量子情報の時代の到来とともに、物理学の変革が今まさに求められています。物理学の理論は、スケールの違いによって、素粒子論、物性理論、宇宙論のように分野に分かれて研究がなされてきました。しかし、量子情報やゲージ重力対応の考え方を導入すると、それらの理論の根底にあるものは実は全て同一であることが明らかになりつつあるのです。
 この学術変革領域「極限宇宙」では、量子情報を自然界の基本的な構成要素とみなすことで、大きな進展が期待される3つの対象;「ブラックホールの量子論(量子ブラックホール)」「宇宙創成のメカニズム(量子宇宙)」「量子物質のダイナミクス」を量子情報と物理学の異分野融合によって解明することを目的としています。この三つの対象は一見、別々のテーマのように思えるかもしれませんが、量子情報の視点から考えると、全て量子ビットの集合体のダイナミクスとして捉えることができます。それぞれ、「空間の極限」、「時間の極限」、「物質の極限」に挑むテーマであることから、本領域ではそれらを総称して「極限宇宙」と呼んでおります。本領域では、量子情報理論と理論物理学を融合する理論的な研究のみならず、比較的コンパクトな装置を用いる冷却原子や量子ホール効果の物性実験を通じて、ブラックホールや宇宙創成といった壮大な対象を模した実証実験も行います。
 異分野融合で変革の原動力となるのは、自分の経験を踏まえて考えても、なんといっても若手研究者です。本領域では、異分野融合ミーティングや異分野研究グループへの長期滞在プログラム、海外の研究機関への派遣などを通して、若手の融合研究への参画を触発していきたいと考えております。このような研究活動を通じて、今後の発展が待望されるこの異分野融合分野への革新的な貢献を行っていきます。

領域代表 高柳 匡 (京都大学基礎物理学研究所 教授)