京都大学未来創成学国際研究ユニットセミナー(第7回)
【京都大学生態学研究センター・第283回 生態研セミナーとして共催】
- 日時:2017年1月20日(金) 14:00~17:00
- 場所:京都大学生態学研究センター
- 講師1:村瀬雅俊 京都大学基礎物理学研究所 准教授
- 演題1:未知への挑戦 -未来創成学の展望-
- 講師2:大串隆之 京都大学生態学研究センター 教授
- 演題2:生態進化ダイナミクス:「故き」を温ね「新しき」を知る
概要1: 未知への挑戦 -未来創成学の展望-(村瀬雅俊 京都大学基礎物理学研究所 准教授)
グローバル化によって、人類は政治・経済・情報・産業・医療・教育など多様なシステムの集中化と脱集中化を繰り返し、世界総体はあたかも巨大生命システムと化した。その結果、あるシステムの最適化・効率化が別のシステムの脆弱化を招き、システム全体が崩壊に至るという”相殺ィードバック”に、私たちは翻弄され続けている。安定な時代には有効であった、一度に一つの方法、固定されたものの見方を適用するという伝統的な縦割り的アプローチは、もはや通用しない。今こそ、斬新な視点に基づく、新たなアプローチが望まれている。本セミナーでは、既存科学の限界に挑むべく、未来からの視点を駆使する「未来創成学」の展望を、具体例を示しながらご紹介したい。
概要2: 生態進化ダイナミクス:「故き」を温ね「新しき」を知る(大串隆之 京都大学生態学研究センター 教授)
自然界における生物の存在様式は、個体・個体群・群集・生態系という生物学的階層によって特徴づけられる。このため、種々の生態現象を理解するには、各階層での現象を個別に扱うのではなく、生物階層間をつなぐ相互作用に基づく必要がある。しかし、20世紀の生態学は各生物学的階層に分かれて発展してきたため、進化と生態プロセスを統合するという発想が欠如していた。ようやく21世紀に入って、「生態進化ダイナミクス(Eco-evolutionary Dynamics)」の考え方が台頭し始め、進化と生態を結ぶ研究領域を拓く機運が急速に盛り上がっている。ここで忘れてはならないのは、生態進化ダイナミクスは今世紀になって新たに生まれた視点ではないということだ。進化と生態を結ぶという考え方は、今を去る半世紀前、1960年から70年代にかけて大きく花開いた個体群動態研究に見ることができる。野外において適応形質が個体群動態に果たす役割についての先駆的な試みとして、(5万匹の個体識別マーキング調査に基づく)植食性テントウムシの実証研究を振り返り、生態進化ダイナミクスの観点から再考したい。