★ 4月
いろいろ惑星リングの文献を見る。自己重力が重要だということになっているが 信じがたいな。志田、川合の論文は専門家には無視されているようだ。
Granular gasの実験の論文も見る。似た話は沢山でてくるが、 そのものずばりはないので一安心。
解析結果にいろいろ変更あり。摩擦係数が測れることが分かったので拡散係数との 間の関係も議論できる。(何か他人の話に似て来て嫌だが、論文で使っている 現象論の式のために必要)。投稿は遅れている。
午前は摩擦のセッションへ。川端さんの話はクリアで少しづつ進展がある。 三浦さんの話は注目していたのだが、式等の説明が早く、絵以上の情報は得られ なかった。思ったより簡単ではないようだ。
セッションを流体に移動。飯間さんの話は羽がしなると渦が対称になるという発表。 昼は湯川さんや伊藤研の学生と取る。重力多体系のソリトンの話を聞くが、プラズマ でソリトンがでるので出ても不思議はない。その先に何を見るかが問題。
午後は「宇宙と生命」のシンポジウムに出る。須藤さんの話は概論。井田さんの 話は刺激的だが、一般向けだのため、子供に買った「ニュートン」や「異形の惑星」 程度の話も多く含まれていた。しかし惑星形成論の進展は急。大石さんは「分子雲 中の生命関連分子の観測」。こちらは惑星形成程急な進展ではないが、着実に進歩 している感じ。小林さんの「化学進化と生命の起源」の話。言うまでもないが 「生命の起源」は全ての自然科学において最も重要なテーマであるが、そこを 研究テーマにするのはリスキーでもある。オパーリンやミラーのよく知られた実験 から始まって、最近の惑星科学の進歩を踏まえた大気組成に基づくアミノ酸合成 の話までは手堅い。問題はその先で小林さん自身は世間で多く言われているRNA worldの前に「がらくた」worldがあり、そこで自己触媒的な反応機構が重要に なったのではないかという話だった。
今回の学会は講演会を聞きに来た感じ。話としては面白かったが、聴衆になって しまった自分に不満を感じる。
学会初日。午前の最初は分子機械のセッション。佐々に草稿を見せてもらう。 このセッションでは佐々木さんの話が面白かった。佐々の話の前まで聴いて 座長のセッションに移動。質問が少ない。3準位モデルは使えるかも。量子歩行の 解析も注目を集めていた。波束は動かない。
粉体のセッションはめぼしいのがないので、さぼってプラズマのセッションに行く。 初田さんの「クオーク・グルーオン・プラズマ」。理論的内容は同名の10年以上前に 出た丸善の本と変わらないが、実験でグルーオン・プラズマが一瞬見えてきたという のは驚き。動的な金の衝突のシミュレーションも面白い。常深さんの話は漫談の様 だった。犬塚さんの「星形成・惑星形成におけるプラズマ物理」は前に流体の セミナーで聴いた話を翻案したもの。相共存状態が乱流的なのは当り前なのか。 輻射加熱と冷却のあるガス系をもう少し勉強する必要がある。(翌日にお会いしたとき にセミナーをお願いしておいた)。
基礎論に戻るが部屋が狭くて阪上さんの話は聞き損ねた。金子さんの話を聴いた後、 部屋の外に出て中村君と議論。そのまま夕食は本城さん、村山さん、坂口さん や佐野研の学生等ととる。数学オリンピックで連続メダルを取った学生がいたので 驚く。
移動。混んでいた。
投稿したと思ったら似た内容の論文がちょうど印刷されたところだった。最近この手 の話が多い。もうちょっとまめに論文をチェックする必要がある。文献を書き加えて 再投稿。
佐野さんから電話。リングに興味があるとのこと。思いつきを語る。
原稿書き。もう一つ中身がないかな。
論文投稿。
引き続き昨日の話を考える。もう一つ条件が足りない。
朝一で公聴会。内容はBlock-copolymerのバネ・ビーズモデルによるシミュレーション。 ある程度以上の温度ではラメラがずりと垂直にできる。またずりによって減少して いた粘性率がある領域で上昇し、また下がるなどの興味深い報告をしていた。
引き続き、教授会と少人数担任制の説明会。全く面倒な制度を作ったものだ。また 系登録の履修要件が引き上げられたので留年生が増え、その面倒を担任が見ないと いけないとは。
大幅に遅れて昼食会に。昼食会では光藤君の報告。現象論でキンク間の引力がある ことを導き、その効果は定量的に正しいことを数値的に確認した。現象論のところを ちゃんと導出できれば問題がないのだが、そこはまだのようだ。
名古屋市科学館へ。年末の坂田・早川レクチャーのときに申し込んでいた天文学会 の一般向け講演会に長男と出席。講師は国枝さんと松原さんで、内容はX線天文学に よるブラックホールの話とダークマターやダークエネルギーの話。前者は年末の 田中先生の話とのオーバーラップが多かった。前日の書庫の整理ででてきた30年程 前の新書(「銀河から宇宙へ」)の内容を思いだしながら、その間の進展を拝聴した。 中質量ブラックホールが観測によくかかるようになっているのは新鮮だった。後者の 宇宙の大規模構造の話を興味深く聴いたが、一体現状をどう判断すべきなのは分から ない。宇宙質量のうち、バリオンの質量が4%で、ダークマターが1/4程を占め、 残りの殆んどはダークエネルギーによるというのは、宇宙項に対する観測事実以上の ことを何も語っていないような気もする。
というような話を小学生と同じレベルで聴いていた。長男は肘でつっつかれて 質問を2つしたので後で賢いのではないかと勘違いされたようだった。宇宙の話は 小学生でも大学の分野の違った物理の専門家と同レベルの理解で楽しめるという のはすごいことだと思う。(私の頭が小学生並ということかもしれない)。 宇宙の研究で食べて行ける人は幸せなんだろう。
休憩中に杉山さんに声をかけられてびっくりした。あの若さで理事とは大変そうだ。
連休に彦根から名古屋へ。正月に動けなかったために母に子供を見せるためでもある。
彦根城は既に少なくとも4回は行っている。多分5、6回は行っているだろう。次男は 初めてだが長男は4つのときに連れて来たことがある。長男は歴史好きなのでもっと 喜ぶかと思ったが、あまりお気に召さない様だ。最初に来たときは感激したものだが。
実家では本とかの整理。囲碁と天秤を発掘し、京都行きの荷物にする。次男と碁を 打つがさすがに勝負にはならない。と言って5子置くと負けた。昔祖父に聖目風鈴を つけても殆んど目が残らなかったのに比べると甚だしく弱い。
Flatnessの密度依存性は弱くある。予想通り濃い方がflatnessは若干小さい。粒子数が 少ないとflatnessが大きくでるようだ。ちょっと困った。
ひたすら宇宙フォーラムの作文をする。やるべきことのイメージははっきりしている のだが。ところで気体の粘性率の測定はどうするのが標準的なのか。落下とか、圧力差 による計測はNavier-Stokesの計算を経由しているので使いたくないのだが。液体みたい に粘度計が多種多様に用意されているのではないことに気がついた。Maxwellはどう やって測ったのだろう。
山本さんとペアになって担任になり、新入生に対して一人10分の面談をしないといけない。面倒だ。
昨日は体調不良も併発して家に戻ってから寝ていた。少し体調は戻って歯痛もましに なってきた。とはいえ、あまり調子はでない。
指数関数分布ということでq-modelの拡張を考える。凝集、分裂過程とみれば指数関数 分布になるのは自然。あとはへ理屈をつける必要がある。
古川と摩擦の論文のことでちょっと議論。
太田さんのセミナー。結局のところはblockcopolymerのモード解析をした訳だが非常 にうまく本質を掴んでいたように感じた。現象論かくあるべし、という教科書の ような話。昼食は古川と太田さんと取る。昨日から急に歯肉炎がぶりかえして 調子が悪い。
(昼飯でも話題に出ていた)川勝さんから論文が届いたのでひとしきり議論。surfactant 系にblockcopolymerモデルを使うことの是非など。やはりまだ統一的なモデルはない ようである。
物性研究編集会議。次期編集委員も出席したので非常に出席者が多かった。定款の 改訂を議論したのでいつもよりずっと時間がかかった。定款では編集長(委員長)の 任期が5年となっていて一瞬焦る。最後に挨拶をして3年3ヵ月の編集長業は おしまい。
原稿書き。やはり幾つか追加計算をしておく必要がある。拡散係数と温度の関係は 要チェック。考え方は静力学にも使えると思う。
原稿書き。
昼食会で金君に東京の報告をして貰う。そこからの判断:大槻君のアプローチは 昔に一杯調べられていそう。そこのチェック次第。SST話は理解不能だが、壁で 化学ポテンシャルの測定をする点が最も理解できない。またその壁が一つできたから といって何で普遍的な話になるのか?早くも我々の計算は例外になってしまったらしい が、適用できない例はどんどん増えているように見えるのに1個都合のいい例ができれ ばいいのか?謎は深まる、というより理解できない。まあ論文もないのに理解しよう もないのだが。
そもそも根本的に何をやりたいのかが分からない。平衡でうまくいったからといって 非平衡でうまくいかないのは歴史が示している。ミクロのカンニングが嫌だって そんなの19世紀の1時期に流行った考え方を持ち出されても困惑する。SSTの 基本思想が理解不能だと改めて思った。
高橋落選。何だかんだと言って選ばれると思ったので驚いた。筋を通したことは 評価したい。正直なところ東京の失敗はあまりにも無惨だったし、メダルを期待する 国民の重圧には耐えられず選ばれても走ることはなかったと思う。プロ化が悪く 働き、あまりにも大きなトップとのレベルの違いに本人は耐えられなかったの であろう。
原稿は進まず。
undulationの場合はぱっと見た程指数分布に近くない。一方で河原田君が シミュレーションしたガス系では見事に指数分布。またパラメータ一つでガウス 分布になる。どうもこっちにfocusをした方がいいようだ。
金君に東京の様子をちょっと聞く。驚いたのは我々の論文で伝えたことが2年 経ってようやく彼らに伝わったらしいことだ。また一個の例を作れば事足りると思って いることも解せない。(その一例すらできていないようだが)。こちらとしては反例が 一つあれば宗教じみたことは言わなくてもいいと思っている。少なくとも希薄気体 系では使えない話であることはほぼ明白。Jouのinformation theoryも同様。
原稿を書き始めるが進まず。
蔵本さんの最終講義。相変わらず話がうまく味合い深いものだった。講義の後で 理物で簡単なパーティーで蔵本さん等と話す。藤坂さんが物性研究に講演を 載せられないかと言われたのでとりあえず物性研究に載せるように原稿を作る ことにした。パーティーの席上では 久しぶりに御目にかかる人もいた。
Elservierの人が来たが何をしに来たのか今一つ分からなかった。
ワークショップ3日目。
橋本さん:昔のレビューと田中(肇)さんと小貫さんを足して2で割ったような話。 今井さん:surfactantの話を何故かblockcopolymer modelで解析。講演後、その あたりの事情を聞く(理論家の課題)。座長のセッションは2つの講演とも質問が 多かったが、途中で座長を無視してビデオを見せたがる人がいて困った。 Beysensのbreath figureの話は息が長い。88年に聞いたとき学位論文のテーマに しようとしたが捉えどころがなく挫折した。山本さんはきれいな絵を沢山見せていた。 昼飯の後、Goldburgをみずほ銀行まで連れて 行く。田中(文彦)さん:生体高分子のシミュレーション。ヘリックスパターンの 生成が興味深い。Netz: 荷電系とhydroのカップルしてダイナミックス。lubrication を無視したあたりの歯切れは悪かったが、なかなか面白い結果を出していた。
ワークショップ2日目。
Fredricksonその2。平衡系の計算では揺らぎの強いところで意味のある結果を 出すことが分かった。しかし非平衡は式を書いただけで、使えない。田中肇 さん: hydroの効果でネットワークを形成する点が面白い。シミュレーションモデル も中途半端に不真面目なところが評価できる。Bonn: ワークショップの中で 最も面白い講演だった。これは他の人も同感だったようで昼食では彼の講演の話題で 持ちきりだった。講演内容はagingとrejuvenation(若返り)の話。agingが徐々に 平衡に近付く話だとすればrejuvenationは外場(shear)等で構造を強制的に壊す話。 例えばその指標として粘性率の増減を観察することができる。主にゲルの話をしたが 粉体やfoamにも使えるという話や、何も説明していないちゃちなモデルを導入した 点も含めて大いに刺激的だった。八尾さん:液体金属の1次相転移の話。今まで 確認されていかった相があるという話。質問が多かった。ポスター:あまり回った 訳ではない。むしろローカルに議論。村山さんとどう実験するのかの話。両者に 勘違いがあってやはり上からの観測は難しい。それで下から見るのがいいだろう という話になった。粘性率はレオノメーターで普通に測るの がよいだろうとの話。粘性率が分かると久保公式の正否と有効温度の話が分かる。 他にも実験をすると楽しみなことがいろいろある。
昼飯は土井さん、田中さん等と食べる。Bonnの話やカイラル物質の沈澱の話。 アーチの話。地震の話等。
ワークショップ1日目。ポスターの番号を貼る。
講演の短評。小貫さん:これまでになくdisorderな発表だった。質疑応答が 噛み合っていなかった。Fredrickson: 場の理論での高分子のシミュレーション。 やりたいことは分かるがGLでできないことが出来ているのかが疑問。土井さん: カイラル粒子の沈澱とshear migrationに関する非常に面白い話。プロジェクトを 離れるとこんなに面白い話ができるのだから、プロジェクトの功罪を考えてしまう。 Netz: 荷電系の静力学の強結合から弱結合までの話。場の理論を使って、その2つの 極限をきっちりと論じていた。まとまった話には好感をもったが、もう一つ面白み に欠ける。Dhont: Couette flowでのshear bandingに関する話をきっちりと解析した 話とThermal diffusionに関する怪しげな話。Kubo公式に関する質問にうまく答えて いなかった。非線形の輸送を論じていると思う。
昼飯はFredrickson,好村、太田、村山とそばを食べる。村山さんとは粉体ガスの 実験の話。実測は可能とのこと。見るべきは相関、パターン、乱流、久保公式の 破れ、と後、何だろう。
とりあえずundulation-bendingは棚上げかな。橋は何故崩壊するかという本を みてもアーチは有効な筈だが、計算すると不安定だし、何か足りない。速度 分布の話でまとめることを検討。
うーむ、将棋では今度は最弱になったか。
「ヴァイオリニスト33」という本を読む。クライスラー以降、レービンあたりまで の代表的なヴァイオリニストを32人と最近の日本の演奏家を取り上げていた。 ハイフェッツやスターン等のレコードを聴き込んだ昔の人やパールマンやクレメル のような現代を代表する人の評もさることながら、より興味をもって読んだのは Midoriとチョン=キョンファの項である。Midoriに関しては既に詳細な評伝も読ん でいるし、95年に聴いたコンサートから判断することも可能である。95年は彼女が 精神的に一時、崩壊する直前であり、あまり精彩を放ったものではなかった。 メニューヒンのように失われた天才という評が当たっているのかもしれない。 私はチョン=キョンファの83年と89年?における2回のコンサートを聴いている。 当代最高のヴァイオリニストとの評があった程の全盛期だった 83年のコンサートは本当に凄く、コンチェルトで都響が完全についていけなく なっていた。シャーマンを思わせる彼女の演奏は鬼気迫るものがあり、余人の追随 を許さないものであった。その一方で演奏技術には若干の疑問符を抱かせる印象も あった。演奏に刺激されて彼女のレコードを殆んど全部揃えたことは言うまでもない。 評論家の評を読んでも、レコードを聴いても、やはりコンサートでの印象は概ね 正しい印象を持った。2回目のコンサートはN響相手にコンチェルトを弾いた。 そこで子供をあやすようにN響をリードしていたのがやや意外だった。彼女の演奏に 膨らみが出た分、剃刀の様なきれ味が若干鈍くなったような印象をもった。 その後、彼女はやや低迷しているような感じがある。シャーマンのような集中力は 年齢と共に衰える一方で、技術的な不確かさが彼女の迷いを生んでいるきらいも なくはない。同門で同世代の3人の中で、 パールマンはおろかズッカーマンにも水を開けられたきらいがある。本の中での 彼女の項目のタイトルは「天才は復活するか」となっていた。私も復活を願って やまない。
会議。1年たったらまた教務。しかし全学共通科目関係だから適任かな。 また学位論文の審査が回って来た。
速度分布が指数関数になるメカニズムは前にやった単純な話でOKなようだ。 とりあえずいろいろな状況で成立するのでそれでまとめることにしよう。
分散関係が使えると思ったがどうも駄目。
金君がメールを書かないので昨日きたJouのメールに返信。どう書いても突き放した 感じは拭えない。
川崎さん(新潟)のセミナー。Unstable periodic orbitを使って非平衡状態の ensembleを構成しようとする話。具体例ではBernoulli CMLを使って解析していたが 一般的に有効に見える定式化であり、過去の研究の自然な拡張になっている。 Jacobianの固有値が自然測度やKS entropyと結びついて、非平衡系の特徴づけ として成功しているように見える。今後の発展も期待できるということで物性研究 での解説をお願いした。
その後、学位を取った2人と川崎さんと一緒に会食。
あれこれやるがどうも芽がでない。
気がつけば3月。
午前はポスターセッションのプログラム作りできっちりと潰れた。70以上のポスター があって大変だ。詳細は ここ参照。 午後に増えた分も2、3あるな。
光藤君の現状報告。やはり1サイト定常解は1レーンと同じトリビアルなものだけ しかないのか。なかなか2レーンの個性のでた非自明な解を求めるのは難しい。
★ 2月