中性子星の状態方程式の探求
原子核は陽子や中性子からなりますが、これらの構成粒子は核子と呼ばれています。原子核は複数の核子が強い相互作用により結び付けられることで構成されますが、実は強い相互作用の性質は未だに正確には判っていません。比較的遠距離ではパイ中間子の交換に基づく湯川相互作用による引力が支配的であることは理解されているのですが、近距離になって斥力が働くような領域では、力の強さが定量的に判っていないのです。中性子星は自らの重力を、この強い相互作用に基づく斥力によって支えていますが、強い相互作用の理解が不十分なため、半径や特徴的な密度といった中性子星の性質も十分に理解されていません。しかしながら、近い将来、中性子星の性質の理解が重力波観測によって進むかもしれません。なぜならば、中性子星連星の合体では、中性子星の半径の情報が重力波の波形に強く反映されると予想されるからです。ここで中性子星の情報を重力波から抽出するには、定量的にどのような特徴の重力波が放射されるのか、理論的にあらかじめ明らかにしておく必要があります。われわれは、理論的に予言される多数の中性子星理論(具体的には中性子星の状態方程式)を用いながら中性子星連星の合体による重力波の特徴を数値相対論により調べ、来る重力波観測に備えています。さらに国際協力により、重力波のデータ解析法なども探求しています。また、数値計算に利用可能な状態方程式のテーブル化の整備も同時に進めています。
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