B03班の研究概要
量子情報を用いた量子ブラックホールの数理の解明 (21H05186)
一般相対論に量子情報理論を組み合わせることで,量子重力理論の構築へ向けた新しいアプローチを開発し,量子ブラックホールの基礎理論を解明することが,私たちB03班の研究目的です.一般相対論のブラックホールは時空の曲率のみを構成要素とする宇宙で最も単純な構造物であるにも関わらず,通常の物質と同じく熱力学的な性質をもつ不思議な存在です.ブラックホールの中心には物理法則の破綻する時空特異点が存在し,その因果的境界である事象の地平面の面積はブラックホールのエントロピーを与え,さらに量子論的効果によりHawking輻射を放出して蒸発することが分かっています.こうしたブラックホールの不思議な性質は、ブラックホールの量子論的な自由度と情報の行方に関する「ブラックホールの情報問題」という,重力・量子・情報にまたがる根源的問いを投げかけています.本研究班では,ブラックホールの事象の地平面が情報伝達の境界として量子エンタングルメントに結びつくこと,その構造とダイナミクスは一般相対論の枠組みでは光的エネルギー条件で規定されることに着目します.そして量子重力の基本的力学自由度と量子情報が集約・顕在化する時空領域・構造はブラックホール地平面を代表とする様々な因果的境界にあるという予想のもと,そのダイナミクスを決定する「量子エネルギー条件」などの基礎方程式を導出・整備し,量子ブラックホールの数理を明らかにすることを目指します.また,ゲージ重力対応を用いて,量子ブラックホールや量子宇宙の観測可能量の問題にも挑みます.それにより「宇宙は量子情報の集合体である」という本領域全体に通底する「極限宇宙」予想の証明に迫ることが目標です.
B03のメンバー構成
[研究代表者]
石橋 明浩 近畿大学理工学部・教授
[研究分担者]
前田 健吾 芝浦工業大学工学部・教授
村田 佳樹 日本大学文理学部・教授
[領域ポスドク(研究協力者)]
松尾 善典 近畿大学理工学部・研究支援者
木下 俊一郎 日本大学文理学部・博士研究員
[研究協力者]
岡村 隆 関西学院大学理学部・教授
木村 元 芝浦工業大学システム理工学部・教授
野海 俊文 東京大学大学院総合文化研究科・准教授
[ポスドク研究員]
[大学院生]
上田 航大 近畿大学大学院総合理工学研究科・大学院生
山口 大輝 近畿大学大学院総合理工学研究科・大学院生
松本 玲 近畿大学大学院総合理工学研究科・大学院生