移でバリオン生成を説明するには最小超対称模型(MSSM)でもヒッグズの質量と結合定数について制限がつき現在の実験値はその制限を越える可能性がある。そこで我々はMSSMを拡張する方法であるNext-to-MSSM (NMSSM)を考え, SU(2)一重項のスカラー場を導入する。我々は s-quark coupling にCPの破れのない場合にヒッグズの有効ポテンシャルを計算し、singlet scalarに伴う新しいパラメーターの領域を決定した。

平成16年度

NMSSM 模型の次の段階としてs-quark coupling にCPの破れのある場合のヒッグズの有効ポテンシャルを計算し、Higgs scalarと pseudo-scalarの mass spectrumを求め実験と矛盾しないパラメーター領域を定めた。更に、1-loop の寄与を高温展開で評価し、1次転移の起こるパラメーター領域を調べた。

平成17年度

Singlet scalarの導入によりにより、小さいHiggs massでもZ bosonとのcouplingが小さく現在の実験では見えない可能性がある。一方、このパラメーター領域でHiggs の有効ポテンシャルから電弱相転移を調べると単純な一次相転移以外に2段階転移などが現れ、かなり複雑になる。

平成18年度

NMSSM における新しいsinglet scalar の導入はバリオン数を破るゲージ場の配位(sphaleron)の存在に大きな影響を与えると考えられる。我々はsphaleronの存在条件をチェックし、sphaleronの数値解を求めた。次に、sphaleron遷移を含む電弱バリオン生成の確率を計算し、過渡的CPの破れが起こり易くなるかどうかについても調べてゆく予定である。

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