日記 (10月)


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主な予定

  1. 10/13-15: 研究会
  2. 10/30-11/1 複雑流体の物理(III) 数理研
  3. 10/31 : 粉体工学会原稿〆切
  4. 11/7: 東大生産研->総文
  5. 11/26: 名大「ソフトマテリアル研究会」
  6. 12/11 : 「ながれの事典」〆切(2件)
  7. 1/28-30: 理論応用力学講演会(OS9) セッションプログラム(1/30(木))。
  8. 全然終らない本1(〆切はとっくにすぎた)
  9. 全然終らない本2(〆切はとっくにすぎた)

11月


10/31:

午前では学生の発表にまずまず質問が来ていた。鵜川さんの発表は6年位前に着想 を得て3年前に学生にやらせようとしたそのままのきれいな実験結果だった。着想は 完璧に正しかったのだがその展開能力がなかったことが悔やまれる。あの話には まだ多重対流への応用他が先にあるであろう。甲斐さんのところの 液晶系の話は懐かしく拝聴するが着実に進歩している。

懇親会に出席。


10/30:

昔から思っていたことだが、小貫さんの本を読むとまた 密度揺らぎがある場合はOsmotic pressureがある方が自然な気がしてきた。 気体論では短時間しか扱えないから出て来ないのか。

昼にうまいと評判のラーメン屋に行こうとしたが散々迷った挙げ句定休日。 おまけに夕方からしか開いていない。おかげで 研究会 に遅刻した。

研究会では大信田君の話があったが目的がはっきりしないという印象を持った。 聴いていてフラストレーションのたまる講演だった。


10/29:

1コマ目の講義の後どっと疲れる。

ようやく小貫さんの本を入手。ボリューム感溢れる。それもその筈で714 pagesも ある。相転移ダイナミックスの集大成。

明日からの研究会でのreview talkの構成がまとまらない。強引に終わらす。

相関は非線形効果をどう取り入れるか。

原稿の督促の電話がある。いい加減破綻しているな。


10/28:

予想通りわがままな要求が来る。いい加減に頭に来たがある程度応じて変更。

午後に航空の青木研で(Cercignaniと一緒にMathematical Theory of Dilute Gasesを 書いている)Pulvirentiのセミナー。Qunatum Boltzmann equationの導出。 全部は分からないがかなりクリアな講演であった。もう一つの講演も聴きたかった が教務仕事のために戻る。青木研は旧曾根研で、気体分子運動論の日本の中心である。 前にエアロゾル研究の原稿でお世話になったがそれっきりであった。しかし最近 こちらがGranular gasesに手を染めたせいもあってまたつきあいが出来た。何せ BobylevやSantosが長期滞在をした処であるからないがしろにできない。

戻ってすぐに講座主任と実験主任と一緒に解のない問題に解を見つける作業を する。講義を増やして幾つか動かして、まあまともな案が出来たかな。その結果を まとめている最中にカリキュラム専門委員会に臨時出席を要請され出る。戻った後に 時間割をまとめて皆に送る。


10/26:

教務委員の仕事の中で一番厄介なものは時間割編成である。何しろ皆勝手な事を言う からその調整は大変であり結局教務委員がバッファーになって誰も希望しない(勿論 本人の希望しない得意でない) 科目を担当する事になる。皆時間割を特定の日に集中させて 研究日をどのように確保するかにやっきになっている. その結果清水さんの言うような贅沢な 講義はしようと思っても出来ない。僕の文系物理も教務委員をしているが故に来年は したくても担当できない。全学共通科目3コマ(東大風に言えば6コマ)のノルマはき つく東大並の講義は難しい。

今日も時間割の作成に一日費した。何しろ(クラス指定科目等の)境界条件がものすごく rigidである癖に教官の希望は全くその境界条件を満たさないので事は厄介であった。 最終的には私がバッファーになり、更に何人かの希望を無視して何とかsolutionを見つけ ることが出来たがこれから来る文句を考えると憂鬱になる。 既に文句の電話等をかなり受け取っている。さっさとやめたい仕事である。


10/25:

自分(や同僚)の講義を素晴らしいものと宣伝する神経はない。電磁気は(前期の力学 で単位を甘くしたせいか)1コマ目なのに立見も出ている。 前は(単位がきつかったせいか)閑散としていたが。2コマ目の文系物理は音の話。 パイプの長さと音の高さの関係等。

午後の卒研では4年が笹本さんのノートで悪戦苦闘していた。見かけとは違いこの ノートは相当に難しいというのは私も感じている。ところでこのノートを見ると TASEP以外のq 場合は戻って来た粒子と先に進んだ粒子の鉢合わせを排除する メカニズムは入っているのだろうか。

会議。


10/24:

ノートをまとめる。相関長がえらく短い。そのせいでReynolds数が小さくなっている ことは明白。やはり線形領域の相関長を持って来るのに無理がある。繰り込みでも せねばいかんかな。

科研費の書類を提出。内容は土曜のものから殆んど手を入れなかったが、 提出後にミスが発覚。つまらん変更にトラップされた。

先週種を蒔いた接線方向の跳ね返り係数の理論を、その後國仲君がいじったら 数値実験の結果と良好な一致を得た。理論の枠組は古いものだが、その中に真実が あったということであろう。國仲君のD論をまとめる上では大きな一歩になる。


10/23:

風邪で頭痛。

相関長は面倒な計算せずに出た。その相関長を使うとReynolds数はかなり小さい。 エネルギー散逸率も分かるので普通の意味でのKolmogorov lenthも計算できた。 昨日の線形安定を隔てる臨界波長とsame orderになっている。

セミナーは蟻の話。


10/22:

臨界波数のノートを作る。そのまま変換すると臨界波数の方が礒部君の言う Kolomogorov wave numberより小さい。臨界波数は不安定領域のスケールの下限 だから何か変。まあEnskogだしファクター2の違いだから気にしても始まらない かな。ということでこっちの方は多分同定できた。Reynolds数でのスケールは 速度相関から見積もるのが標準なようだが相関関数の計算は大変そうだ。


10/21:

2次元粉体ガスの不安定性を起こす臨界波数を計算。礒部君の言うKolomogorov scale の下限を与えることは間違いない。値は彼のKolomogorov scaleと近いように見える。

風邪で喉が痛い。


10/19:

科研費の書類作成。大体終わる。仕上げは来週か。研究はできん。

昼飯は賞味期限切れのカップヌードルだった。


10/18:

授業日。午前の講義2つは特筆すべきことはない。午後の4年セミナーで笹本さんの ノートを読みはじめるがちょっと難しいようだ。直積表現に慣れていないせいだろう。 卒論用のテーマはあるが卒論迄に間に合うかどうか。

衝突については昨晩ちょっと見て接線方向の跳ね返り係数を理論的にある程度言えそう というところで國仲君にバトンタッチ。

5時から会議。


10/17:

どうも一瞬というのは一日より長いようだ。簡単なのだが時間が細切れで頭が働いて いないと終わらない。仕方がないのでReynolds数の見積りについてのノートを書く。 続きは晩飯の後にやろう。

そろそろ科研費の準備もしないといけない。國仲君のD論は日程的にかなりきつい 上に結果が今一歩だからこちらも共同研究者として出来ることを考える必要があり そう。摩擦はもうちょっと後。京都に戻るとなんやかやとあって時間が足りなくなる。


10/16:

寝不足が解消できず眠い。とりあえず粉体乱流の話の具体的計算をやる。 Reynolds数の見積りは一瞬で完了。確かに大規模シミュレーションを やればReynolds数は大きくなる。Kolmogorov lengthの見積りも一瞬でできる ことを確認。これは後でやろう。

阪上さんのセミナー。Tsallisネタだが他の聴けばいらいらする話 (例えば5月の日記参照)とは一線を画している。Grape 6の計算迄あり、 断熱壁に囲まれた 自己重力系で準安定にTsallis的状態が存在することは確かそうだ。qの ダイナミックスにも興味が尽きない。素晴らしいセミナーだった。

6時から会議。


10/13-15:

九重研究会。泊り込みの研究会に参加するのは久しぶりで体力の落ちた中年には きつかった。あまり寝つけなかったのが痛かった。

研究会ではどうしようもない話もあったが知らない面白い話も幾つもあった。 オーラルの中では田中ダンの話がそうしたものの一つであった。いつかセミナーに 呼ぶことにしよう。

研究会では専ら古川と話していた。渋る古川を強引に参加させたのだが、 彼にはともかく私にはとてもよい事だった。小柴さんが「常時2つ3つの 時間があればやりたいテーマを持っているべき」と語っていたが彼はもっと 一杯持っているようだ。勿論、既に小貫さん他が持って来る 沢山のテーマをパラレルに手際よくこなしており、その合間に自分のテーマとして model Hの拡張と その実験的有効性を示した優れた質の高い研究成果を挙げている。 彼の腹にはSSTより健全かつ野心的なテーマもあり将来が楽しみ。

研究会では那須野さんの摩擦をほぼ完全に説明する古川理論も議論の対象と なっていた。「ほぼ」を取るためにアイデアを出したが、それは駄目だという のが帰りの新幹線で指摘された。帰宅後にそれならば別の考えを入れれば うまくいくのではないかというメールを出した。自分で確認する必要がある。

礒部君とは粉体乱流の議論をする。Reynolds数をどう測るべきか、Kolmogorov scaleは何かということを考えたが。議論を通してどうすればいいのか(多分) 分かった。これも帰宅後のテーマである。

御手洗さんの講演を聴いてもcollisionalからfrictionalへの転移を研究しなければ ならないという感を強く持った。重要度が高い問題である。一方、2次元の correlationの問題は川崎さん風に言わせれば「物理的に重要でない」かもしれない。 それは彼女や古川のimplicit commentでもある。とは言え誰かやらないといけない だろう、とは思う。

古川や御手洗さんと地震の液状化についても議論。古川のナイーブな描像は よさそうだが具体的に研究するには何をどうすべきかを明らかにする必要がある。 超流動の噴水効果が参考になるだろう、という結論で持ち越しのテーマになる。

いろいろと刺激を受ける研究会であったことはまちがいない。


10/12:

保守党の元大物代議士で汚職で失脚したジェフェリー・アーチャーは元々 人気のある小説家であり、彼の作品は日本語にも多数訳されて文庫で容易に 入手できる。その作品の一つに「大統領に知らせますか」があり、「大統領」は 彼の創作したアメリカ初めての女性大統領という設定になっている (また他の作品での主人公の後日談という形にもなっている)。しかし元々は、この 作品での「大統領」はEdward Kennedyであって1984年あたりの近未来を描いていた ことを覚えている人はどの位いるであろうか。1980年から Edward Kennedyが大統領になって更に二人の兄同様に狙撃される可能性が高いという 70年代の常識的観測をストレートに作品にしていたのである。

しかしE.Kennedyは大統領になれなかった。その意志がなかった訳ではない。 民主党の大統領指名候補選挙に立候補し、序盤戦では現職の大統領に圧倒的に リードしていた。しかし過去の女性スキャンダルが表面化し、やや失速し、 ソ連のアフガニスタン侵攻があって完全にその夢はついえた。

現職の大統領はカーターであった。イランのホメイニ革命に対応できずアメリカ 大使館を封鎖されて風前の灯であったがアフガン侵攻に強硬姿勢を取り オリンピックのボイコット等の数々の施策から人気を盛りかえし、ケネディを 破ったのであった。無論より強硬なレーガンの前にはなす術はなく、次の大統領 はレーガンになった。

確かにカーターは前後の大統領を見回しても平和指向が強かったし、キャンプ デービッドでの合意を取り付ける等の成果もあったがノーベル平和賞には相応しく ないと思う。(因みにJimmy Carter centerはEmory大学にあり、キャンパスを 歩いているのを見たことがある)。


10/11 :

授業日。1コマ目は火曜より進度が遅くて終了間際に焦る。普通2回目の方が 早くなるのだが。2コマ目ではアドリブで小柴さんのノーベル賞の意義と意味 について文系向きに解説する。そのせいか丁度分子の実在の話がきりよく終わった。 3コマ目は4年の卒研で何をやるかの相談。大学院に進む学生なので「研究」を お勉強として終わらせたくない。昔卒研をPREにpublishしたことを再現したいと 思う。とりあえず笹本さんの講義ノートを読みながらネタを探すことにする。

Refereeを2本仕上げる。といっても両方とも2nd roundだからすぐ終わる。


10/10 :

田中さんのノーベル賞は驚き。妻の従兄が島津で同い歳だとか妻の友人が彼と同じ アパートに住んでいるとか京都ならではの話もあった。しかし歳もあんまり違わない ではないですか。

昨晩Rossiの自伝を読み返す。GiacconiはRossiの学生(Rossi gang) ではなかったようだ。彼の受賞 対象の論文はGiacconi, Gursky, Paolini and Rossi, PRL 9, 431 (1962)だと思うが Rossiの自伝にはエピソードが詳しく書いてある。GiacconiはAS&Eに属しておりRossi 等のMITのグループと協力してロケットの打ち上げを実行し、X線星らしきものを 発見した。そこでX線のdetectorとかはGiacconiのアイデアで彼のinitaitiveで開発 したという記述がある。また論文はデータがそれほどきれいでなくて 最初rejectされたがRossiが自分が責任持つから と友人のeditorに強引に頼み込んで出版したということも書いてある。 こうしてみると(またここを読んでみても)Giacconi等の仕事を受けてX-rayに入った 小田さんはちょっと苦しいのかなとも思う。勿論本当にX-ray sourceが宇宙にあるか という論争に終止譜を打ったのはCyg X-1の発見の際の 小田さんらの業績が大きいのだが。無論Rossiは どこからどうみても生きていれば今回ノーベル賞を貰ったと思う。

金君はどうも孔の解析のやる気はないのか。そうすると孔の記述は削除かな。

Pomeauの論文は読み進んでいない。結構大胆な近似を使っているが、そこでの 一つの式に延々と詰まっている。


10/9 :

國仲セミナー。やはり結果がまとまらないので苦しい。(三角格子)は駄目だから 元の目論見通りランダム格子中心(それに正方格子の結果をプラスして) でまとめるしかないか。理論がないから苦しい。

金君との議論で孔の周りの滑べり解析をある程度やってみることになった。


10/8 :

ノーベル賞. Giacconiもノーベル賞を貰ったが、小田さんが生きていたらチャンスがあったの ではないか。またRossi夫人に会ったときに (多分Giacconiの師匠筋の)Bruno Rossiがノーベル賞を貰えなかったことに 噴懣やるかたなしという感じであったが、(少なくとも有名な論文の共著者であって 他にも一杯仕事がある)Rossiが生きていたら賞を貰わなかったとは思えない。やはり 長生きすることが最も大事か,と思う。

國仲君の話はあまりきれいにまとまらない。やはり格子モデルには限界があるか。

金君との論文のsecond reportが来る。(レポートには明らかな間違いもあって) 喧嘩を売っているのかとも思うが、うまく 弱点も衝いている。refereeの間違いを指摘することや、書き方を改善すること はたやすいが、物理的内容に乏しいというのはその通りな面もあるから辛い。 孔の話は境界層解析をきちんとやらない限りやはり使えない。バルクだと音波吸収 かshockか。最終的には孔の話はなくなるかもしれないな。


10/7 :

5時から理物の会議。座長が議論が好きそうで困る。こんな話を皆がいるところで やると何も決まらない気もするが。

Kinetic Theoryの文献を幾つか集める。前から思っているがneedle gasなら 確実に極性流体になると思う。これも候補の一つ。境界近傍では揃ってしまうので 難しい面もあるが、それだけにrheologyは面白いとも言える。

國仲君のシミュレーションで新しい結果が出たが、その結果に困惑。ポアソン比に あまり依存しないかも?バグがないとすると三角格子の初期配向の問題か。 一筋縄ではいかない。


10/6 :

幼稚園(次男)の運動会。例年通り水口がいた。

息子と将棋。最近長男には滅多に勝てない。次男にも互角という情けない状況。


10/5:

次に何をするかという事でPomeauの論文(1971)を読む。前半は読みやすそう。 この論文ではKawasaki-Oppenheim(1965)が久保公式から出発したが、それは そもそも駄目だろうということでBBGKYから直接運動論を展開して2次元の対数発散 はあるという主張の論文である。いわゆるring kineticsの枠を出ていないが 多分正しいだろう。比較的最近(と言っても古いが)のErnstの >reviewが参考になる。

次のテーマは幾つもあるが折角ならば前の仕事や極性流体の流れと繋げたい。(単独 では弱いから)。


10/4:

午前に授業を2つ。電磁気は火曜と合わせるのがポイントかな。文系物理は 化学の分子論、不可逆性のこと、ボルツマンのこと、反原子論のことなど。 久しぶりに2つ続けるとへろへろだ。昼の打ち合せの後、午後の卒研は4回生 帰省中につきなし。半年で出来る卒研のテーマを考えないといけない。

午後はくたっとしていた。古沢さんの原稿が届く。

11月の出張予定が2つ入る。


10/3:

Santosからのメールによると彼の計算にも誤りがあって訂正中とのこと。 正直で結構いい奴かもしれない。京大では1999に1月程、Bobylevと一緒に 曾根、青木研に滞在したこともある とか。そのとき議論できなかったのは残念だ。どちらにせよ無視できない。

今回のことで痛感したこと。運動論の専門家は世界に一杯いて同じような考え を持つ人は多いこと。また欧米の仲間うちのネットワークに入っていないと 競合したときはかなわないこと。今回のネタは運動論の専門家であればすぐ計算 できると確信しても不思議はない。

幸い計算ミス(引き算)の後への影響は大きくなく論文の訂正、再投稿は午前中に完了。 粘性率の最終表式だから知らん振りをしておく訳にもいかなかった。cond-matも 置き換え。

某所より1980年の統計物理の国際会議で大御所間での パネルディスカッションのメモが送られて くる。22年前とは思えない程現状と変わらない。このことは第3者から見ると 極めて興味深いのだが、(chaos等のはやりものはあったにせよ) 20年もの間質的な変化がなかったことは残念なことであろう。


10/2:

息子の運動会を見てから大学へ。

客観的に見るとSantosの仕事の方がより一般的だな。おまけにミスまで指摘されて 立場がないぞ。金君との仕事へのコメントといい全く鬼門だな。書き直しが必要だ。

セミナーはそんなこともあって消耗して疲れた。こういうときに限って事務仕事が 降って来る。


10/1:

後期の授業開始。立見がある中、そつなくこなしたがレスポンスはない。

レフェリーを1件書く。

明日のセミナーの準備。

Santosよりメールがあり。投稿論文と彼のcond-mat/0204071が殆んど一緒という 指摘があり。知らなかった。うーむ。なんてこった。


9月