日記 (3月)


主な予定

  1. 2/4-3/11 (Cornell Univ. , TAM, Host James T. Jenkins
  2. 3/11-14 Lehigh University, Host Daniel Hong
  3. 3/15-16 帰国
  4. 3/24-27 学会 (シンポジウム: ソフトマター物理の挑戦 講演)
  5. 4/12 夏の学校テキスト
  6. 4/14 稲盛財団助成金贈呈式
  7. 5/27 地球物理合同大会
  8. 7/23-25 流体力学会
  9. 7/31 夏の学校
  10. 9/29-10/25 Dresden (参加は未定).
  11. 全然終らない本1(〆切はとっくにすぎた)
  12. 全然終らない本2(〆切はとっくにすぎた)

4月


3/31:

休み。


3/30:

昔の論文の計算チェック。学会前に続き他の2つの輸送係数を計算し直す。 すると一つはノートに書いてある通り論文に書いておらず、もう一つは無次元化 で現れて来るファクターがきちんとしておらず訂正。やはり自分の計算は信用 ならない。原稿をTGFの事務局に送りcond-matを置き換えた。これを使って 再チャレンジしよう。

学会の時にIntroductionで紹介した論文の質問が多かったのでまとめて公開。 force chain splittingは これこれ, それからEurPhys.J. E 4, 451 (2001). またcreep flowの現象論で実験を見事に 再現しているのがこれ. 無論、referencesをたどっていくと最近の業界の急な動きがよく分かる。


3/29:

九大理数理の 福本さんからお願いがあった 流体力学会の講演 を散々迷った末に申し込んだ。わざわざ遠く迄自腹で20分講演をするために 行くのもどうかと思ったが、福本さんがお願いした講演者が皆来たら楽しい会 になるかもしれない。(まあ殆んど来ない気もする)。また東北大に顔を出して 議論する必要もあることはある。しかしキャンセルする可能性はまだある。

古沢さんと奥村さんにお願いした物性研究の記事を快諾して頂く。これらは楽しみ。 科研費が当たれば御二人をお呼びしてセミナーをして、議論をして頂きたいと思う。

松田哲さんの「弦理論の起源」という講演があった。第1回素粒子メダル受賞を記念 してのものだったが歴史を踏まえた非常にいい講演 だったと思う。60年代の錯綜した素粒子論の歴史は 坂田先生 絡みでだいぶ知っていたがChewのBoot and strapが弦理論に繋がっていく話は 初耳で興味深かった。やはり歴史を知ることは重要だと思う。(因みに第2回の 素粒子メダルは牧さんが受けたが、受賞対象は坂田先生と中川さんとのニュートリノ 振動の予言であった)。またパワーポイントの式のない欲求不満のたまる発表を聴き 慣れていると手書きで式がある程度書いて分からそうという発表が新鮮で分かりやす かった。やっぱりパワーポイントはよほど注意しないと駄目だと思う。

仕事は全然駄目。


3/28:

代休を勝手に取って法隆寺に行く。車で行ったら大変だった。


3/27:

どうも仕事になっていない。とりあえず物性研究への原稿のお願いをソフトマターの 若手2人にお願いした。

「ソフトマターが物理」ですかという質問には深い意図があるのかと思ったが、どう もそうではないようだ。実験、シミュレーション、理論が連携しているという意味で は物理学そのものであって、それらのどれかが欠けている分野よりはより「物理」 らしいのは言うまでもない。但し今後質的に発展する余地があるかどうかとか、若者 を引き付けるに足る核があるかについては議論があるだろう。(質問はそういう核心 をついたものだと思ったし、土井さんもそう判断したから返答も歯切れが悪かった のではないかと推察する)。さしあたっての問題は(実験はともかく理論の)学生の 供給源となる研究室がない事である。川勝さんの東北大の研究室に期待しよう。

ソ連の「カラマーゾフ」の映画は割とよく出来ています。特にイワンの俳優は イメージにぴったり。原作に叶わないのは仕方がないけど、今まで視た全ての 映画の中でも屈指の作品だった。

大学の同期の毛利から論文が来る。 Blackholesの合体というホットな話題に大昔僕が書いた凝集の論文が役に立つのか。 宇宙はにいろいろ面白い事がある。凝集は非弾性の極限だから昔からやっていることは 余り変わらない。


3/26:

朝に大学に行って雑用を済ます。学会に向かうバスの中で、野坂さんに 会い、午後は2時からであることを指摘される。仕方がないので白川さんの 総合講演を聴いた。

学会はSSTセッション。アメリカにいるときは殆んど頭になかったしBoltzmannの経験 や境界の扱いから判断して期待せず望んだが、さすがというべきか 佐々の格子ガスのデータは非常にきれいで説得力があった。バルクではいける のかな。量子系でもSSTを考える人がいたが何故通常の散逸関数で扱わないのか 意図が伝わってこなかった。

学会では加藤さんやソフトマターの人の多くから「SST批判をするのであれば面倒 臭がらずに冷静に緻密にすべき。SSTが本当である場合でも正しい批判が必要であり、 その作業は建設的である。」との指摘を受ける。ごもっとも。片手間にやるには しんどい話ではあるが。

飲み会では林さんの向かいだったので彼女の話をただ拝聴していた。 いやあ、すごい。


3/25:

学会。午前はいろいろ回ったが結局聴くべき発表は見つからず。

午後のシンポジウムは会場が狭く、収容できない人が多々でて、文字通り「熱気」 が溢れていた。前半はパワーポイントの「きれいだけどひっかりのない」講演が 続き、やや不満。後半に入って古沢さんと奥村さんの講演は野心的で且つ内容的に もレベルが高く面白かった。僕の発表は太田さんが突っ込んでくれたせいもあって 盛り上がった。やはり聴衆がよく知っている人の前での日本語の講演は楽でかつ 楽しい。

会終了後、Soft-matterの人達との飲み会。昔一緒になる機会は多かったが最近御無沙汰 している人や初めての人と話が出来、面白かった。僕の「Edwardsが大家ぶらずに堂々 としょぼい発表をする」という意見が土井さんや太田さんに受けた。名の通った 人は意図的にでも「しょぼい」研究をすべきだと思う。土井さんは産業界への フィードバックが大事と強調されていたが、そういう事より自ら研究を継続できる 環境を保って行く事の方が(僕には)大切だと思う。


3/24:

学会初日。國仲君の発表には数多くの反応があったがどうまとめるべきか方向性が 見えて来ない。多分法線方向や接線方向の反発係数が1を越えることがあることを 強調すべきなのだろう。村上君の発表は 考えさせる。というよりどう考えるべきなのであろう。2次元系の輸送係数が対数 発散することは確実な様である。とするとKawasaki-Oppenheimの前の段階に戻って しまったのか。

午後は御手洗さんに議論をして貰う。どちらかというと常識的な反応をしている。 ということは現段階でも極性流体+Jenkinsの境界条件はうまく行きすぎていると 解釈すべきか。

午後の第2セッションはちょっと覗いただけで帰宅。


3/23:

バグはあった。しかし更に小さくなった。従って改善は見られない。

発表の準備。30分というのは中途半端だ。ちょっとトラペが多い。うーむ。


3/22:

熱流境界のある場合の計算を一応完了。ちょっと改善されたが充分ではない。 fitting parameterなしというのも辛い。どうも秋に計算したμ_Bの値が小さい 様に感じる。多分factor 2とかそこいらは違うだろう。その影響は意外に大きい と思われる。これから昔のノートの検算。泥縄の極みのような気がする。(折よく final chance of resubmissionのメールがTGF01の主催者側から来た)。まあ間に 合わないだろうからどうまとめるのかも考えないといけない。

大信田君は 3年以上かけてもうまくいかないテーマに数日しか研究時間を 割かないで発表するのか。そもそも何でBingham flowの方を 発表しないのであろう。

一昨日のお客さんは東大理物の3回生だったが ここを見ると分かる通り何故か粉体の実験やシミュレーションをしている 学生が沢山いる。頼もしいというか不思議な気がする。


3/21:

午前は休養と家族サービス。午後は計算。


3/20:

論文が正式にacceptされる。

午前はようやく頭をすこしずつ動かして計算。結構ややこしい。きりのいい処で 東京からお客。学部生なのにいろいろ考えて実験しているのに感心した。更に珍客が あったりして、学会の準備の方に手が回らなかった。まずい。


3/19:

昨晩は眠れず。時差のせいか調子が出ない。そろりそろり再開した感じだ。 学会があるから本当はスピードアップしないといけないがどうも心と体が 言うことを効いてくれない。

委任経理金の担当事務局が4月から総人に移るらしいので残額僅かだった ホソカワのお金を使い切る。


3/18:

よく眠ったせいか,元気。午前中に稲盛財団の事務処理と静電気学会の原稿の校正。 幸いに余り事務仕事がたまっていない。

まだ研究に集中できるほど気力は回復していない。 Dresden のポスターが来る。魅力的だがちょっと時期が良くない。 渡航費はあるので半分位参加するかな。

夕方になるとさすがに眠い。


3/17:

時差のせいで早く目が覚める。久しぶりに子供の相手等。ひたすら眠かった。 早く就寝。


3/15-16:

朝6:00にHongの教会関係の友人夫妻が迎えに来る。1時間20分程のドライブで Philadelphiaへ。飛行機に乗って一眠りしたらまだ滑走路にいた。乗り継ぎが 短いので焦る。

往きとはすっかり面目を一新したDetroit Airport では幸か不幸か日本行きの飛行機の出発が遅れる。2時間遅れ で乗り込んで一眠りしたらまだ滑走路にも出てなかった。その後一旦機外へ出るなど 4時間半遅れで出発。関空到着は夜の9時10分位。この時間になると電車が少なく 京都駅11時半で終電の地下鉄で家へ。家についたら17日になっていた。


3/14:

金君からメール。稲盛財団 研究助成金を首尾よくせしめたとのこと。

Hongとちょっと宿で議論。まあ議論という程のものではなかったが。やはりMaxwell modelに空間依存性を入れるのはやさしくない。

昼飯のあと散歩中に腹の調子が悪くなる。それで宿に急拠戻る。思いがけず長い 散歩になった。その後は論文を幾つか見る。

Hongの家に行ってビデオと夕食。彼の末娘が妙になついてくれたのが嬉しかった。


3/13:

Maxwell modelは重力があっても厳密に解けると意気込んだがそんなに甘くない。 位置と速度分布の分離が非線形のために完全には出来ず速度分布を知らないと 位置分布が解けない形になっている。速度分布を衝突積分を消すように取れば 一応決まるかな。しかし魅力は一挙に失せる。

Hongがいないのではあるが本日はGuntonMcLennan に挨拶する機会があった。 McLennanとは若干の議論が出来た。昼飯はXiと一緒に取る。

晩になってHongが来る。晩飯を宿の辺りで適当に取ってくれという。夜に出歩く 気分がしないので宿にあるもので適当にすます。


3/12:

朝電話会社の人が来て作業をするというので身構えていたが外で作業を済ました ようだ。電話がかかってきた。早速在宅でコンピューターに繋いでみる。これは 便利。

10時頃にHong夫妻が来て大学へ。どうも大学へはずっと行っていなかったようだ。 復職したという話だったが。こんな調子だから物理の議論が出来る状態ではない。 それでも重力下での密度分布関数に興味があるようだからそれを考えてみることに する。

昼飯は適当な所が見付からずファーストフードの店に行く。午後preprint server で衝突項を簡略化したMaxwell modelというものを発見。非弾性があってもexactに 解けるとはと驚く。Hongはずっといないので何とも間抜けな存在である。

夕食はHongの家に招かれる。(Guntonの弟子で短期滞在中の) Haowen Xiと一緒。


3/11:

研究助成を申請していた某財団より速達があったそうだ。結果がはっきりしない ことがもどかしい。

ISSOに顔を出して荷物を出して鍵を返して、余った時間でreferee's reportを 書いたのでもうここでやることはない。さらばCornell.

Lehighへ移動。3時間しかかからなかった。Web検索による最短ルート 検索の賜物か。Hongは学校におらず事務官に連絡を取ってもらう。暫くして 歩行補助機付で現れたので驚いた。8月にItalyで会ったときも驚いたが更に 不健康に痩せた感じ。聞けば医療費に$300,000かかっているそうだ。保険が なかったら破産である。とても物理の議論ではない感じである。そもそも まだ学校に行っていないようだ。(話が違う)。

Jenkins等と一緒に夕食をとって彼に別れを告げて宿へ。人里離れた一軒屋で ちょっと不気味。教会関係のもののようだ。明日Internetに繋がればましか。 しかしHongの健康状態を考えるとがんがん議論するのは無理でCornellにずっと いた方が良かったというのが正直な所である。


3/10:

温度が低下して吹雪。ちょうどCornellに最初に顔を出した 2月4日のようで因果を感じる。

Jenkinsとの議論。温度勾配の効果を見積もる。やはり今までの項と同じ位の contributionはありそうだ。また境界での密度上昇分(これはあるいは効かない かも)を考慮すれば更に改善の余地がある。頑張れば今日明日中にも見えるかも しれないが...昼ご飯の時にどうやって共同研究を 継続するかの話も出て、DresdenとかNewton Instituteとか楽しそうな場所の 名前も挙がっていた。どうなるか分からないが実現すると楽しみである。

Jenkinsの勤勉さ、学生や訪問者への熱心で誠実な対応は非常に印象的だった。 日本に帰ったら彼の態度を参考にして対応を考えてみよう。

Cornellでの生活も残り僅かである。filesの圧縮と日本への転送も完了。 だから敢えて頑張らないことにしたい。 論文投稿まで持って行けなかったことは 残念だが研究に専念でき日本では出来ない議論を毎日のように出来たことは 収穫だった。今やっている仕事もまとまればそれなりに面白いのではないかと 思っている。生活面でも思いがけないパーティー等に誘われたりして久しぶり のアメリカ生活をまるで大学院の学生に戻ったかのように楽しめた。Illinois よりは楽しかったと言っていいと思う。

心残りはある。もうちょっと長くいたら成果がまとまっただろうというのは ある。Physicsの方に顔を出さなかったし、Department内の他の興味深い facultiesとも議論の機会が殆んどなかった。その意味で粉体以外の世界が 見えて来なかった。

また東北大の助手として同じ日に赴任した 村山さんが月曜に物理のコロキウム で話すので、聴講と再会を楽しみにしていたがLehigh行きのためにそれも叶わない 事となってしまったことである。因みに当時の東北の素粒子論はActiveで教授が 吉村、柳田、助手が村山、川崎、岡田(安)であった。教授2人迄が東大にいって しまったのはいいことかどうか分からないが皆偉くなっている。

Lehighはまた楽しみである。Daniel Hongとは気心の知れた仲であるから気楽に 議論ができる。また何か滞在中にするというのは不可能なので議論をして着想を 得ようという最も楽しい作業しかやらないからである。日本へ帰ってから大変 かもしれないけど。


3/9:

昨晩のパーティーは思いがけないことが一杯あった。TAMの3人組で出かけたが 車を持っていない上に目的地がはっきりしない。おまけに行き先の電話がない で道に迷ってしまった。最初は10分あればつくだろうというので7:50のバスに 乗ったが大周りをしたあげくNorth Campusどまりであった。そこからいろいろ 調べてバスを乗り継いだがバス停から目的地に着くまでに一悶着。やっと着いた 時は1時間20分遅れであった。

パーティーは予想以上に大勢の人が参加していて雰囲気に圧倒された。しかし friendlyな雰囲気に徐々に慣れ最後の週末のパーティーを楽しんだ。いつしか 深夜を過ぎ問題はどうやって帰るか。結局3人組の決断は(North campus迄) 歩いて帰る。3人は墓場を抜ける道をとぼとぼ歩いてNorth campus付近迄出て そこから深夜も運行されるただのバスに乗り込んだ。帰宅は1時過ぎであった。

朝に最後の洗濯をしてから Jenkins groupのexcursion. 非常に暖かい日であったが風が強かった。最初の目的地は田舎の水車小屋。 水車小屋を見るとトルストイの人生論を思い出す。科学者はトルストイから まさに馬鹿にされる存在だと。 そこでメイプルシロップを買う。ついで Skaneatelesに行き昼食。それで帰るというツアー。風が強いせいか Skaneatelesのきれいな湖畔を歩いたり写真を取ったりできなかったのが 残念。

論文がPRLに acceptされる見込みになった。英語の改善等のminor changesを要求されて いるが(何年論文を書いても改善されない)。ちょっと時間がかかったのは (よくあることだが)一人のrefereeが誤解して見当違いのコメントを並べた ためである。


3/8 :

昨晩遅く迄頑張ったが結果が思わしくなく、寝床で大きなミスに気がつく。 しかし事態は改善せず。速度場が合わないということはshear rateとviscosity だけに原因があると言って良い。shear rateはenergy dissipation rateとviscosity で決まる(但し温度の関数)のでこれらの見積もりが悪いか、 あるいはenergy balance equationで無視 した他の項、温度勾配による拡散、spin fieldとcouple stressのcoupling等が効く かどちらかである。

Jenkinsとの議論で彼の境界条件の論文で熱流が温度とか境界での速度の関数で 決まるとしていることを指摘された。今まで熱流は温度勾配に比例するとして 定温条件では無視できるとしていたがその項を含めれば事態は改善する可能性が ある。今までbulkのエネルギーバランスだけで決まるのに違和感があったのだが その点でもこの項の存在は自然だ。しかし時間が足りない。

今日のコロキウムの speaker. おばちゃん である。眠かった。

今晩はこの 人と日本人留学生が企画するパーティーに参加。彼らは2週前もご一緒した 仲である。大勢の参加が見込まれる。


3/7:

Jenkinsと議論したが妙案はないようだ。取り合えず手持ちの輸送係数を使って 計算してみようということになった。(濃厚の場合まで含んだ)粘性率はJenkins and Richmanの計算があるしμ_rは衝突側からの寄与は御手洗・早川で計算してある。 μ_Bは希薄極限と衝突側からの寄与がゼロという事が分かっている。それらを 組み合わせるという事である。と言うけど月曜までに間に合うと思っているのかな。 金曜にパーティーがあるし、土曜はexcursionなんだけど。

一方で帰国準備も始まっている。御土産の写真集等を購入。郵便小包の箱を調達し ここで入手した論文のコピー等を詰める。また電子ジャーナルからダウンロード できるものは目録をつけて整理する。こんなことをやっていると研究へ一踏ん張り がきかない。

それでも計算してみるとωは改善されたが速度場が悪くなったようだ。温度は 相変わらず低すぎる。まだ間違いを見つける方が先だがちょっと見通しがよくない。


3/6:

午前から昼にかけて通常のEnskog理論の計算を詳細にフォロー。特に問題なく積分 できる。スピンが入ったせいで相対速度と直角方向の自由度が残ることが問題と なっていることがはっきりした。McCoy et al.の論文をコピーしに物理の図書室へ。 外を歩いていると暖かく、ここを離れるのがもったいなくなった。論文は日本で 読んでも分からなかったがやはり分からない。単純な事を勘違いしているだけの 筈である。

RichmanのD論を手にいれたので道が開けるかもしれない。

SengersとKawasaki-Oppenheimの論文をざっと見る。やっぱり歴史の残る論文(と 川崎さん)は凄いなあと感心。まあこの位の事はやらんといけない。 日本へ帰ってからの課題。 もっとも対数補正があって も係数が小さいのであまり気にしなくてもいいようだ。(まあこういう論文を読んで 現状を考えると市来の愚痴もよく分かる)。

まあ本当は過去の仕事の積み上げでなくその分野の文献を参照しなくて済むような 分野を選ぶべきなのだろうが、なかなか難しい。粉体もまさにそう思って始めたが 過去の積み上げは歴然としてある。一方で過去と断絶した分野というのは底が 浅く、すぐ廃れる。廃れなかったものの中から本当に意味のある新しいものが 残る。過去と断絶して意味のあるものが作れるかどうかは疑わしい面もあるが。

Richmanは方法論が違うので 役に立ちそうもないし、考え違いはなさそうなのでLegendre展開をして 有限項で打ち切ってみる。ガウス積分と組だから最初の数項でいいかと思ったのだが どうも収束しつつあるようにはとても見えない。一応級数解は構成できるのだが 目的にそぐわない。


3/5:

論文.

積分できない。事態好転せず。軸が固定していたら訳ないが。Jenkinsは僕がいる 間に計算の主要部を終了させたいような感じだが、難しいだろう。無理な近似が 入ってくる可能性もある。Kawasaki and Oppenheimのlogarithmic singularitiesも 気になるので、Sengersの古い論文(2次元Enskog termsとKawasaki-Oppenheim singularitiesの陽な計算: Phys. Fluids Vol.9, 1333,1685 (1966)) を見てみる必要がある。

PDFの立場で こういう意見 (3/4) をするのは感心しない。そもそも彼が見ているような古い論文は価値があるから 今も読まれている訳で古い論文だから質が高い訳ではない。基本的な事を 認識しないと話がおかしくなる。論文の質を気にする以前に 自分が要求するレベルがあってそれを満たした上で論文が書かれている筈である。 そう納得すれば他人の論文の質を気にしても仕方があるまい。それ以上に PDFでも論文が書けない(年平均1本以下)という事実は のは仮に職を得たとしても論文を書くことは限りなく難しいことを 意味する。職を得るつもりがあるならば最低でも論文を書くスキルがある事を 示さなくてはならない。人事では当然質の方が重視されるのであるが あまりにも寡作ではそういう警戒をされる。 田崎さんの話はその最低水準を 満たした上での話であると解釈すべき。学生やPDFはそういう事(獅子や赤児に なる)以前に駱駝の修養が必要という事である。(市来が元学生だからちょっと 強い調子で書いています。)


3/4:

寒くなってきた。午後4時で-6°Cで、予報では明朝-15°C位迄下がるとのこと。 今雪も舞っている。

終日積分をしている。最初からやって先々週の所より先に来ているがテンソルの 積分をどうするのかで手間取っている。

どうも積分が手詰りであるので跳ね返り係数が1を越える実験的論文を眺める (Louge and Adams, PRE in press).


3/3:

洗濯のあと学校へ。JenkinsからTex fileが来ていたがコンパイルできず手直しに 時間がかかった。その後、議論。その後、Ivanaと夫人と一緒にLake西岸の眺めの いいところでゆっくりと時間をかけてLunch.

RichmanのThesisを図書館に探しに行ったが誰かが借りているようでなかった。 かわりにsegregationや2相系を議論したManciniのThesisを借りて来る。


3/2:

昨晩帰ると絨毯がはがされて水がことぼれているから乾燥させないといけないという メッセージが残っていた。加湿器から出た水のせいみたいだ。こちらに落度があると は言え、停電騒ぎから未だに天井の電灯は復旧していないし、住みにくい。 いろいお考えると眠れなくなった。

Jenkinsとの議論。やはりまともにdense caseに取り組む必要があるだろうという 意見で一致を見る。彼はJenkins and Richmanの使ったGad expansionを使い僕は 先週までやっていたオーソドックスな方法を使うことになる。彼の方が早そうだ。

LunchはJenkinsと一緒にとる。物理屋が粉体研究に参入してきてどう思うかと 聞いたら、実験家はよくコントロールされたいい実験をするが、理論家は物理を しようとしないから閉口している、との評だった。物理をしないというのは統計物理 の人間が(本質を捉えるとか言って)変なモデルを考えたり、不精をしようとしたり して、あまり粉体を物理的に考察しようとしない点を指す。反省すると共に同感 である。後、粉体のKinetic Theoryをやっている人間の中ではGoldhrischの理論を 批判していた。彼のBurnett項まで計算して圧力が異方的になることを指摘した 粉体ガスの論文をかなり詳しく読んだことがあるが同様のことは普通の弾性ガスでも 言えるので何をやっているのか分からない印象を持ったことがありJenkinsの意見に 同感である。

眠いから頭が働かないなと思っていたら、Jenkinsのグループに属しているイタリア からの訪問学生であるIvana Agnolinに Prof. Sacheが応募した 写真展と応募作品の審査結果の発表があるから見に行こうと誘われる。週末だから いいかと思ってついていくと会場はDown townでSacheの作品は4つの1等のうちの 一つに選ばれていた。よく分からないままSacheに 「我が家でパーティーをするから来ないか 」と誘われて、そのまま同行。教授とお嬢さん、Ivanaを含め10人近くが夜遅くまで パーティーをした。お客の中には この人も いた。190位ある長身が目立っていた。


3/1:

午前中から昼にかけてずっと計算間違いを直しつつ速度場とスピンを計算。多分 間違いは除去できたと思う。結果は速度場は割と濃厚な系の粒子シミュレーションの 結果と驚く程ぴったり一致。速度の壁のスリップの大きさまでばっちりであった。 しかしスピンの方はものの見事に外れている。位置からしてずれている。そうすると 速度場の一致も偶然っぽいな。

コロキウムは Bodenshatz. 乱流の見事な実験。特にLagrangian的な測定が可能になったことは画期的かもしれ ない。その一方で乱流は何を目標にすべきかは見えて来なかった。地道に研究を 一歩づつ進めるしかないのかもしれない。