所長からの挨拶

皆様

基礎物理学研究所は,2016年4月に所内に「重力物理学研究センター」を新たに設置しました。

基礎物理学研究所は,発足以来,理論物理学すべての分野をカバーする国内唯一の共同利用研,現在は共同利用・共同研究拠点として,我が国の物理学の発展に大きな貢献をしてきました。古くは,我が国の宇宙物理学や生物物理学の創成に中心的役割を果たしました。最近では21世紀の天文学にとって不可欠の要素となると予想される重力波物理学の創成に決定的に重要な役割を果たしました。その理論的研究における日本の核となるべく,一昨年度,所内に「重力波物理学研究センター」を設置し研究を進めてきましたが,このたび,その研究領域・内容をさらに充実させ,「重力」をキーワードに,より広範囲の理論物理学の発展に資する目的で,新たに「重力物理学研究センター」を設置しました。

最近,物理学において最も古くから知られている力である「重力」が,最も新しい21世紀を代表するテーマとして,再び脚光を浴びています。重力波物理学に代表されるように,宇宙で起こっている様々な現象を解明する鍵としての重力の重要性はもちろんのこと,重力の本質を理解することが,単に弦理論を始めとする量子重力理論の構成に不可欠であるというだけでなく,量子もつれなどの量子論の基本的諸課題で中心的な役割を果たす可能性があるという認識が高まってきています。こうした状況は,それほど遠くない未来に重力物理学がキーワードとなる新たなパラダイムが誕生することを予感させます。

「重力物理学研究センター」は,このような状況を踏まえ,重力物理学の2つの柱,すなわち弦理論や量子重力の研究を中心においた新たな基礎物理学の理論的枠組みの探求と重力波物理学・天文学を中心においた宇宙における重力現象の研究,を軸に21世紀の新たな重力物理学の創成を目的として発足しました。

本センターでは,上の目的のため,国内外の幅広い研究機関等と連携しつつ広範囲の理論物理学における国際共同研究を進め,重力物理学の国際交流拠点を構築することを目指しています。そのためのプログラムも順次整備していく予定です。

皆様へは本センターの諸事業への参加はもちろんのこと,本センターをはじめとする基礎物理学研究所の諸事業へのご助言やご支援もよろしくお願いいたします。

2017年4月 青木 愼也