原子核三者若手 夏の学校2023

時間割

schedule_N_ver5.webp

ポスターセッション

発表者とアブストラクト一覧(素粒子パートも含む) [最新版:"poster_abst_v6.pdf"]

研究会

発表者とアブストラクト一覧 [最新版:"oral_abs_nuclear_v3.pdf"]

講義情報

三者共通講義

「マルチバース宇宙論」

野村 泰紀 氏 (カリフォルニア大学バークレー校 教授(バークレー理論物理学センター長)、ローレンス・バークレー国立研究所 上席研究員、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 客員上級科学研究員)

宇宙の加速膨張をつかさどるダークエネルギーの存在や性質を理解するための筆頭候補として考えられるマルチバース宇宙論。本講義では、このマルチバース宇宙論を考える動機から始まり、その描像が超弦理論や永久インフレーションといった現代の物理学理論の自然な帰結として得られることを解説する。また我々の宇宙の曲率などを通した観測的探索との関係、ブラックホールの物理などから示唆される量子重力の奇妙な性質がこのような大域的な時空の描像に持たらし得る意味などについても議論する。

原子核構造

「少数粒子模型で見る直接反応のダイナミクス」

渡邉 慎 氏 (岐阜工業高等専門学校 講師)

「原子核物理の何が面白いの?」という問いに、あなたなら何と答えるだろうか?理論の精密化や計算の大規模化の流れがある中、敢えて誤解を恐れずに言うなら、私は「本質をえぐり出す近似」と答えるだろう。本講義では、核子多体系の直接反応を理解するための少数粒子模型を紹介する。先人たちが歩んできた道(光学模型、歪曲波ボルン近似、連続状態離散化チャネル結合法)を概観しつつ、それらの模型が、どの部分を切り捨て、どの部分を本質的に見ようとしていたかを皆さんと共有したい。さらに、これらの模型を原子核の束縛限界(中性子ドリップライン)に適用した最新の研究を紹介し、弱束縛核反応のダイナミクスに迫っていく。

ハドロン理論

「非摂動的な場の理論のダイナミクスと一般化された対称性」

谷崎 佑弥 氏 (基礎物理学研究所 助教)

場の量子論(QFT) は量子多体系における低エネルギー領域の振る舞いを記述する普遍的な枠組みであるが,その一方で摂動論を超えた強結合領域の解析を必要とすることがしばしばある.標準模型における量子色力学(QCD) はその典型的な例であり,クォークの閉じ込めやカイラル対称性の破れといった豊かな性質がその強結合性のために現れる.このような非摂動的な現象に対して,QFTの解析的な計算から厳密な主張を与えることができるだろうか?対称性に基づいた考察は,このような問題に対して答えることのできる貴重なアプローチの一つである.とくに近年になり,QFT における対称性の概念は非常に一般化され,様々なQFT の新しい側面が明らかにされてきている.本講演では,トポロジカル演算子による一般化された対称性の定式化とその非摂動的なダイナミクスへの応用を議論する.

実験

「原子核表面のアルファ粒子に見る古くて新しい原子核像」

田中 純貴 氏(理化学研究所仁科加速器科学研究センター 特別研究員)

風船を浮かせるヘリウムガスはどのように生成されたのでしょうか?その多くは天然ガスに含まれるもので、地中深くの放射性重元素、ウランやトリウムのアルファ壊変や核分裂で放出したアルファ粒子に由来すると言われています。アルファ粒子は100 年以上前に発見されたにもかかわらず、原子核の中で「どこに」「どれくらい」「どのように」形成されたのかは未だ謎が多く、理論模型を用いた計算などでは、正確にアルファ粒子の数を予想することは難しいようです。そこで、我々の実験グループはアルファ崩壊核からアルファ粒子が放出される前に、原子核内部からアルファ粒子を叩き出す実験計画を進めています。これに先立ち行った、スズ安定同位体からのアルファノックアウト反応の実験結果からは、古くアルファ崩壊から予想された表面アルファ粒子と結びつく、原子核の新たな姿が見えてきました。講義では、アルファ崩壊の不思議とそれを解き明かす実験計画、さらに最近の実験で新たに見えてきた原子核像を示したいと思います。