原子核三者若手 夏の学校2020

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講義情報

三者共通講義

「素粒子論の現状と展望 ‐21世紀の素粒子論‐」

川合 光 氏(京都大学理学研究科)

過去20~30年間の素粒子論の研究は、数理的色彩の強い弦理論研究と、TeVスケールの超対称性を仮定する現象論的研究に遊離していました。 LHCの結果は超対称性にとっては否定的でしたが、逆に、標準模型が(小さな修正を除いて)プランクスケールまで成り立つという可能性を示唆しているともいえます。 これは、弦理論のダイナミクスと、暗黒物質やインフレーションをはじめとする現象論的研究を、統一的に追求するという新たな方向性を示しているように思われます。 すなわち top downとbottom up のアプローチを融合することで、新たな素粒子論を展開できる可能性があるわけです。 ここでは、そのような可能性について具体的に議論してみたいと思います。
備考:講義時間は100 min + 質疑応答10 min程度を予定しています。

実験

「子核物理学的宇宙像 ~スピンとアイソスピンの協奏の視点から~」

上坂 友洋 氏 (理研

宇宙の様々な活動を駆動するエネルギー生成、元素合成過程、中性子星に代表される高密度物質の性質を支配しているのは原子核物理学の法則である。 昨今粒子物理分野で注目を集めている中性子星とその合体現象での元素合成においては、中性子過剰核/物質が主たる役割を担っている。 理研RIビームファクトリーでは、世界最高強度の中性子過剰核ビームを用いて、中性子過剰核/物質の本質に肉迫する研究が進められている。 本講義では、スピンとアイソスピンのインタープレイや低密度核物質中での粒子相関をキーワードとして、原子核物理学を通して見える宇宙の姿について掘り下げてみる。

ハドロン理論

「中性子星状態方程式:QCDの観点から」

古城 徹 氏  (CCNU)

ここ10年程の間に中性子星の観測は目覚ましい進展を遂げてきた。 太陽質量の約2倍程度の質量を持つ中性子星の発見、中性子合体イベントの測定から来る重力波とそれに伴う電磁的プローブの測定などから、中性子星の最大質量、半径に対する上限・下限が決まりつつあり、これらの情報はQCDの状態方程式の情報に焼き直すことができる。 本講義ではQCD状態方程式に対する制限を基に、中性子星内部のQCD物性について議論する。 最初に有限密度QCD(核物質からクォーク物質まで)に概観し、中性子星観測への動機付けを行ったのち、近年の観測結果の解釈について触れる。 最後にクォークダイナミクスの観点から中性子星内部の理解を試みる。

原子核構造

「時間依存密度汎関数法で探る原子核ダイナミクス: 原子核反応から超流動現象,中性子星まで」

関澤 一之  氏(新潟大学)

原子核物理学における大きな目標は,核子多体系に発現する様々な現象を微視的にかつ統一的な枠組みで記述し,理解することである. 近年,有限核の構造だけでなく,原子核反応や核分裂のダイナミクス,および中性子星の性質などを統一的に記述できる強力な枠組みとして,(時間依存)密度汎関数法の応用が精力的に進められている. 本講義では,原子核物理学の基礎的な内容を俯瞰しつつ,平均場理論や密度汎関数法に基づく理論的枠組みについて解説する. そして,原子核や中性子星内部の量子多体ダイナミクスの研究の最近の話題を紹介する.