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HPCI戦略分野5課題3
(05/09/2014 last update)
HPCI戦略分野5「物質と宇宙の起源と構造」(平成23年度〜27年度)における
課題3「超新星爆発およびブラックホール誕生過程の解明」に携わり、京コンピュータ用の
コード開発および大規模数値シミュレーションプロジェクトに携わっている。
概要
太陽のおよそ10倍を超える初期質量を持つ恒星は、進化の最終段階で鉄の中心
核を形成させた後に重力崩壊し、原始中性子星を形成させる。その直後に原始
中性子星周辺から発生する衝撃波が十分なエネルギーを得た場合には超新星爆
発が起こり、最終的に中性子星が誕生すると考えられている。一方、超新星爆
発に失敗した場合には、原始中性子星に物質が降り積もり、最終的にブラック
ホールが誕生する。ブラックホールはこれ以外にも、2つの中性子星からなる
連星(連星中性子星)が合体する現象でも誕生すると考えられている。しかしな
がら、超新星爆発やブラックホール形成の機構は未だに解明されていない。こ
れらの解明は宇宙物理学における最重要課題の1つである。解明が難しい理由
は、従来の天文観測手段で観測するのが本質的に難しい現象だからである。そ
のため、大規模数値シミュレーションを用いた理論研究が、有力な解明手段に
なる。超新星爆発や連星中性子星の合体においては、自然界に存在する4つの
力、重力、電磁気力、強い相互作用、弱い相互作用、の全てが重要な役割を担
う。しかも強重力現象であるため、一般相対論的取扱いが必須になる。したがっ
て、これらの解明には、物理法則を記述する様々な基礎方程式を解かなくては
ならない。近似なしに、第一原理的計算を行うためには、空間的な対称性を仮
定せずにアインシュタイン方程式、流体(あるいは磁気流体)方程式、素粒子組
成の発展方程式を解き、さらに実空間3次元、位相空間3次元を考慮したボルツ
マン方程式をニュートリノ輻射輸送に対して解かなくてはならない。さらには
テーブル化された高温高密度物質に対する状態方程式を取り入れなくてはなら
ない。このような仕事には、当該分野の現状をはるかに超えた巨大シミュレー
ションが必要であり、また仮にコードが存在したとしても多大な計算機資源を
必要とするので、京すべての計算資源を用いたとしても実行は不可能である。
そこで、本課題ではいくかの挑戦的課題を段階的に発展させることを目指して
いる。具体的には以下の4つの課題を段階的に達成することを目的としている。
1 世界で初めて空間3次元の流体力学的方程式、および実空間3次元、位相空
間1次元(周波数空間)を考慮したニュートリノ輻射輸送方程式を解き、ニュー
トリノ加熱機構に基づく重力崩壊型超新星爆発機構の解明を目指す。
2 空間3次元の磁気流体計算をこれまでにない高解像度で行い、超新星爆発や
連星中性子星合体における磁気流体効果の解明を目指す。
3 空間3次元の流体方程式、アインシュタイン方程式、およびニュートリノ
輻射輸送方程式を解きながら、特にブラックホールの誕生過程の解明を目指す。
4 空間3次元の流体方程式、および実空間3次元、位相空間3次元のニュートリ
ノ輻射輸送方程式(ボルツマン方程式)を解くことにより、ニュートリノ加熱機
構に基づく重力崩壊型超新星爆発機構の解明を目指す。
なお、当該戦略分野の京コンピュータによる本格実行は、平成23年度の準備
を経て、24年度後期よりスタートした。
成果例
1:実空間3次元、位相空間1次元を考慮したニュートリノ輻射流体力学による
超新星爆発シミュレーション
2:数値相対論的磁気流体シミュレーションによる連星中性子星の合体とブラックホールの誕生
3:数値相対論的輻射流体シミュレーションによる連星中性子星の合体とブラックホールの誕生
4:実空間3次元、位相空間3次元を考慮したニュートリノ輻射流体力学による
超新星爆発シミュレーション
成果報告