第7回研究会簡単な報告(2007年3月9日)



坂東昌子

「女性研究者のリーダーシップ研究会」代表


■広原先生と川本さんの話


  4月2日の研究会は、出席者17名で、建築学という学問の性格から話を進められた広原氏の講演は、さすがに長い伝統と、その実践に裏づけされた内容で、男女共同参画という観点から言うと、興味深い。建築という分野が、基礎・応用というような切り口ではなく、芸術・科学・技術という複合的な広がりを持つ多面的な性格を持つ分野であることから話を始められた。欧米先進国では建築家とは、芸術家であった。ところが日本では、高深刻であるから、アーキテクトとエンジニアを合わせた学科を東大に作ったことが始まりであるということである。ここから見た、男女共同参画についてコメントされた。この視点から見ると、工学部とはいえ、昔から唯一女子学生がいたところであるという。今では、女性のほうが多くなっているし、さらに、家政学部には住居学科があるので、ますます女性の割合が増えているのであるという。 さらにまちづくりと関係するが、建築は近隣空間を作り、連続的で重層的なネットワークをつくるという多重構造をなしている。

そういう、前座の話があって, 広原先生の下で指導を受け、現在設計士として仕事をしておられる川本さんの話になった。女性設計士の歴史から始まり(最初に大学の学会ができたのが、「日本女子大学」だったそうである)、自分は第3期にあたるのだということであった。 広原先生は厳しい人である。で、林雅子さんのような設計士にあこがれて、 入ったのだが、広原先生に教えられ、だんだん建築の持つ社会的な意味、何のために誰のために、設計するかを考えるようになったそうである。 建築ブームの時代だったこともあり、職業としては女性にも広がった時代であった。 それでも最初は、電話に出ると秘書と間違われたそうで、「男はいるか?」といわれたそうである。こういうなかで、自分が手がけた設計、保育所設計、地域に開かれたサロンを持つ共同住宅などを手がけてきたそうである。
保育所でいうと、一番最近では、京大女性研究者支援事業として、 京都大学女性研究者支援センターが新しくオープンした。 女性教職員と学生に支援ができるような仕組みを整備していきた いそうであるが、新しい支援センター(医学部校内北西角。万里小路と旧白川通りの交差点入り口は万里小路側)もてがけされたそうである。なかなか、素敵な設計だそうである。訪問してみたいものだ。 この除幕式が、4月25日に開かれたそうであるが、これにも 係られたそうである。

コォポラティブハウスというのは、いわば、「現代長屋」である。これをてがけると、 生き方が見えてくるというのが面白い。特に、 この中で面白かったのは、特にシルバー時代の生き方に関しては女性のほうがはるかに積極的であり、「少子高齢社会」という見方からいえば、中年齢での女性の子育てと家事のために空白の時間が、さまざまの形で「取り戻されている」という実感を持つことができる、ということを感じたことである。中年時代を男性のリーダーシップで社会を牽引するとすれば、後年連では女性がけん引役を果たすということかもしれない。人間のライフサイクルという見方で社会でのリーダーを見るのも面白いと実感した。さらに川本氏は現場の中で、施主としっかり連携をとりながら専門家としての技量をどう生かすかという道を追求している企業組合の姿勢に同感する人が多かった。特に「コーポラティブ」ハウスといって数家族から十数家族で、共通空間を持ったある意味での新しい「大家族」の形態の事例を手がけている話は興味深かった。このような新しい住まいのあり方にまず相談に来るのは女性たちとのこと、女性の積極性がここでも現れており、大変興味深い。
後の議論も面白かった。 河本さんの感想:つたない話で恐縮しましたが、私にとってもいろいろと考えさせられることが沢山ありました。左京区のエネルギーといいますか、今日お見えの先生方を中心とした住まいづくりグループができたらさぞ面白い考察がなされるだろうなあと思いました。 広原先生のコメントも、「このグループは新しいライフスタイルを創造出来る先進グループだということで川本君たちと意見が一致しました」といってくださったそうである。後の議論からそういうことを感じてくださったとしたら、まさにうれしい話である。



■お知らせ

★女性研究者の会・ならびに女性支援室長登谷先生 との話し合い報告

これに先駆け、4月1日に、「リーダシップ研究会」の今後を議論することができた。 今まで協賛となっていた「女性研究者の会:京都」(代表:坂東昌子 事務局長:松下佳代)ならびに事務局の頼り発行担当係(工藤さんほか)、またリーダーシップ研究会の企画担当で参加していただいている宇野賀津子氏、さらに京都大学女性支援室長(登谷美穂子氏)等と話し合いの機会が持てた。そして,
という結論となり、当面の仕事として

こととなった。とりあえず、研究会の成果とその取り扱いについて方針が決まった。

うれしかったのは、京大尾池総長もこの研究会を評価されているとのこと、 京都大学と連携して、女性研究者の未来像を描き、それに向かって夢を実現する 歩みを作り出せたらいいなと思っている。(坂東記録)



■あとがき



■坂東補足
「少数派から多数派へ」という記事を書きました。 湯川先生が、「少数派から多数派へ」といわれた話 に関係しています。2007年1月23日に行われた「湯川朝永記念講演会」 で、野依良治理化学研究所理事長が講演され、そのなかで、「少数派から多数派へ」と いう話が出ました。これに勇気付けられてかいたものですが、新聞に載りました。 又紹介します。〈坂東)



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