開催趣旨
古典的な対称性は量子論レベルでは破れ得る。この破綻は量子異常と呼ばれ、異常輸送現象などの興味深い物理現象に帰結し、素粒子・原子核・物性・宇宙といったエネルギースケールの垣根を超えた活発な研究対象になっている。量子異常の有名な例として、電磁場中におけるフェルミオンのカイラル量子異常がある。ゼロ質量極限におけるカイラル量子異常の性質はよく理解されているのに対し、有限質量効果は一般にきわめて非自明で十分な理解がない。例えば、電磁場が断熱的など、限られた領域でしかコントロールされた計算が実行できていないのが現状である。他方、近年の物性分野においては、電磁場などの外場が周期的に駆動する系(Floquet系)を取り扱う手法が急速に発展し、Floquet engineeringと呼ばれるアイデアに結実した。理論的には、Floquet系は、性質の良い非平衡定常状態であり、特に、Floquet-Magnus展開やvan Vleck展開と呼ばれる高周波数展開が計算手法として確立している。本研究会の目的は、Floquet系のような周期系における(カイラル)量子異常の性質を、素粒子・原子核・物性という分野横断的な視点から俯瞰し、新しい展開や研究の方向性を議論するものである。
なお、本研究会は、国内モレキュール型研究会「周期駆動系におけるカイラル量子異常」の一環として行うもので、基礎物理学研究所からサポートを受けています。
プログラム
13:00-14:00 (45+15) |
三角 達弘 氏 (近大) |
「S1コンパクト化とトフーフト量子異常」 |
14:00-15:00 (45+15) |
岡 隆史 氏 (ISSP) |
「ディラック電子系におけるフロッケ状態とカイラル量子異常」 |
15:00-15:20 |
Break |
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15:20-16:20 (45+15) |
佐藤 昌利 氏 (YITP) |
「Floquet系と非エルミート系のトポロジー」 |
16:20-17:20 (45+15) |
田屋 英俊 氏 (理研) |
「Floquet系でのカイラル量子異常と粒子生成」 |
17:20-18:00 |
Open discussion |
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世話人
島崎 拓哉 (東京大学)
田屋 英俊 (理化学研究所)
日高 義将 (高エネルギー加速器研究機構)
福嶋 健二 (東京大学)