重力理論の探求
一般相対論は非常に成功した古典重力理論であり、これまでのところその綻びは見つかっていません。しかし、これまでの一般相対論の検証は、軌道距離の大きい連星パルサーや太陽系内のような弱い重力系における精密測定を用いてのみ行われてきました。重力波観測が始まると、ブラックホールや中性子星のごく近傍のような強い重力場から放射される重力波が直接観測されるようになり、強重力場における一般相対論の検証実験が可能になります。すると、これまでよりもはるかに強い制限が加わるだけでなく、運がよければ一般相対論の綻びが見つかり、量子重力理論への手がかりとなるような発見があるかもしれません。
また、近年の宇宙論的観測の進展により、ダークマターやダークエネルギーといった正体不明の存在が示唆され、大きな謎となっています。このような正体不明の存在は、重力理論を修正することで説明できる可能性があり、このような研究の流れの中でブレーンワールドモデル、有質量重力子の重力理論、拡張されたスカラーテンソル理論などが提案されてきました。このような重力理論は、太陽系内の天体運動の観測や宇宙の大域的構造の観測に無矛盾である必要がありますが、今後はこれらに加えて、重力波の観測結果から全く新たな制限が加わると期待され、重力理論に対する直接的かつ高度な検証がこれまで以上に可能となる地盤が築かれつつあります。このような背景のもとで、われわれは重力理論としての一般相対論はどこまで正しいのか、そしてそれを超越する理論はどのようなものなのか、さらにそのような新しい重力理論は、今後観測される重力波の波形にどのように反映されるのか、に着目し理論的研究を進めています。
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成果報告
2014年前期
- 重力波振動が起こる重力理論の修正としての双重力理論について、宇宙論的な摂動を解析し安定な背景時空の存在を示した。
- 重力波輻射反作用による回転するブラックホールまわりの最内円軌道の振動数変化を求めた。
最近の研究論文
``Effective no-hair relations for neutron stars and quark stars: relativistic results''
``Coalescence of binary neutron stars in a scalar-tensor theory of gravity''
``Possible existence of viable models of bi-gravity with detectable graviton oscillations by gravitational wave detectors,''
``A viable explanation of the CMB dipolar statistical anisotropy,''
``Isolated and Binary Neutron Stars in Dynamical Chern-Simons Gravity''
``Gravitational Waves from Quasi-Circular Black Hole Binaries in Dynamical Chern-Simons Gravity''
``Slowly Rotating Black Holes in Dynamical Chern-Simons Gravity: Deformation Quadratic in the Spin''
``Post-Newtonian, Quasi-Circular Binary Inspirals in Quadratic Modified Gravity''
``Black holes in braneworld models''
``Stability of Schwarzschild-like solutions in f(R,G) gravity models''
``Probing the size of extra dimension with gravitational wave astronomy''