趣旨

クォーク・ハドロン科学の現状と課題

湯川博士がその研究の端緒を拓いた「強い相互作用」は、究極的には量子色力学 (Quantum Chromodynamics; QCD) を基礎理論として記述されることが70年代にわかった。 しかし、初期宇宙や天体などの種々な温度や密度における真空構造や、世界を構成するハドロンやその構成要素の クォークの究極の存在形態については未だ殆ど理解されておらず、豊かな未開の沃野として残っている。 その解明には様々の理論的手法の活用とともに新たな理論の確立が不可欠であり、その解決はこれまでの物質存在についての描像を根本的に変革するとともに、自然界における諸階層の物質の多様な存在形態に対する統一的且つ体系的な理解を与えるであろう。本プログラムは、続々と出てくる実験とタイアップして、クォーク・ハドロン物理学の理論的研究を進めるとともに、そのための不可欠の課題として下に列記したような関連する理論物理学の研究を同時に発展させ、クォーク・ハドロン科学を打ち立てることを目的とする。

関連する分野の例

クォーク・グルーオンプラズマ、ハドロン物理学、格子QCD、ダークエネルギー、ダークマター、バリオン生成、 CPの破れ、強相関系の物性物理学、内部自由度の秩序変数を伴う物質の相転移、宇宙初期の物理学、様々の極限 状態の物質構造、不安定核の構造と元素の起源、コンパクト星の構造、光学格子、ストリング理論、AdS/CFT対応、 ツイスター弦理論、(非摂動系の)非平衡ダイナミクスの解明

国際共同研究プログラム

・本プログラムにおいては、クォーク・ハドロン物理学の分野および関連する理論物理学各分野の研究テーマについて世界中の研究者が参加する長期滞在型国際共同研究プログラムを組織し推進する。個々のプログラムの詳細テーマを、 所内実行委員会のリーダーシップのもと、内外の著名な学者からなる国際顧問会議の意見を参考にして決め、国際的にオーガナイザーを選ぶ。

・期間1−3ヶ月程度の国際共同研究プログラムを、年間3件程度実施する。それぞれのプログラムのテーマにおいて、 国内外を問わず、世界の第一線の研究者(すなわちノーベル賞学者から新進気鋭の若手研究者まで)を常時10〜20名程集め、 いわば準所員として滞在し本研究所を最先端の国際共同研究が行われる現場とする。これまでから世界の指導的研究者の訪問が絶えないこの研究所を、実際にノーベル賞受賞につながる研究が生み出される現場とすることを目指す。

・この学問分野創生を世界的に認知させるために、国際共同研究プログラムやサテライト国際研究集会その他の本拠点の活動 により得られた成果は、インターネットや印刷物を用いた情報発信手段を従来以上に強化して全世界に配信する。