
研究テーマ
研究概要
素粒子の標準模型は, これまでの数多くの実験によって非常に高い精度で検証されてきた成功した理論です. 2012年のヒッグス粒子の発見により, その基本構造は完成を迎えました. 現在の素粒子物理学は, ヒッグス粒子の相互作用の精密測定などを通じて理論の細部を検証し, その背後にある「さらに根源的な法則」を探る段階に入っています. 一方で, 宇宙の観測事実である暗黒物質(ダークマター)の存在や, ニュートリノの微小な質量の起源など, 標準模型では決して説明できない謎が確実に存在しており, これらの解決が現代物理学の急務となっています. 私は, ヒッグス粒子の物理を軸として, これらの未解決問題に挑む理論モデル(標準模型を超える物理)の構築と, その実験的検証方法を探求しています.
キーワード ヒッグスボソン, 拡張ヒッグス模型, 対称性の自発的破れ, コライダー現象論, タウレプトン, 粒子数被保存, ニュートリノ質量, フレーバーの物理, 暗黒物質, アクシオン
キーワード ヒッグスボソン, 拡張ヒッグス模型, 対称性の自発的破れ, コライダー現象論, タウレプトン, 粒子数被保存, ニュートリノ質量, フレーバーの物理, 暗黒物質, アクシオン
研究の紹介
磁束を伴うT2n余剰次元における南部・ゴールドストーンモード
Phys. Rev. D110, 035032 (2024)
arXiv:2403.16801[hep-th]
余剰次元模型, 特に磁束を伴うトーラス(T2n)コンパクト化において, 磁束(フラックス)によって並進対称性やゲージ対称性が破れると生じる南部・ゴールドストーンモードの振る舞いを理論的に解明しました. カイラルフェルミオンの世代数を磁束のトポロジカル数で説明する枠組みにおいて, 低エネルギー有効作用を構築し, NGボソンの結合定数や質量スペクトルを導出しています.
Z-Z'混合によるゲージ化されたU(1)Lμ−Lτ模型への新たな制限 JHEP 12 (2024) 018 arXiv:2401.17613[hep-ph]
ミューオンの異常磁気能率(g-2)のズレやニュートリノ振動を説明できるU(1)Lμ−Lτゲージ模型に対して, 新たな視点から検証を行いました. 標準模型のZボソンと,新たなゲージ相互作用を媒介するZ′ボソンとの間の混合(Z-Z′混合)に着目して, フレーバー物理から得られる新たな制限を調べると, 最小の拡張模型は完全に排除できることがわかりました.
非可換ゲージ対称性からの擬南部・ゴールドストーンボソン暗黒物質 Phys. Rev. D106, 115033 (2022) arXiv:2210.08696[hep-ph]
従来のpNGB暗黒物質模型が主に可換なU(1)対称性の破れに基づいていたのに対し, 本研究では暗黒セクターに非可換ゲージ対称性を導入し, その自発的破れに由来するpNGB暗黒物質の枠組みを構築しました. SU(2)を用いる最大の利点は, 対称性が破れた後にカストディアル対称性と呼ばれる大域的な対称性が厳密に残存し, これによって暗黒物質の安定性が自然に保証される点にあります. この模型では暗黒物質が絶対安定になるため不自然に大きなエネルギースケールを持ち込む必要もありません。
μ−τフレーバーを持つ媒介粒子を伴うスカラー暗黒物質 Phys. Rev. D106, 035017 (2022) arXiv:2205.08998[hep-ph]
暗黒物質の現象とレプトンフレーバーの物理を関係させるため, ミューおよびタウフレーバーに特異的に結合する新しい媒介粒子を介したスカラー暗黒物質模型の解析を行いました. この枠組みは, 宇宙線観測における陽電子過剰などの異常や, ミュオンの異常磁気能率(g-2)の標準模型からのズレを同時に説明する可能性を秘めています. 媒介粒子の質量や結合定数に対する様々な実験からの制限を網羅的に評価しました.
PQ機構としてのバリオン数非保存 Phys. Rev. D104, 035026 (2021) arXiv:2104.14139[hep-ph]
量子色力学(QCD)における強いCP問題を解決するためのPQ対称性と, 標準模型における偶発的な対称性であるバリオン数対称性の間の関連性を探った理論的研究です. この枠組みでは, バリオン数対称性の破れに伴って現れる南部・ゴールドストーンボソンをアクシオンと同定します. その結果として, 核子崩壊や中性子・反中性子振動といった, 特徴的なバリオン数を破る物理過程が予言されます. また, アクシオン模型において新たなスカラー場にバリオン数やレプトン数を割り当てる一般的な手法を構築しました.
大統一理論から導かれる擬南部・ゴールドストーンボソン暗黒物質模型 Phys. Rev. D104, 035011 (2021) arXiv:2104.13523[hep-ph]
自然界の力を統一する「大統一理論」の枠組みから出発した暗黒物質模型です.大統一理論の自発的対称性の破れのパターンに動機づけられた, 実効的なpNGB暗黒物質模型の構築を行いました. 高エネルギースケールでの大きなゲージ群が破れる過程で, pNGBを保護する大域的対称性がどのように「偶然の対称性」として低エネルギーに現れるかを示しています.
一般化ヒッグス有効理論におけるスカラーとフェルミオンのオンシェル振幅 Phys. Rev. D104, 015001 (2021) arXiv:2102.08519[hep-ph]
ヒッグス粒子の結合定数のズレを系統的に記述する一般化されたヒッグス有効場の理論(HEFT)において, スカラー場およびフェルミオン場のオンシェル散乱振幅の定式化を行いました. 特に, スカラー場が構成する多様体の幾何学的な量(リーマン曲率など)を用いて, 物理的な散乱振幅を座標変換に対して不変な形で表現し, 標準模型有効場の理論(SMEFT)との違いを明確にしました.
ニュートリノ望遠鏡を用いたU(1)Lμ−Lτチャージを持つ暗黒物質の探索 JHEP 03 (2021) 047 arXiv:2011.03165[hep-ph]
U(1)Lμ−Lτゲージ対称性は素粒子の標準模型と矛盾なくゲージ化することができる対称性です。この群の大きなチャージを持つ粒子は, 他の素粒子との結合が許容されなくなるため暗黒物質の良い候補となります. 暗黒物質の現在における残存量を決定する対消滅の終状態はこの場合は主にニュートリノとなります. 本研究では, IceCubeなどの巨大ニュートリノ望遠鏡を用いて, 銀河中心や太陽中心からの高エネルギーニュートリノシグナルを観測することで, この模型をどの程度検証できるかを評価しました. 将来実験も含めた発見のポテンシャルを明らかにしました.
漸近安全な量子重力シナリオとフェルミオン暗黒物質 EPJC 80 (2020) 368 arXiv:2002.03666[hep-ph]
漸近的に安全な量子重力は, 非自明な固定点の周りの有限個の演算子で低エネルギーの現象を記述する理論でありゲージ階層性問題を解決する可能性があります. このような考え方に従うと, プランクスケールにおける古典的スケール不変性やヒッグスポテンシャルの平坦性が帰結されます. 標準模型を拡張して漸近的に安全な量子重力シナリオを最小の形で実現するには新たなゲージ相互作用と新たなフェルミオンが必要であるので, 暗黒物質として振る舞う新フェルミオンが新たなU(1)ゲージ理論に従うものとして模型を構築しました. このシナリオは古典的スケール不変性やヒッグスポテンシャルの平坦性により強く制限されているため, 一般に低エネルギーの観測可能量にとても強い予言が得られます. 提案した模型では暗黒物質と核子間の散乱断面積に対して非常に強い予言を与えるため、近い将来にXENON1Tでの検証が期待されます.
紫外完全な擬南部・ゴールドストーンボソン暗黒物質 JHEP 05 (2020) 057 arXiv:2001.03954[hep-ph]
ニュートリノの微小質量を説明するシーソー機構と密接に関連する, ゲージ化されたU(1)B−L対称性の自発的破れに着目し, そこから生じるpNGBを暗黒物質とする模型を提唱しました. U(1)B−L対称性を破るスカラーを2種類用意することで, ソフトに破られた偶発的対称性を実現し、その破れを通じて紫外完全な枠組みから擬南部・ゴールドストーンボソン(pNGB)暗黒物質を導いています。この模型では、シーソー機構と同じメカニズムを通じてpNGBが長寿命になるため暗黒物質として振る舞うことできます。また, pNGBの性質によりヒッグスポータルを通じた直接探索実験の制限を自然に回避することができます。
余剰次元模型, 特に磁束を伴うトーラス(T2n)コンパクト化において, 磁束(フラックス)によって並進対称性やゲージ対称性が破れると生じる南部・ゴールドストーンモードの振る舞いを理論的に解明しました. カイラルフェルミオンの世代数を磁束のトポロジカル数で説明する枠組みにおいて, 低エネルギー有効作用を構築し, NGボソンの結合定数や質量スペクトルを導出しています.
Z-Z'混合によるゲージ化されたU(1)Lμ−Lτ模型への新たな制限 JHEP 12 (2024) 018 arXiv:2401.17613[hep-ph]
ミューオンの異常磁気能率(g-2)のズレやニュートリノ振動を説明できるU(1)Lμ−Lτゲージ模型に対して, 新たな視点から検証を行いました. 標準模型のZボソンと,新たなゲージ相互作用を媒介するZ′ボソンとの間の混合(Z-Z′混合)に着目して, フレーバー物理から得られる新たな制限を調べると, 最小の拡張模型は完全に排除できることがわかりました.
非可換ゲージ対称性からの擬南部・ゴールドストーンボソン暗黒物質 Phys. Rev. D106, 115033 (2022) arXiv:2210.08696[hep-ph]
従来のpNGB暗黒物質模型が主に可換なU(1)対称性の破れに基づいていたのに対し, 本研究では暗黒セクターに非可換ゲージ対称性を導入し, その自発的破れに由来するpNGB暗黒物質の枠組みを構築しました. SU(2)を用いる最大の利点は, 対称性が破れた後にカストディアル対称性と呼ばれる大域的な対称性が厳密に残存し, これによって暗黒物質の安定性が自然に保証される点にあります. この模型では暗黒物質が絶対安定になるため不自然に大きなエネルギースケールを持ち込む必要もありません。
μ−τフレーバーを持つ媒介粒子を伴うスカラー暗黒物質 Phys. Rev. D106, 035017 (2022) arXiv:2205.08998[hep-ph]
暗黒物質の現象とレプトンフレーバーの物理を関係させるため, ミューおよびタウフレーバーに特異的に結合する新しい媒介粒子を介したスカラー暗黒物質模型の解析を行いました. この枠組みは, 宇宙線観測における陽電子過剰などの異常や, ミュオンの異常磁気能率(g-2)の標準模型からのズレを同時に説明する可能性を秘めています. 媒介粒子の質量や結合定数に対する様々な実験からの制限を網羅的に評価しました.
PQ機構としてのバリオン数非保存 Phys. Rev. D104, 035026 (2021) arXiv:2104.14139[hep-ph]
量子色力学(QCD)における強いCP問題を解決するためのPQ対称性と, 標準模型における偶発的な対称性であるバリオン数対称性の間の関連性を探った理論的研究です. この枠組みでは, バリオン数対称性の破れに伴って現れる南部・ゴールドストーンボソンをアクシオンと同定します. その結果として, 核子崩壊や中性子・反中性子振動といった, 特徴的なバリオン数を破る物理過程が予言されます. また, アクシオン模型において新たなスカラー場にバリオン数やレプトン数を割り当てる一般的な手法を構築しました.
大統一理論から導かれる擬南部・ゴールドストーンボソン暗黒物質模型 Phys. Rev. D104, 035011 (2021) arXiv:2104.13523[hep-ph]
自然界の力を統一する「大統一理論」の枠組みから出発した暗黒物質模型です.大統一理論の自発的対称性の破れのパターンに動機づけられた, 実効的なpNGB暗黒物質模型の構築を行いました. 高エネルギースケールでの大きなゲージ群が破れる過程で, pNGBを保護する大域的対称性がどのように「偶然の対称性」として低エネルギーに現れるかを示しています.
一般化ヒッグス有効理論におけるスカラーとフェルミオンのオンシェル振幅 Phys. Rev. D104, 015001 (2021) arXiv:2102.08519[hep-ph]
ヒッグス粒子の結合定数のズレを系統的に記述する一般化されたヒッグス有効場の理論(HEFT)において, スカラー場およびフェルミオン場のオンシェル散乱振幅の定式化を行いました. 特に, スカラー場が構成する多様体の幾何学的な量(リーマン曲率など)を用いて, 物理的な散乱振幅を座標変換に対して不変な形で表現し, 標準模型有効場の理論(SMEFT)との違いを明確にしました.
ニュートリノ望遠鏡を用いたU(1)Lμ−Lτチャージを持つ暗黒物質の探索 JHEP 03 (2021) 047 arXiv:2011.03165[hep-ph]
U(1)Lμ−Lτゲージ対称性は素粒子の標準模型と矛盾なくゲージ化することができる対称性です。この群の大きなチャージを持つ粒子は, 他の素粒子との結合が許容されなくなるため暗黒物質の良い候補となります. 暗黒物質の現在における残存量を決定する対消滅の終状態はこの場合は主にニュートリノとなります. 本研究では, IceCubeなどの巨大ニュートリノ望遠鏡を用いて, 銀河中心や太陽中心からの高エネルギーニュートリノシグナルを観測することで, この模型をどの程度検証できるかを評価しました. 将来実験も含めた発見のポテンシャルを明らかにしました.
漸近安全な量子重力シナリオとフェルミオン暗黒物質 EPJC 80 (2020) 368 arXiv:2002.03666[hep-ph]
漸近的に安全な量子重力は, 非自明な固定点の周りの有限個の演算子で低エネルギーの現象を記述する理論でありゲージ階層性問題を解決する可能性があります. このような考え方に従うと, プランクスケールにおける古典的スケール不変性やヒッグスポテンシャルの平坦性が帰結されます. 標準模型を拡張して漸近的に安全な量子重力シナリオを最小の形で実現するには新たなゲージ相互作用と新たなフェルミオンが必要であるので, 暗黒物質として振る舞う新フェルミオンが新たなU(1)ゲージ理論に従うものとして模型を構築しました. このシナリオは古典的スケール不変性やヒッグスポテンシャルの平坦性により強く制限されているため, 一般に低エネルギーの観測可能量にとても強い予言が得られます. 提案した模型では暗黒物質と核子間の散乱断面積に対して非常に強い予言を与えるため、近い将来にXENON1Tでの検証が期待されます.
紫外完全な擬南部・ゴールドストーンボソン暗黒物質 JHEP 05 (2020) 057 arXiv:2001.03954[hep-ph]
ニュートリノの微小質量を説明するシーソー機構と密接に関連する, ゲージ化されたU(1)B−L対称性の自発的破れに着目し, そこから生じるpNGBを暗黒物質とする模型を提唱しました. U(1)B−L対称性を破るスカラーを2種類用意することで, ソフトに破られた偶発的対称性を実現し、その破れを通じて紫外完全な枠組みから擬南部・ゴールドストーンボソン(pNGB)暗黒物質を導いています。この模型では、シーソー機構と同じメカニズムを通じてpNGBが長寿命になるため暗黒物質として振る舞うことできます。また, pNGBの性質によりヒッグスポータルを通じた直接探索実験の制限を自然に回避することができます。
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一般化ヒッグス有効理論の対称性と幾何学
Phys. Rev. D100, 075020 (2019)
arXiv:1904.07618[hep-ph]
ヒッグス粒子の精密検証が次世代の基本理論構築の鍵となると考えられています. 一方で, 現在広く用いられている標準模型有効理論やヒッグス有効理論は新粒子の効果を間接的にしか評価できません. そこで, 任意のスカラー場を追加した一般化ヒッグス有効理論を構築しました. このような枠組みを使えば, 標準模型からのズレを新粒子の持つべき性質に還元していくことができます. さらに, 一般化ヒッグス有効理論では幾何学の言葉を使って現象を記述することで, スカラー場の選び方に依らない予言をすることが可能です. このとき, スカラー場の散乱振幅は共変性からも期待されるようにスカラー多様体から構成された曲率テンソルに比例し, 確率の保存を仮定すると多様体が平坦であることが分かりました.
強いCP問題ととニュートリノ質量起源 Phys. Rev. D96, 075039 (2017) arXiv:1708.03076[hep-ph]
CPの破れは我々の世界の物質・反物質非対称宇宙を説明するためには必須です. 一方で, 素粒子の強い相互作用においては, むしろ破れているのが自然とも思われるCP対称性はとても良く成り立っています. これを強いCP問題と言います. 強いCP問題は, PQ機構という解決策が知られていますが, この理論では非常に大きなエネルギースケールの導入が必要とされます. 本研究では, ニュートリノの微小質量を説明するシーソー機構で導入される大きなエネルギーとPQ機構に現れるエネルギースケールを統一的に理解することを試みました. これらの元々は異なる動機から示唆されるエネルギースケールは近く, その統一は興味深い可能性です.
"強く"相互作用する暗黒物質(SIMP)とニュートリノ質量起源 JHEP 07 (2017) 101 arXiv:1705.00592[hep-ph]
宇宙史の中で熱的に生成される暗黒物質の有望な候補として"弱く"相互作用する暗黒物質(WIMP)がありますが, 地下実験等における直接探索で強く制限されてきています. 一方, 最近になって指摘された熱的な暗黒物質の候補が"強く"相互作用する暗黒物質(SIMP)です. このようなシナリオでは, 隠れたセクターで比較的軽い暗黒物質同士が"強く"相互作用し, 我々の世界の素粒子(標準模型粒子)とはとても弱く相互作用します. 本研究では, このとても弱い相互作用を通じてニュートリノ質量の起源を説明する模型を構築しました.
光学結晶を使った多光子背景事象抑制 Prog. Theor. Exp. Phys. (2017) 043B03 arXiv:1612.02423[physics.optics]
原子(分子)は光子を放出してエネルギー遷移するが, 素粒子の弱い相互作用を考慮すればニュートリノ対の放出も起こります. この過程はマクロコヒーラント機構で増幅できますが, 同時に背景事象となる多光子を放出する過程も増幅されます. したがって, 多光子背景事象の抑制がニュートリノ質量分光の実現の鍵となります. 本研究では, 実験環境を誘電体多層膜(光学結晶)で囲み光子に"質量"を与えることで背景事象を抑制する方法を提案しました. ニュートリノは電磁相互作用しないので, このような環境効果を受けないため, 光子だけを"重く"してその放出を運動学的に禁止できます.
スカラー多重項とランダウポール [ 第11回素粒子メダル奨励賞:濱田雄太氏, 川名清晴氏(京都大学)との共同受賞. ]
Phys. Lett. B747 (2015) 238 arXiv:1505.01721[hep-ph]
標準模型を超える物理を考えると, ほとんどの場合に新しいスカラー粒子が導入されます. 例えば, 暗黒物質を説明する簡単な枠組みとして, 弱い相互作用をする多重項を一つだけ加えるものがあります. 本研究では, そのような模型におけるランダウポール(結合定数がエネルギーに依存して発散する振る舞い)を評価しました. スカラー多重項を追加して4点結合のエネルギー依存性を調べると紫外切断が非常に低くなることが分かりました. 低い紫外切断は高次演算子が無視できないことを意味し, 広範な模型の有効なパラメタ領域に制限を与えられます.
ユニタリ性と輻射補正の有限性 Phys. Rev. D91, 034030 (2015) arXiv:1409.1709[hep-ph]
ヒッグス結合が標準模型の予言からズレると, 高エネルギー領域で弱ボソンの散乱がユニタリ性を破ることが知られています. 逆にユニタリ性を要求すると付加的なヒッグスボソンまで含めたヒッグス結合の間に和則が得られます. 本研究では, この和則と実験で決定されるヒッグス結合を組み合わせることで得られる付加的なヒッグスボソンへの制限をまとめました. また, 中性ヒッグスボソンのみの系では, 電弱精密測定を特徴付けるパラメータの輻射補正の有限性と弱ボソン散乱のユニタリ性の間に強い関係が示され, 電弱精密測定の結果も付加的なヒッグスボソンへの制限として利用できることが分かりました.
拡張ヒッグス模型の指紋照合 Phys. Rev. D90, 075001 (2014) arXiv:1406.3294[hep-ph]
発見されたヒッグスボソンは標準模型の予言する性質と”近い”性質を持っていることが分かってきました. 一方で, 標準模型を超える新物理学模型ではしばしばヒッグスボソンの仲間が予言されます. その仲間の存在と存在するのであればどのような性質を持っているかどうかを, 発見されたヒッグスボソンの相互作用の強さの標準模型の予言からのズレによって捉える方法を研究しました. 第2のヒッグスボソンのLHC実験による直接検証についても検討しました.
7表現ヒッグス模型 Phys. Rev. D87, 053004 (2013) arXiv:1301.6455[hep-ph]
素粒子標準模型のヒッグスボソンはSU(2)の2表現に属します. この表現に属すことは電弱相互作用の精密測定から強く信じられていますが, この制限を満たせる次に小さい表現が7表現です. このようなヒッグス場は以前より指摘されていましたが, すぐに問題が起こる(質量ゼロの粒子が生じる)ことが知られてきました. この問題の解決方法を示し, さらに暗黒物質候補を含む模型へと拡張しました. LHC実験により標準模型的なヒッグスボソンとどう見分けをつけていくかについても検討しました.
LHC実験におけるレプトン数の破れ Phys. Lett. B718 (2013) 1436 arXiv:1210.5622[hep-ph]
レプトン数を破る過程はこれまで見つかっていませんが, その可能性が指摘されています. 通常の探索は低エネルギーで物質をマクロな量だけ用意することで反応数を稼ぎます. コライダー実験では十分な量を用意することが出来ませんが, そこを解決するトリックとして粒子がマクロな時間で崩壊することに注目しました. LHC実験における色電荷を持つ粒子の生成崩壊過程からレプトン数を破る過程が観測される可能性を示しました. さらに, ニュートリノの極小質量を輻射補正により説明する模型に埋め込みました.
電荷2ヒッグスのLHC実験による分類 [ 第8回素粒子メダル奨励賞:杉山弘晃氏(京産大益川塾), 横谷洋氏(富山大学)との共同受賞. ]
Phys. Lett. B717 (2012) 229 arXiv:1207.0179[hep-ph]
ニュートリノ質量を説明する模型に"電荷2"のヒッグス粒子がしばしば登場します. これらの粒子の性質を実験的に区別することはその質量生成メカニズムの解明に繋がります. 電荷2ヒッグスは"右巻き"もしくは"左巻き"のレプトン対としか相互作用しません. 一方, 加速されたタウレプトンはその崩壊分布を見ることで, "右巻き"か"左巻き"が分かる特異な粒子として知られます. したがって, 電荷2ヒッグスがタウレプトンを通じた崩壊をする際に, その崩壊物のエネルギー分布を調べると, 親の電荷2ヒッグスの性質が見分けられます.
ヒッグス粒子の精密検証が次世代の基本理論構築の鍵となると考えられています. 一方で, 現在広く用いられている標準模型有効理論やヒッグス有効理論は新粒子の効果を間接的にしか評価できません. そこで, 任意のスカラー場を追加した一般化ヒッグス有効理論を構築しました. このような枠組みを使えば, 標準模型からのズレを新粒子の持つべき性質に還元していくことができます. さらに, 一般化ヒッグス有効理論では幾何学の言葉を使って現象を記述することで, スカラー場の選び方に依らない予言をすることが可能です. このとき, スカラー場の散乱振幅は共変性からも期待されるようにスカラー多様体から構成された曲率テンソルに比例し, 確率の保存を仮定すると多様体が平坦であることが分かりました.
強いCP問題ととニュートリノ質量起源 Phys. Rev. D96, 075039 (2017) arXiv:1708.03076[hep-ph]
CPの破れは我々の世界の物質・反物質非対称宇宙を説明するためには必須です. 一方で, 素粒子の強い相互作用においては, むしろ破れているのが自然とも思われるCP対称性はとても良く成り立っています. これを強いCP問題と言います. 強いCP問題は, PQ機構という解決策が知られていますが, この理論では非常に大きなエネルギースケールの導入が必要とされます. 本研究では, ニュートリノの微小質量を説明するシーソー機構で導入される大きなエネルギーとPQ機構に現れるエネルギースケールを統一的に理解することを試みました. これらの元々は異なる動機から示唆されるエネルギースケールは近く, その統一は興味深い可能性です.
"強く"相互作用する暗黒物質(SIMP)とニュートリノ質量起源 JHEP 07 (2017) 101 arXiv:1705.00592[hep-ph]
宇宙史の中で熱的に生成される暗黒物質の有望な候補として"弱く"相互作用する暗黒物質(WIMP)がありますが, 地下実験等における直接探索で強く制限されてきています. 一方, 最近になって指摘された熱的な暗黒物質の候補が"強く"相互作用する暗黒物質(SIMP)です. このようなシナリオでは, 隠れたセクターで比較的軽い暗黒物質同士が"強く"相互作用し, 我々の世界の素粒子(標準模型粒子)とはとても弱く相互作用します. 本研究では, このとても弱い相互作用を通じてニュートリノ質量の起源を説明する模型を構築しました.
光学結晶を使った多光子背景事象抑制 Prog. Theor. Exp. Phys. (2017) 043B03 arXiv:1612.02423[physics.optics]
原子(分子)は光子を放出してエネルギー遷移するが, 素粒子の弱い相互作用を考慮すればニュートリノ対の放出も起こります. この過程はマクロコヒーラント機構で増幅できますが, 同時に背景事象となる多光子を放出する過程も増幅されます. したがって, 多光子背景事象の抑制がニュートリノ質量分光の実現の鍵となります. 本研究では, 実験環境を誘電体多層膜(光学結晶)で囲み光子に"質量"を与えることで背景事象を抑制する方法を提案しました. ニュートリノは電磁相互作用しないので, このような環境効果を受けないため, 光子だけを"重く"してその放出を運動学的に禁止できます.
スカラー多重項とランダウポール [ 第11回素粒子メダル奨励賞:濱田雄太氏, 川名清晴氏(京都大学)との共同受賞. ]
Phys. Lett. B747 (2015) 238 arXiv:1505.01721[hep-ph]
標準模型を超える物理を考えると, ほとんどの場合に新しいスカラー粒子が導入されます. 例えば, 暗黒物質を説明する簡単な枠組みとして, 弱い相互作用をする多重項を一つだけ加えるものがあります. 本研究では, そのような模型におけるランダウポール(結合定数がエネルギーに依存して発散する振る舞い)を評価しました. スカラー多重項を追加して4点結合のエネルギー依存性を調べると紫外切断が非常に低くなることが分かりました. 低い紫外切断は高次演算子が無視できないことを意味し, 広範な模型の有効なパラメタ領域に制限を与えられます.
ユニタリ性と輻射補正の有限性 Phys. Rev. D91, 034030 (2015) arXiv:1409.1709[hep-ph]
ヒッグス結合が標準模型の予言からズレると, 高エネルギー領域で弱ボソンの散乱がユニタリ性を破ることが知られています. 逆にユニタリ性を要求すると付加的なヒッグスボソンまで含めたヒッグス結合の間に和則が得られます. 本研究では, この和則と実験で決定されるヒッグス結合を組み合わせることで得られる付加的なヒッグスボソンへの制限をまとめました. また, 中性ヒッグスボソンのみの系では, 電弱精密測定を特徴付けるパラメータの輻射補正の有限性と弱ボソン散乱のユニタリ性の間に強い関係が示され, 電弱精密測定の結果も付加的なヒッグスボソンへの制限として利用できることが分かりました.
拡張ヒッグス模型の指紋照合 Phys. Rev. D90, 075001 (2014) arXiv:1406.3294[hep-ph]
発見されたヒッグスボソンは標準模型の予言する性質と”近い”性質を持っていることが分かってきました. 一方で, 標準模型を超える新物理学模型ではしばしばヒッグスボソンの仲間が予言されます. その仲間の存在と存在するのであればどのような性質を持っているかどうかを, 発見されたヒッグスボソンの相互作用の強さの標準模型の予言からのズレによって捉える方法を研究しました. 第2のヒッグスボソンのLHC実験による直接検証についても検討しました.
7表現ヒッグス模型 Phys. Rev. D87, 053004 (2013) arXiv:1301.6455[hep-ph]
素粒子標準模型のヒッグスボソンはSU(2)の2表現に属します. この表現に属すことは電弱相互作用の精密測定から強く信じられていますが, この制限を満たせる次に小さい表現が7表現です. このようなヒッグス場は以前より指摘されていましたが, すぐに問題が起こる(質量ゼロの粒子が生じる)ことが知られてきました. この問題の解決方法を示し, さらに暗黒物質候補を含む模型へと拡張しました. LHC実験により標準模型的なヒッグスボソンとどう見分けをつけていくかについても検討しました.
LHC実験におけるレプトン数の破れ Phys. Lett. B718 (2013) 1436 arXiv:1210.5622[hep-ph]
レプトン数を破る過程はこれまで見つかっていませんが, その可能性が指摘されています. 通常の探索は低エネルギーで物質をマクロな量だけ用意することで反応数を稼ぎます. コライダー実験では十分な量を用意することが出来ませんが, そこを解決するトリックとして粒子がマクロな時間で崩壊することに注目しました. LHC実験における色電荷を持つ粒子の生成崩壊過程からレプトン数を破る過程が観測される可能性を示しました. さらに, ニュートリノの極小質量を輻射補正により説明する模型に埋め込みました.
電荷2ヒッグスのLHC実験による分類 [ 第8回素粒子メダル奨励賞:杉山弘晃氏(京産大益川塾), 横谷洋氏(富山大学)との共同受賞. ]
Phys. Lett. B717 (2012) 229 arXiv:1207.0179[hep-ph]
ニュートリノ質量を説明する模型に"電荷2"のヒッグス粒子がしばしば登場します. これらの粒子の性質を実験的に区別することはその質量生成メカニズムの解明に繋がります. 電荷2ヒッグスは"右巻き"もしくは"左巻き"のレプトン対としか相互作用しません. 一方, 加速されたタウレプトンはその崩壊分布を見ることで, "右巻き"か"左巻き"が分かる特異な粒子として知られます. したがって, 電荷2ヒッグスがタウレプトンを通じた崩壊をする際に, その崩壊物のエネルギー分布を調べると, 親の電荷2ヒッグスの性質が見分けられます.