理論物理学のための量子情報理論基礎 (21H05183)
量子力学には、量子的重ね合わせや不確定性原理、No-cloningといった、古典物理にはない不思議な性質があります。この不思議な性質をうまく利用して、これまでにない高性能な情報処理技術を実現するのが量子情報という研究分野です。とりわけ、高速な計算が可能となる量子計算、古典にはない様々な新しい暗号的タスクが実現できる量子暗号などが主要な応用例であり、活発な研究が行われてきています。また、このような量子情報技術の研究を推進すると、量子を使うと何ができて何ができないのかが明らかになってきます。これは、不思議な量子論がなぜこのような形をしているのかを理解する助けにもなります。量子論はなぜこのように不思議なものなのかを心の底から理解することは、量子論ができた当時からの物理学者たちの長年のゴールです。さらに、量子情報で得られる結果や知見、テクニックなどが他の物理にも有用であることが分かってきています。素粒子理論におけるAdS/CFT対応や、統計物理における分配関数、物性物理におけるテンソルネットワーク、ブラックホールにおける量子ランダム性などの様々な概念が量子情報を通じて新しい視点から研究することが可能となってきています。
本計画班は量子情報の専門家からなる班であり、「量子情報を基礎として極限宇宙の物理法則を創る」という領域全体の目的の達成に向けて、必要となる「言語」を他班に提供する役割と、量子情報の基礎理論そのものを深化させることによりその「言語」をより良いものに磨き上げる役割を担っています。
A01のメンバー構成
[研究代表者]
森前 智行 京都大学基礎物理学研究所・准教授
[研究分担者]
中田 芳史 京都大学基礎物理学研究所・特定准教授
東 浩司 NTT物性科学基礎研究所・特別研究員
Francesco Buscemi 名古屋大学情報学研究科・教授
早川 龍 京都大学基礎物理学研究所・白眉特定助教
[領域講師]
Andrew Darmawan 京都大学基礎物理学研究所・特定講師
[研究協力者]
Michele Dall’Arno 豊橋技術科学大学・テニュアトラック助教
山崎 隼太 東京大学理学系研究科・助教
加藤 豪 NICT 未来ICT研究所・研究マネージャー
[ポスドク研究員]
Aditya Nema 名古屋大学情報学研究科・特任助教
[大学院生]
廣岡 大河 京都大学基礎物理学研究所・大学院生
松浦 孝弥 東京大学工学系研究科・大学院生
田宮 志郎 東京大学工学系研究科・大学院生
[過去のメンバー]
米川 岬 京都大学基礎物理学研究所・大学院生
鍵谷 拓海 京都大学基礎物理学研究所・大学院生
Arthur Parzygnat 名古屋大学情報学研究科・特任助教 (MIT Experimental Study Group・講師として転出)