PTP
 


Brief Summary of Each Supplement


Progress of Theoretical Physics Supplement No. 153



Finite Density QCD


Proceedings of the International Workshop

中村 純、初田 哲男、保坂 淳、國廣 悌二 編集

この号は 2003年7月に奈良で開催された国際ワークショップ「有限密度QCD」 のプロシーディングである。しかし、単なる会議の講演の記録であるだけで なく、現在大きく発展しつつあるこの分野を勉強しようとする研究者への ガイドとなることを目的として編集されている。

有限密度QCDは、1970年代より摂動論に基づき研究が行われてきたが、 1990年代後半に、Alford−Rajagopal-Wilczek および Rapp et al. により、 カラー超伝導状態の研究が大きく進み、今日まで発展を続けている。

また、Fodor-Katz による Multi-Reweighting 法の提唱、deForcrand- Philippsen, D'Elia-Lombardo による虚数化学ポテンシャル法 の適用、QCD-TARO グループによるハドロン質量のテーラー展開法、 Swansea-Bielefeldグ ループによる multi-parameter-reweighting 法 へのテーラー展開の適用、イリノイグループ、日本のグループによるカラー SU(2)系の研究などで格子QCDによる研究が急速に進んでいる。

RHIC で現在進められている実験で実現される温度-密度領域には QCD 相図の臨界点がある可能性があり、大きな注目を集めている。

このサプルメントでは、カラー超伝導研究の第一人者である Alford 教授による この分野の包括的なレビュー、 虚数化学ポテンシャルの計算を最初に行い、有限密度格子QCDのエキス パートである Lombardo 博士による格子QCDの入門的レビュー、 Stephanov 教授による QCDの相図、臨界点についての丁寧かつ明快なレビュー、 核物質中でのカイラル対称性の破れについての世界的研究者の 一人である Kunihiro 教授によるレビューをはじめ、高密度ハドロン 物質中での中間子凝縮、強結合展開などのレビューが掲載されている。 また Fodor, Katz, deForcrand, Ejiri, Karsch, Sinclair など、 現在、もっとも活発に有限密度格子QCDの計算を進めている 招待講演者による論文、また若い研究者による多くの試みが含まれている。

この分野の研究者ばかりでなく、有限密度QCDの全体像を勉強したいと 考える若い研究者、学生が机上に置くべき一冊である。


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