某高校の先生から「高校生向けに良い本を教えて欲しい」と言われたので、個人的にオススメする高校生向けの本を挙げてみます。「学びコーディネーター」用のスライドでも同じような本を挙げているので参照してみてください(スライドはこれ(素粒子)とこれ(弦理論))。飽くまで僕の趣味で選んだだけなので、他にも良い本は沢山あると思います。
偉い物理屋が読書案内を書いているページも存在するので、僕のような学生が書いているページよりもそちらの方が有用かも知れないです。
このリストは、良い本を見つけた時に適宜追加していこうと思っています。
有名な科学雑誌。定期的に素粒子や弦理論を特集している他、「別冊」という枠で各話題について纏めてある物もある。最近は「ニュートン式 超図解 最強に面白い!! ○○」というシリーズが出ていて、「別冊」シリーズよりも分かりやすく書いてあり、比較的詳しい内容もあったりするので入門に良いと思う。
ニュートンは全体的に小学生でもなんとなく読めそうなレベルで書いてあるので、高校生には少し物足りないかも知れない。
こちらも比較的書店に置いてあることが多い科学雑誌。「ニュートン」が子供向けな感じがするのに対して、こちらは少し大人向けな感じがするが、書いてある内容は易しいので中学生~高校生でも読める。ニュートンに比べて、特集記事は「研究者にインタビューしました」というような形式が多いイメージがあるので、「研究」という雰囲気を味わうには良いかも知れない。素粒子関係の話題もたまに特集されている。
こちらは主に院生~専門家向けの科学雑誌。タイトルは「数理科学」だが、内容は大体交互に物理の特集と数学の特集が組まれる感じになっているので物理に興味がある人にもオススメ。記事は研究者が主に院生程度が読めるようなレベルを想定して書いているので、高校生や一般の人が読むには少し難しいかも知れない。学部生ならば頑張れば読める、程度だろうか。しかし、最先端の内容を研究者自らが書いた解説記事を通して学べるので、研究に触れるという面白さはあると思う。
物理専門の科学雑誌だったが、惜しいことに2019年に廃刊になってしまった。物理の広い範囲の分野を対象に、研究者による解説記事が書かれており、最先端の物理に触れるには良い雑誌だったと思う。実験系の記事も多かったので、数理科学に比べると高校生でも読みやすかった印象がある。
この「パリティ」は廃刊になってしまったが、最近は物理学会誌の解説記事が比較的分かりやすく書いてあるように思えるので、「パリティ」の代わりの役割を担えるのかも知れないと思っている。学会誌は学会員には毎月届くので身近な存在なのだが、書店には置かれないので高校生からはアクセスしにくくなった気はする。
素粒子に関する新書は多く出ており、僕が読んだ本も多いが、ここでは特にお勧めしたい本だけを挙げる。
有名な新書のシリーズ。科学の幅広い分野を扱っており、中学生~高校生でも読めるようなレベルでそれなりに詳しく書いてあるので入門には良い。
「ブルーバックス」シリーズの中でも特にお勧めしたいのがこの本。2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部さんが自ら素粒子について解説した本。
素粒子物理の発展の歴史と、素粒子分野で使われる多くの概念を数式を使わずに分かりやすく纏めてある。僕はこの本を読んだ当時は中学生だったが、数式が使われていないため中学生でも読むことが出来た。内容はかなり詳しいところまで書いてあり、これを読めば素粒子分野の研究内容や、素粒子標準模型の「気持ち」は大体分かると思う。
最近ブルーバックスから出版された、南部さんの伝記。物理の内容の説明はあまり詳しくなかったが、伝記として読む分には面白かった。この本をきっかけに興味を持ち、素粒子や南部さんの研究内容について更に詳しく知りたい人には、上記の南部さんの著書「クォーク」をお勧めしたい。
こういう伝記は「研究者になるとどのような人生を送るのか」という意味で、研究者を志望する高校生などには参考になるかも知れない。
以前高校で講演をした時、「高次元を想像できない」という感想を多く聞いた。この本では「高次元空間のイメージの仕方」を書いてくれているので、参考になるかも知れない。
南極で行われているニュートリノ観測実験「IceCube」に参加している著者による、超高エネルギーニュートリノの検出に至るまでの経緯を書いた本。この本は光文社新書から出ている。IceCube実験による超高エネルギーニュートリノの検出は数年前に大きなニュースになったが、このプロジェクトを主導していたのが著者の吉田さんである。僕が大学院に入ってから読んだ本の中では一番面白かったかも知れない。
大学物理の教科書だが、頑張れば高校生でも読める程度に易しく書いてあるシリーズ。高校生が少し進んだ内容を勉強したいと思った時には良いと思う。基本的なことから丁寧に書いてくれているが、詳しいことは余り書いていない場合があるので大学生向けとしては物足りないかも知れない。
物理学の最先端の話題について研究者が解説をしているシリーズ。主に学部生程度のレベルの読者を想定して書かれているため高校生にとっては少し難しいと思うが、物理を専攻している人であれば専門外の内容であっても比較的読みやすい。
素粒子分野の入門としては、上記の「クォーク 第2版 (南部さん著)」がお勧め。
一見ふざけたタイトルだが、著者は現役の素粒子論屋で、現京大教授の橋本さん。
内容もふざけているように見えるが、実は結構真面目なことを書いている。話の本筋を読むと高校生向けの弦理論の入門になっているが、本筋以外にも色々な小話が書いてあって、それらを通して素粒子論屋の雰囲気が伝わるのではないかと思う。内容も結構充実しており、他の本には余り書かれていないような細かい点まで書いてある。
高校生が読んだ時に面白さが伝わるのかは分からないが、少なくとも業界内の人には「小ネタ」が一通り通じるので面白いと思う。
上記の弦理論の本の続きで、素粒子標準模型について書いた本。この世界の物理法則は実は1つの式で書けてしまう、という話が書いてある。
計算を行う上で最低限必要な情報は、各ツールのwebページなどに書いてある場合がある。例えば、qiskitのページやqulacsのページなどを参照。
学部生向けの量子力学の教科書。物理学科では通常2年~3年生で量子力学を勉強するので、その授業で使えるような内容。``伝統的な"量子力学の教科書とは違い、スピン系を例に取り有限サイズのヒルベルト空間での定式化を先に行い、水素原子等は後から扱っている。量子計算の勉強に使うには便利かも知れない。
素粒子に関する漫画が掲載されているwebページ。漫画で素粒子に入門できる。 素粒子実験出身の人が書いているので、素粒子の解説だけでなく現在行われている素粒子実験の解説も豊富。
本を挙げてみましたが、どういう書店に行けばこれらの本が置いてあるのかを書いておこうと思います。今はアマゾンなどでも容易に買えますが、やはり立ち読みして内容に軽く目を通してから買うというのは重要だと思っています。
「ニュートン」等は地方の中規模書店にも置いてあることが多い。「別冊」等は図書館でも蔵書が充実しているところもあるので、図書館で探してみるのも良いと思う。
一方で、「数理科学」等の専門雑誌が置いてある書店は少ない。基本的に大型書店に行かないと置いていないと思って良い。専門書が多く置いてある書店には置いてある、という感じだろう。専門書については後述。
専門書が置いていないような中型書店でも、新書の品揃えは比較的充実しているところが多い。特に大型書店がないような地方都市では新書は専門的な内容に触れるための重要な手段だと思う。例えば、(ショッピングモールに入っているような)中型書店の場合、専門書は殆ど置いていないが、ブルーバックス等の新書と「ニュートン」「日経サイエンス」の雑誌は置いてあることが多い。
専門書は基本的には丸善やジュンク堂、紀伊国屋書店等の、都市部にある大型書店で入手することになる。
地方には郊外型の比較的大きな書店が存在するが、そのような郊外型の書店では専門書の品揃えは余り良いイメージがない。
近くに大型書店がない場合でも、(理学部のある大学の)大学生協の書店に行けば置いてある可能性がある。特に洋書は大型書店よりも大学生協の方が品揃えが良い場合がある。