原子核三者若手 夏の学校2017

時間割

schedule_N.jpg

研究会

発表者とアブストラクト一覧

講義情報

三者共通講義

「母なるダークマター:観測、理論、実験」

村山 斉 氏(カリフォルニア大学バークレイ物理学教室・マックアダムス教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構・機構長)

ダークマター(暗黒物質)は宇宙の物質の8割以上を占めるが、未だに正体はわかっていない。一方、ダークマターがないと星や銀河、そして我々は生まれなかったこともわかっていて、我々の「生き別れの母」である。 これまでの観測でわかったダークマターの証拠、様々な理論的候補、今後の実験・観測での検証の可能性についてまとめる。

講義1

「模型空間における3体反応の理論」

緒方 一介 氏(大阪大学核物理研究センター・准教授)

現在、理研RIBFをはじめとする世界各地の実験施設で、弱く束縛した原子核の分解反応が盛んに測定されている。 そのような反応は、少なくとも3つの粒子が関与する反応として記述しなければならない。 この事情は、エキゾチックハドロンの分解(崩壊)現象にも多く当てはまるであろう。 3体の散乱問題に関しては、Lippmann-Schwinger方程式の解が一意ではないという難点が広く知られており、これを回避するには、Faddeevによって考案された3体反応の厳密解法が必須であるとされる。 しかし、Faddeev理論を用いた数値計算が一般に困難である状況に鑑みると、理論的正当性を保ちつつ、より簡便に3体の反応を取り扱える手法は、原子核・ハドロン物理にとって極めて有用であると考えられる。 この講義では、まずFaddeevの理論を簡単に紹介し、これに適切な模型空間を設定することで、連続状態離散化チャネル結合法(CDCC)の方程式を導出する。これにより、CDCCがFaddeev理論の代替理論であることを示す。 その過程で、CDCCにとって最も本質的な近似が、連続状態の離散化ではないことが理解されるであろう。 その後、CDCCにある種の近似を施すことにより、核子ノックアウト反応の標準的計算手法として知られる歪曲波インパルス近似(DWIA)の式を導出する。講義の後半では、CDCCやDWIAを用いた最新の核反応研究をいくつか紹介する予定である。
講義スライド(1MB)

講義2

「チャーム・ボトムのハドロン原子核物理の最近の展開」

安井 繁宏 氏(東京工業大学・特任助教)

近年、チャーム・ボトムといった重いクォークを含むハドロンについて、従来のクォークモデルでは説明が付かない多くのエキゾチックハドロン状態が加速器実験で発見された。 これらはX,Y,Z,Pcなどと名付けられ、テトラクォークペンタクォークなどの候補として有力であると考えられる。 エキゾチックハドロンの研究は、量子色力学の基本的性質(カラー閉じ込めやカイラル対称性の自発的破れ)を理解する上で重要である。 一方で、原子核の中にチャームハドロンが入ったチャーム原子核について、核媒質中のチャームハドロンの性質を研究することが盛んになってきている。 本講義では、量子色力学の基本的な事柄から始めて、重いクォークおよびハドロンの有効理論を説明して、最近のチャーム・ボトムのエキゾチックハドロン および原子核の研究の話題を紹介する
講義スライド1(72MB, pptx)、 講義スライド2(37MB, pptx)、
講義スライド3(159MB, pptx)、 講義スライド4(6MB, pptx)、
ホームワーク問題(64kB)、 講義ノート(657kB)

講義3

「不安定核ビームを利用した核構造研究」

櫻井 博儀 氏(東京大学 教授)

不安定核ビームを利用した核物理研究を俯瞰した上で、核構造研究に関連した研究内容とその成果を紹介する。 また、将来の方向についても議論する。安定核に比べ陽子数、中性子数が過剰な原子核は、その特異性から様々な研究課題が展開されている。 とくに、陽子数、中性子数の変化に伴う殻進化の問題は、核構造研究の根幹をなすものであり、核内有効相互作用や核子相関と直結している。 現在、理化学研究所「RIビームファクトリー」で展開されている研究プログラムとその成果を紹介しつつ、この分野の将来を議論したい。
講義スライド(32MB)