原子核、そしてその下部自由度であるハドロン・クォークが形成する量子多体系の研究は近年目覚ましく発展してきた。過去数十年の間に、実験・観測研究分野において高エネルギー重イオン衝突実験による超高温・高密度物質の生成や中性子星合体の重力波観測といった劇的な展開が起こると共に、数値計算研究においても計算機の性能向上に伴う進展と精緻化が実現し、理論研究を含む研究分野全体が互いに刺激し合いながら多方面に展開してきた。
2023年5月に惜しくも逝去された故・大西明教授は、クォーク・ハドロン、そして原子核理論研究分野におけるこのような展開の中で幅広い研究業績を挙げ、分野の発展に重要かつ中心的な貢献をされた。生前に氏が切り開いた研究課題や問題意識、開発した研究ツールは、現在も当該分野で重要な役割を果たしている。本研究会では、大西氏が遺したこれらの研究業績を振り返り生前の氏を悼むと共に、これらの遺産を基軸として当該研究分野の潮流を展望し、更なる飛躍の可能性を伺う機会とする。
本研究会は、大西氏の共同研究者を中心とした招待講演者のみによるプログラム構成とする。
3月2日(土)
13:25-13:30 世話人より
13:30-13:55
菅沼秀夫 「大西さんの物理学での軌跡とインパクト~重イオン衝突シミュレーションから、QGP、QCD、中性子星、ハドロン現象論まで」
13:55-14:20
奈良寧 「高エネルギー原子核衝突の微視的シミュレーション」
14:20-14:45
森田健司 「Femtoscopy研究のはじまりと発展」
14:45-15:15 休憩
15:15-15:40
小野章 「分子動力学法における量子統計性」
15:40-16:05
石塚知香子「大西さんが北大時代に育んだハドロン・核物理の発展の芽」
16:05-16:30
住吉光介 「高温高密度物質を探る―大西さんの思い出」
16:30-17:00 休憩
17:00-18:00 (10x6)「大西さんの思い出」
加藤幾芳(北大)/ 松原明(京大)/ 板垣直之(大阪公立大)
丸山敏毅(JAEA)/ 河野通郎(阪大RCNP)/ 国広悌二(京大基研)
19:00- 大西さんを偲ぶ会
3月3日(日)
09:15-09:40
三浦光太郎「強結合格子QCDと複素ランジュバン法で迫るQCD相図」
09:40-10:05 高橋徹 「場の理論における非平衡ダイナミクスの研究」
10:05-10:30
柏浩司 「符号問題の研究:機械学習を用いた研究を軸として」
10:30-11:00 休憩
11:00-11:25
兵藤哲雄 「フェムトスコピーによるハドロン間相互作用の研究」
11:25-11:50
神谷有輝 「フェムトスコピー研究の発展と大西さんとの思い出」
11:50-12:15
神野朝之丞「重イオン衝突・ハイパー核から探る中性子星」
12:15-12:20 世話人より