原子核三者若手 夏の学校2016

時間割

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研究会

レビュートーク

「原子核物理におけるチャネル結合法と核反応研究」

福井徳朗 氏(日本原子力研究開発機構)

量子力学の基本原理である重ねあわせの原理は、原子核物理においても重要である。 最も単純な例では、重陽子の基底状態における s 波と d 波の混合が挙げられる。 一般に、異なる量子状態 (チャネル) の線形結合で記述された系の Schrodinger 方程式は、チャネル結合方程式と呼ばれる連立方程式を導き、それを解くことでチャネルの混合を考慮した波動関数が得られる。 本講演では、原子核物理におけるチャネル結合法の基本的性質について、先の重陽子の例に加え、Hartree-Fock 法などのいくつかの例を通して、その理解を深めることを目的とする。 続いて、核反応計算においてチャネル結合法を適用した我々の研究成果を紹介する。 特に、散乱における粒子の内部励起に関するチャネル結合法 (連続状態離散化チャネル結合法; CDCC) の説明に重点を置く。 CDCC を用いた研究成果の 1 つとして、従来の簡単化した模型では決して現れなかった移行反応における新奇な反応メカニズムを 報告する。

「QCD近藤効果」

尾崎翔 氏(慶應大学)

本公演では、最近我々によって提唱されたQCD近藤効果についてのレヴューを行う。 まず、物性系で良く知られた近藤効果について説明した後、高密度のクォーク物質中に現れるQCD近藤効果について解説する。 さらに、物性系でも知られていないまったく新しいタイプの近藤効果として、QCDにおいて初めて可能となる強磁場によって誘起された近藤効果について紹介する。

学生発表

発表者とアブストラクト一覧

発表者とスライド一覧

講義情報

三者共通講義

「ニュートリノ振動の発見」

梶田 隆章 氏(東京大学宇宙線研究所・教授(所長))

1998年、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノのデータからニュートリノ振動が発見された。 本講演ではこの発見にいたる経緯などを報告すると共に、時間があれば今後の(大気)ニュートリノ研究の方向についても議論したい。

講義1

「大規模殻模型計算による原子核構造研究」

清水 則孝 氏(東京大学大学院理学系研究科附属原子核科学研究センター・特任准教授)

原子核は、陽子と中性子を構成要素とした有限量子多体型である。 一見単純に思える原子核の構造は、量子多問題として多様な側面を持つ。 中性子過剰核においては、核力中のテンソル力成分が殻構造の変化(殻進化)をひきおこし、伝統的な魔法数が消滅するとともに、新たな魔法数が出現することが明らかになってきた。 本講義では、核構造研究の最も有力な理論的枠組みの一つである殻模型計算を用いて、殻進化や、形の共存現象などの不安定核構造研究の最近の進展を紹介する。 さらに、大規模殻模型計算の計算物理学としての側面を議論する。

講義2

「高エネルギーQCDの基礎」

八田 佳孝 氏(京都大学基礎物理学研究所・准教授)

QCDの基礎事項から出発し、深非弾性散乱(DIS)や電子陽電子消滅、ジェットといった高エネルギー過程の基本的な取り扱いについて摂動論的な立場から解説する。 またDISの高エネルギー極限とジェットの物理との間に見つかった非自明な関係性を紹介する。

講義3

「ストレンジネス核物理」

中村 哲 氏(東北大学大学院理学研究科・教授)

今から、60年以上前、1952年に発見されて以来、ストレンジクォークを核内に含むハイパー核はハイペロン間相互作用に関する貴重な知見を与えてきた。 これまでのハイパー核分光実験およびハイパー核に関する理論的研究の双方において日本の研究者が主導的な役割を果たしてきた。 また、近年、JLab, MAMI, J-PARC等において新たなハイパー核精密分光実験の進展が著しい。 本講義ではこれらの新しいΛハイパー核精密分光実験をベースにして、これまでのストレンジネス核物理学研究の成果、そしてこれからの展望を議論する。