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Volume 35-3
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2021年10月3日受理
熱場ダイナミックスにおける拡張された量子距離について
中川 弘一
(星薬科大学)
概要
熱場ダイナミックス(TFD)を用いて,任意の2つの熱力学的量子状態間の差分が如何にして記述可能であるかということについての研究がおこなわれた[1].TFDは,熱力学的量子状態自体に焦点を合わせることにより,統計系を議論するための定式化をおこなう役割をする.この体系において,熱力学的量子状態は熱力学的量子状態ベクトルによって表される.したがって,2つの熱力学的量子状態の差分は,関連する熱力学的量子状態ベクトルの内積を用いて明確に定義される.文献[1]では,関連する2つの熱力学的量子状態の差を定量的に測定するための熱力学的量子距離が導入され,典型的な応用例が示された.その結果,熱力学的量子距離の概念には統計システムに関する多くの情報が含まれていることを明らかされ,臨界指数や量子-古典クロスオーバーポイントなどのいくつかの特性パラメーターを取得することに役立つことが知られている.本稿では,熱力学的量子距離の性質を再考し,文献熱力学的量子距離における量子-古典クロスオーバーに関する結果を再検討する.
キーワード
熱場ダイナミックス、量子距離、量子―古典クロスオーバーポイント、量子情報幾何、非平衡熱力学