B01班の研究概要

量子情報を用いた量子ブラックホールの内部の物理学の解明  (21H05184)

研究代表者:飯塚 則裕

一般相対性理論で予言されるブラックホールは、その強力な重力場の故に、空間の曲がり具合が極限状態になっており、ホライズンと呼ばれる境界領域をもちます。そのホライズンより内側に一度物体が入ってしまうと、たとえ光速でもってホライズンより外に脱出しようと試みても、外にでることは古典的には不可能です。しかしこのブラックホールに現代物理学の基礎である量子論を適応すると、粒子が外に脱出できるようになります。これがホーキングによるブラックホールの蒸発です。さらにブラックホール時空は、「温度」と「膨大なエントロピー」をもつ熱力学的対象物であることもわかっています。通常、熱力学にはその背後に多体系の量子論、すなわち量子統計力学があります。ブラックホール時空自体が熱力学の対象物とするならば、その背後にあると考えられる多体系の時空の量子論、それこそが、量子重力理論です。近年の研究から、この量子重力理論を理解する上で重要な役割を果たすと考えられている概念が2つあります。1つは近年目覚ましく発展している量子情報理論。そしてもう一つが「ゲージ/重力対応」あるいは「ゲージ/弦対応」とよばれる、ゲージ理論(=場の量子論)と、量子重力理論としての超弦理論の等価予想です。B01班は、この2つの概念をフル活用して、ブラックホールの量子論を理解することを最大の研究目標に掲げます。特にホーキングが予言した、「ブラックホールの時間発展は量子論の原理と矛盾し、ブラックホール内部の量子情報は失われる」という、ブラックホールの情報損失問題に対し、ホーキングの誤りは何か?正しいブラックホールの時間発展がいかに量子論と無矛盾になるか?ブラックホールの内部の量子情報はどのように外部にとりだされるのか?について明快な答えを得ることを目標にして、そこで得られた知識から量子重力理論の基礎原理を解き明かしていきます。

B01のメンバー構成

[研究代表者]
飯塚 則裕 大阪大学理学研究科・助教

[研究分担者]
宇賀神 知紀 立教大学理学部・准教授
重森 正樹 名古屋大学理学研究科・教授
寺嶋 靖治 京都大学基礎物理学研究所・助教
野海 俊文 東京大学大学院総合文化研究科・准教授

[領域ポスドク(研究協力者)]
Sunil Kumar Sake 大阪大学理学研究科・研究員
Nicolò Zenoni 大阪大学理学研究科・研究員

[研究協力者]
玉岡 幸太郎 日本大学文理学部・助教
橋本 幸士 京都大学理学研究科・教授
前田 健吾 芝浦工業大学工学部・教授

[大学院生]
姉川 尊徳 大阪大学理学研究科・大学院生