発表者とアブストラクト一覧(素粒子パートも含む)
標準理論が確立して久しいが、人類は素粒子や宇宙を理解した気にはなっていない。そもそもなぜ標準理論を超える必要があるのか、今何を調べるのが正解なのか。古い話と最近の話題についてお話したい。
原子核は様々な粒子と相互作用する。中性子はもちろん、光やニュートリノともする。入射粒子と相互作用した原子核は、粒子の運んできた外場に応じた振動をする。ただし、どんな外場にも同じ確率で応答するわけではない。原子核は多体系として存在するため、外場の種類やエネルギーによって応答の仕方は大きく変わってくる。原子核の応答を理解するためには、開放系と結びついた殻構造に基づく理論モデルが有効である。本講義では、初歩的な原子核応答の理論を学び、様々な粒子との反応率計算を通して原子核の性質を俯瞰する。
QCDの基本自由度であるクォークやグルーオンは通常ハドロン内部に閉じ込められているが、原子核を圧縮していくと、まず核物質を形成し、さらに核子が重なう合う程度の密度でクォーク物質が形成されると考えられている。ハドロン物質がクォーク物質に転移する領域は強相関系であり、有効的自
由度がはっきりしないため理論的記述が大変難しい。一方、この転移領域『カイラル対称性の回復』、『非閉じ込め』、『カラー超伝導』『quarkyonic物質』などの概念が絡み合う大変魅力的な系となっている。これらの理論的示唆を検証できる低温・高密度の実験室系は残念ながら地上では実現し得ないが、宇宙まで視野を広げれば、中性子星という天然の実験室系が存在し、その観測が高密度QCD物質の物性に多くの示唆を与えてくれる。この講演では、近年の中性子星観測の進展をまとめた後、装いを新たにしつつある高密度QCD物性の核心に迫る。
ラムダ粒子に代表されるストレンジクォークを含んだバリオン(ハイペロン)は、陽子や中性子と同様に、核子として原子核を構成できます。ハイパー核と呼ばれるこの特異な原子核の構造や、内部で働く相互作用を研究することで、原子核深部構造の解明や、核力のバリオン間力への拡張などが可能となります。これらの知見が得られることで、例えば中性子星の内部構造解明などにつながることが期待されます。近年、ストレンジネス核物理は、散乱実験や高分解能分光実験の成功により新たな展開を迎えています。本講義では、ストレンジネス核物理の意義や最近の成果と現在計画中の実験を例に挙げながら、今後の展開について紹介します。また、ストレンジネス核物理を展開している加速器施設における他の研究についても触れます。