今年の招待講演者は基研の谷崎氏と宇賀神氏です。
量子電磁気学や弱い相互作用の理論は、有効的な結合定数が小さく摂動論的な場の理論(QFT)で非常に精密な計算することが可能である。その一方で、強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)にはそのような小さなパラメータが存在せず、摂動論を超えたQFTの取り扱いを避けることはできない。この事情は素粒子論の枠組みを超えて、量子スピン系の物理などの物性系をQFTで調べる際にも重要で、QCDの閉じ込め・非閉じ込めと密接に関係した物理の理解が重要になってくる。 本公演では、そのようなQFTの非摂動的側面をいくつか紹介し、とくに一般化された対称性の役割について話したい。
量子論的には、ブラックホールはホーキング放射と呼ばれる熱的な放射を出して、徐々に質量を失って行くことが知られている。しかしこのブラックホールの蒸発過程は量子論の原理の一つである時間発展のユニタリー性を破っているように見え、ブラックホールの情報喪失問題と呼ばれている。近年、ホーキング放射のエントロピーを正しく計算する公式(アイランド公式)が提案され、情報喪失問題の解決に向けた重要な手がかりを与えると期待される。そこで本公演では、アイランド公式について解説する。
9:30 | 受付 |
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10:00 | |
10:20 | talk① (森、伊東) |
15分+5分トーク×2 (座長 : 竹田) | |
11:00 | break①・自己紹介 |
11:30 | 招待講演① (谷崎) (座長 : 福島) |
12:00 | |
12:40 | 昼食 |
13:00 | |
14:00 | |
14:10 | talk② (名古屋、青木、佐々木) |
15分+5分トーク×3 (座長 : 川平) | |
15:00 | |
15:10 | break② |
15:30 | talk③ (原、世田) |
15分+5分トーク×2 (座長 : 久代) | |
16:00 | |
16:10 | break③ |
16:30 | 招待講演② (宇賀神) (座長 : 福島) |
17:00 | |
17:40 | 閉会式 |
相互作用のある有質量系の半空間におけるエンタングルメントエントロピー(EE)の計算手法を用いて、繰り込み群のflowをexplicitに調べた。これまでの、区間に対するEEを用いた弱いエントロピックc定理を超えた、強いc定理の検証が期待される。
現在観測されている宇宙で粒子が反粒子より圧倒的に多いことを説明するためには標準理論を超える物理が求められる。そこで、重い右巻きニュートリノを導入し、これが標準理論にないスカラー粒子を含んだ3体に崩壊する過程を考えることでレプトン数生成を行う。更に理論に含まれる様々なパラメーターの値に対して物理的にレプトン数生成の過程の特徴を議論する。
本発表は阿部慶彦氏、吉岡興一との共同研究に基づく。
近年、対称性の概念の拡張が盛んに行われ、場の量子論の非摂動解析が発展している。対称性の拡張の一つの方向性として、非可逆対称性とよばれる代数的構造を緩めて可逆ではない非可逆なトポロジカル演算も「対称性」と見なす方向性がある。我々は、応用の少ない4次元で、Z2格子ゲージ理論において具体的に非可逆対称性を構成し非自明な代数関係を調べ、通常の対称性と異なる代数構造を持つことを確かめた。本発表は、大阪大学の小出真嵩氏と山口哲氏との共同研究であるarXiv:2109.05992に基づく。
正方格子に埋め込まれた曲がったドメインウォールを持つフェルミオン系を考える.凝縮系物理学ですでに報告された通り,ドメインウォールに現れるカイラルエッジ状態はスピン接続を通じて重力を感じる.この研究では$S^1$と$S^2$を曲がったドメインウォールとしてEuclid空間に埋めこんで,Dirac演算子の固有値からどのように重力が検出されるのかを示す,
mostly BRST exact演算子を挿入することにより、PSL(2;ℝ)対称性の1自由度をゲージ固定し、Veneziano振幅を導出した。このとき生じる符号係数は、符号付きの交点数として解釈される。この結果は、もともと2点の振幅を与えるために使われていた、mostly BRST exact演算子が、一般的な振幅におけるPSL(2;ℝ)ゲージ対称性を正しく固定することを意味する。さらに、このゲージ固定関数を挿入することで得られる一般的なn点ツリーの振幅の表式を予想する。
暗黒物質の有力な候補としてWIMPが知られている。直接探索実験は10 GeV以上のWIMPに強い制限を与える。本講演では、直接探索実験で検証が難しい軽いWIMPの可能性を議論する。軽いWIMPを加える最小模型は加速器実験により禁止されているため、次に拡張が少ない二個のスカラー場を導入し、その一方が暗黒物質になる模型を検討する。特に、模型の実現可能性や検証可能性について議論する。
Atiya-Patodi-Singer指数は,ドメインウォール質量を持つDirac演算子のη不変量を用いて再定式化されることが知られていた.
ここにη不変量とは,境界付きトポロジカル物質におけるアノマリー流入の記述に用いられるものである.
本講演では,この再定式化されたAtiya-Patodi-Singer指数が,ドメインウォールDirac演算子のベリー位相として簡潔に書かれるという予想を提示し,2次元の特殊な場合での具体的に示す.
計算されるベリー位相は二つの寄与に分割することが可能で,それぞれChern類のバルク積分と境界上のη不変量に対応する.
[arXiv:2109.08274 [hep-th]]