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Brief Summary of Each Supplement


Progress of Theoretical Physics Supplement No. 149



Chiral Restoration in Nuclear Medium


國廣 悌二, 保坂 淳, 清水 肇 編集

この号は 2002年 10月 7 - 9日に京都大学基礎物理学研究所で 開催された国際ワークショップ 「核物質中でのカイラル対称性の 回復 (Chiral 02)」 の招待講演の原稿を集めたものである。 QCD真空の非摂動的構造および高温あるいは高密度での可能な変化を探求する研究は 80年台以降の原子核/ハドロン物理学の中心的な位置を占めている。 この巻で主な焦点となっている問題は、原子核は十分高密度になっていて 重い原子核内部の現象には背景のQCD真空の変化として 記述できるものがあるだろうか、ということである。

理論および実験の広範囲にわたるトピックスが取り上げられて おり、この分野のほとんど完全なサーベイとなっている。 取り上げられているトピックスは以下のようである:
  (1) 核物質中でのカイラル対称性,
  (2) 原子核中でのシグマチャンネルでのカイラルオーダーパラメータの ゆらぎ,
  (3) 高温・高密度でのベクター中間子とカイラル対称性,
  (4) パイ中間子原子核およびK中間子原子核とカイラル対称性,
  (5) 重粒子およびその核物質中での振舞いとカイラル対称性,
  (6) 重いクォーク系の核物質中での振舞いとカイラル対称性,
  (7) カイラル有効理論と高温・高密度物質のカイラル対称性,
  (8) 有限密度での格子QCD,
  (9) 原子核中でのハドロンについての実験 (CHAOS, TAPS, GSI, KEK, LNS, SPring8 等),
  (10) 核物質中のハドロンを調べる現在進行中の実験と計画中の実験。

報告された実験データと理論研究の成果の多くはたいへん興味深いものであり、 原子核物理学の新しい時代の開幕を示唆するものであると言える。 それらは大きい原子核ではすでにカイラル対称性が部分的に回復している 可能性があることを示唆している。

ここに収録されている論文の多くは、通常の会議録と比較してより 多くのスペースを用いて丁寧に書かれている。 さらに喜ばしいことには、この分野の第一人者の一人である W.Weise 教授 (ECT*) の分野の全般にわたる鳥瞰図が含められている。 また、格子QCD (最大エントロピー法を含む)、QCD和則、 カイラルユニタリー理論、隠れた局所対称性の理論等、 様々な理論的なアプローチが各専門家によって紹介されている。

このように、この巻は学生とともに非専門家へのよい導入としても役立つであろう。


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