カシミア効果は場の量子論的な真空揺らぎに対する時空の幾何学的配位の寄与 が真空圧力として現れる効果です。この効果は1948年に存在が予言され、1958 年には実験により観測されました。その一方で時空の境界が非一様な加速度運 動をする動的な場合には粒子生成が引き起こされることが理論的に予言されま すが、その効果は現在まで実験的に確認されていません。我々は断熱近似を用 いた(1+1)次元有効理論的手法でこの動的な場合の研究を行ない、その反 動としての真空圧力が境界の速度に依存すること、及びその大きさが静的な場 合よりも強くなることを示す結果を得ました。
Minkowski時空中を等加速度運動で動く観測者にとっては 真空が熱浴に見えるというUnruh効果が知られているが、 その解析に関係したRindlerノイズと呼ばれる量を Brown運動でのEinsteinの関係式や 電気伝導でのNyquist公式のような 揺動散逸定理を用いて計算した。 その結果は以前に計算されている結果と完全に一致し、 これによって曲がった時空の場の理論に特徴的な 熱的状態にも揺動散逸定理が適用できることを示した。
D-braneは、弦理論において非摂動的性質を担うものとして、盛んに研究され ている。D-braneを記述する有効gauge理論であるBorn-Infeld理論は、その静 的古典解や動的な性質が、弦理論と密接なつながりを持つ。ここでは Born-Infeld理論の古典解として、一定の電場の中の粒子を持ってきて、その 静的および動的性質と弦理論の性質との関係を調べる。超対称性を保つ配位と 保たない配位の違いについても、議論したい。
D0-branesをトーラスにコンパクト化すると、dual torus 上の Super Yang-Mills理論になることは、よく知られています。また、ある非可換性を持っ た dual torus 上で定義された Super Yang-Mills理論は、constantな NS-NS 2-formゲージ場 B が背景にあるときの、トーラス・コンパクト化を記述して いると考えられています。一方、(D0-braneの理論を基にしている)Matrix Theory では、存在しなければならない transverse M5-brane が、いままで見 つかっていません。transverse M5-braneは、10次元では、NS5-brane に対応 し、まわりに NS-NS B場の背景を作ります。したがって、transverse M5-brane を如何に Matrix Theory で記述したらよいかという問題は、B場中 の D0-branes の系と関係しているかもしれません。
そのためには、B場の field strength H場がある背景を運動する D0-branes を扱わなくてはなりません。今回紹介する研究では、この最も簡単な場合とし て、一定の3-formfield strength が存在する 3-torus の上にコンパクト化さ れた D0-branes をどのように記述したらよいかを調べました。また非可換な幾 何学との関係も議論しています。
弦理論の非摂動的対象(ソリトン)であるD-braneの低エネルギー有効理論は ゲージ理論で記述されることが知られています。そこでは、D-braneの集団座標は Higgs場に対応して、一般には行列に格上げされます。そのために、D-braneの 集団座標どうしの交換子はゼロにならず、D-braneのworld volumeは量子力学の 位相空間のように非可換な構造を持っていることが分かります。一方、D-braneを2階反対称ゲージポテンシャルが背景に存在するトーラスに コンパクト化すると、その低エネルギー有効理論は非可換トーラス上のゲージ理論に なるということが予想されています。
この研究では、これらの非可換性が、それぞれD-braneの座標および運動量演算子の 非可換性の反映であり、それ故dualな関係にあること、さらにある特別な関係式で 結び付いていることを示します。また、この結果の拡張や、弦理論の非摂動的 定式化に対して果たす役割についても触れたいと思います。
D-ブレインの存在する状況で、弦理論の Fishler-Susskind 型の 発散の相殺を考察する。これは閉弦振幅と開弦振幅の間に関係を つける。この弦理論での発散の相殺を低エネルギー極限で見ると、 場の理論の発散の除去に対応する。閉弦振幅と開弦振幅の間の関 係は、低エネルギーでは D-ブレイン時空と D-ブレイン上の場の 理論との対応となり、興味深い。